昨日自宅の本棚を整理していたら、司法書士の受験時代によくお世話になった参考書籍の一つ「民法 判例実戦演習」(東京法経学院出版/1998年発行)が奥の方から出てきました。
かれこれ12.3年くらい前に使っていたわけですが、なんだかとても懐かしいです
中身はかなりボロボロです
で、やたら付箋やチェックマークのついているページがいくつかあったのでその箇所を読んで見たら、ちょうど前回書いた内容と類似の事例がありました。
「最判昭40・05・04」
判示事項
滅失建物の登記を新築建物の所有権保存登記に流用することの可否。
裁判要旨
滅失建物の登記をその跡地に新築された建物の所有権保存登記に流用することは、許されない。
本書解説には、<登記された建物が取壊し等により滅失した後、跡地に新たに建物が築造されたときは、旧建物について滅失登記を行いその登記記録を閉鎖し、新建物について建物表題登記をして新たな登記記録を設けた上、所有権保存登記等の権利に関する登記をすることになる。上記判決は、このような手続を経ない新建物の登記は、当事者の事情いかんに関わらず、無効となることを明らかにした点に意義がある。>とあります。
※<>内一部修正。
ところで、登記記録と実体との食い違いが後に是正され、登記記録が実体に符号する結果となった場合の類型として、以下の三つが挙げられます。
(1)実体を欠く無効な登記が、後に実体と符号するに至ったという類型
(2)実体関係が一度消滅し無効となった登記を、当事者が類似の別の実体関係に流用する類型(ex:弁済により消滅した抵当権を、他の債権を担保する抵当権に流用する場合等)
(3)上記(2)の類型と類似するが、個々の登記の流用でなく、特定の不動産のための登記記録の全部を他の不動産の登記記録として流用する類型
これらの類型に対し判例は、(1)については、第三者との関係でも有効と判示し<最判昭29.1.28>、(2)に関しては、原則として無効とするが<最判昭6.8.7>、・・・中略・・・流用を合意した当事者間では有効とする<最判昭37.3.15>等、問題となる状況を考慮に入れて判断する余地を認めています。そして(3)については、一貫してその効力を否定しています<最判昭40・05・04>。
これは、2)と異なり、登記記録自体の流用は、二重登記を生じる可能性や不動産の特定についての混乱を招くおそれがあり、不動産登記制度の基本構造に反するからとされています。
まあ、実務をよく知らなかった受験時代にはイマイチ理解できなかった論点で、当時本試験で出題されたら捨問として処理していたと思いますね。。
久しぶりに受験時代の書籍を眺めてみると懐かしく新鮮な気持ちになりますが、果たしてあの時の知識が今どれだけ頭の中に残っているのか、ちょっと不安にもなります
参考文献
民法 判例実戦演習 司法書士 判例・先例実戦演習シリーズ1
(東京法経学院出版/1998年発行)
判例サイト
・仮装の売買契約に基き所有権移転登記を受けた者がその後、真実の売買契約により所有権を取得した場合とその登記の対抗力
(最判昭29.1.28)
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=57258&hanreiKbn=02
・流用された抵当権設定登記について当事者が無効を主張できないとされた事例
(最判昭37.3.15)
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=74303&hanreiKbn=02
・滅失建物の登記を新築建物の所有権保存登記に流用することの可否
(最判昭40・05・04)
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=56275&hanreiKbn=02