新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

学生さん向け:再生不良性貧血と骨髄異形成症候群の話(病態編)

2014-12-14 14:41:37 | 研修医、医学生さん向け

こんにちは

 

いよいよ忘年会シーズンに入ってきました。先週から今週にかけて飲み会が続くので大変です。

ただ、飲み会だけではなく臨床や研究も大変なわけですが。

 

今日は病棟のバックアップということで午前中は仕事に、帰ってくる際に投票所に行きましたが・・・・

「誰に入れても変わらない気がするのは・・・なんでだろう・・・」

 

と、非常に投票に迷いました。はじめ無記入で出そうかと思ったくらいです。

 

で、今帰ってきたところです。本当は娘のところに行きたいのですが、実家の車でみんなで遠出しているらしく(おいていかれておりますw)・・・

 

ということで、久々の更新です

 

さて、骨髄不全といわれる疾患があります。再生不良性貧血と骨髄異形成症候群が有名どころです。どちらかの疾患が出てくるとだいたい学生に話を振ります。

 

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アン:「さて、いま骨髄異形成症候群(MDS)の話が出たけど、あれってどんな病気?」

学生A:「どんなといわれると貧血になったりします」

学生B:「芽球が出ることがあります」

アン:「芽球が出るってどの程度?」

学生B:「白血病よりは多くないですが、普通より多いくらいです

アン:「理解しているんだろうけど、数値聞かれるから覚えてね。他に」

学生C:「無効造血になります」

アン:「無効造血、いいねぇ。キーワードが出たね。それって何?」

学生C:「汎血球減少になります」

アン:「・・・おまえ、単語だけ覚えているだろう・・・・(笑い話ですが、汎血球減少という言葉の意味を知らない学生グループがありました)」

アン:「まず、骨髄の所見のところに顆粒減少とか、分離多核巨核球とかいろいろ書いているよね。あれは形態学的に…つまり見た感じが普通の血液ではない『不良品』の血液なんだ。そういう見た感じ変な不良品・・・。もしここが市場で、見た目が悪い野菜や果物、傷がある魚や肉が並んだらどうする」

学生B:「僕は気にせず食べます」

アン:「・・・質問が悪かった。もし、君らが農家で市場に出品する際にそういうのがあったら出品するかい?安く買いたたかれるぞ~、評判落ちるぞ~

学生A:「出品しません」

アン:「そう。骨髄の中ではたくさんの不良品血液が作られています。しかし、それはうまく血液中に出てきません。骨髄中で壊れていく、もしくは壊してしまいます。そうすると血液作っているのに、有効な造血になっていないことになるので・・・

学生C:「無効造血と」

アン:「そう、無効造血になる。つまりMDSの一つの要素は『無効造血による汎血球減少』ということになる」

学生:「なるほど。1つの要素ということは別の要素は?」

アン:「さっき、芽球がどうのこうのって言っていたけど、もう一つは『前白血病段階』ということだね。ほっておくと白血病に進行してしまう。さっき、誰かが急性転化と言ったけど、急性転化するのは慢性骨髄性白血病から急性転化するとは言うけど、骨髄異形成症候群から急性転化とは言わないから

学生A:「なんでですか?」

アン:「だって、慢性疾患が急性になるというかもしれないけど、別の疾患から別の疾患に急性転化するとは言わないでしょう?じゃぁ、本当はそういうことはないけど、風邪の人が肺炎になったら急性転化というか?」

学生C:「そもそも、その例えはおかしくないですか?」

アン:「・・・やるなぁ・・・。じゃあ、慢性腎不全が急性腎不全に…いやこれはちょっと意味合いが・・・。もう、この話早めて話を進めよう。病態としてもう一つ有名な『骨髄不全症』と言われる血液の作れなくなる疾患があるのだけど?」

学生ら:「・・・・」

アン:「聞いたら思い出すと思うけど、再生不良性貧血だね。再生不良性貧血ってどんな病気?」

学生A:「骨髄の中が脂肪化します」

学生B:「血液が作れなくなります」

アン:「まぁ、いいか。なんで血液が作れなくなるの?」

学生A:「だから、骨髄が脂肪に・・・」

アン:「脂肪髄になるといいたいのだろうけど、なんで脂肪髄になるの?」

学生C:「自己免疫ですか?」

アン:「そうだね。すべてがそれで説明できるわけではないけど、学生のうちはそれだけで十分だと思う。さっき、再生不良性貧血の患者さんの話が出たけど、免疫抑制剤を使用していたでしょう?免疫抑制剤が効くということは自己免疫を考えたいよね。使うのは抗胸腺細胞グロブリン(ATG)やシクロスポリンなんだけど、これってどっち系の免疫を抑えるんだっけ?」

学生C:「どっち系っていうと」

アン:「リンパ球のサブセット」

学生:「B細胞ですか?

アン:「自己抗体を作るやつはそうだろうなぁ、ついでに言うとそういうタイプは多分ステロイドやリツキシマブが効きそうだけどね・・・

学生:「T細胞です」

アン:「そうだね。あの薬はT細胞をどちらも抑える薬ですね。そうするとT細胞が関連していることになる。T細胞が造血幹細胞を攻撃して、造血幹細胞の量が減ってしまったのでそのスペースに脂肪細胞が膨らんでくるというのが実態だろうね(脂肪細胞は増えないです。脂肪を蓄えるとしても)」

学生:「なるほど」

アン:「なので、骨髄不全と言われる、血液が上手く作れなくなる2台巨頭。骨髄異形成症候群と再生不良性貧血は、骨髄異形成症候群は造血幹細胞の質が悪くなって血液が作れなくなったり、芽球が増えて白血病に進行したりする。再生不良性貧血は造血幹細胞の量が減って作れなくなる。とりあえず、簡単にこの程度のことを覚えておくといいのではないかな」

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だいたい3週間のカンファレンスで、病態の話をして検査や治療の話をしてと少しずつ進めています。ちなみに骨髄不全の中には「発作性夜間血色素尿症(PNH)」とかもあります。これは造血幹細胞のPIG-Aという遺伝子の異常で血液中にある「補体」という組み立て式爆弾みたいなものを抑える物質が血液の表面にできなくなるから起きます。他にも言いだしたらいろいろありますが、とりあえず学生向けということでこの辺で。

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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それでは、また

 

コメント (3)
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