最近扱った相続がらみの事例で、気になるケースを自分用にメモしてみます。
相続分の譲渡・・・抽象的な持分割合の譲渡と解される。
参照条文;
民法
(相続分の取戻権)
民法905条 共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。
2 前項の権利は、一箇月以内に行使しなければならない。
~事例1~
被相続人A
相続人B、C、D、E、Fの五名
→C、D、Eの三名がその相続分をBに譲渡し、その結果、B持分4/5、F持分1/5となった。その後、BF間で遺産分割協議を「行わない」で、登記名義人であるAから直接、B持分4/5、F持分1/5とする相続登記の可否
先例;昭和59年10月15日付法務省民三第五一九五号民事局第三課長回答によれば「可」
上記先例の解釈につき、参考文献「相続・遺贈の登記」(テイハン)P.284~
cf;
民法
(遺産の分割の効力)
第909条 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
~事例2~
被相続人甲
相続人A、B、Cの三名
→Cがその相続分を共同相続人以外の第三者Dへ譲渡。その後、A、B及びD間で遺産分割協議を行い、Dが特定の不動産を単独で取得。この場合の登記手続きに関して、A、B及びCの共同相続登記を行ったあとに、Dを登記権利者、A、B及びCを登記義務者として、「相続分の譲渡による遺産分割」を登記原因とする所有権移転登記につき、登記研究第745号参照。
~その他~
相続分の譲渡と「相続」を原因とする移転登記の可否(登研491号)
要旨 共同相続人全員が相続分を第三者に譲渡し、相続を原因とする被相続人から第三者への移転登記はできない。
問 共同相続人全員が相続人以外の第三者に相続分の譲渡をすることは可能と考えますが、この場合登記原因を相続として、被相続人から直接第三者へ所有権の移転の登記をすることができるでしょうか。
答 消極に解します。
以上。