さて、続けます。
うちは血液内科の臨床チームとしては極端に人数が少ない(少数精鋭と言えば聞こえがいいですけど、数が多いに越したことはありません)医局です。
今朝、当直交代の時に今日の当直の先生と話をして
「今、血液内科と神経内科だけになってしまいましたが、この二つの診療科で合わせて10名弱しかいない。この人数だと普通の大学の神経内科や血液内科、どちらか片方だけの人数と同じです。
病院側は死ぬ気で限界まで働けといっているんですかね? 研修医もなぜかうちに配属された人数もとられてしまって・・・」
「ごもっとも。せめて研修医だけでも増やしてくれれば、若干楽になるのだけど。」
「良くやりますよね、先生も。いくら患者さんに不利益がかかるっていっても、僕だったら自分のことを優先してますよ」
「そんなこと言ったって、もしこれで俺が辞めたら病棟も外来も崩壊するぞ?入院診療ができるからこそ、外来も継続できるのだから。
ここの患者さん、俺だけでも150~200人近くの患者さんを診ていて、全体では数百人になろうかという患者さんが診療できなくなって、他の病院に送ることになったらどうする。地域全体が崩壊するぞ?」
「いや、だからそういうことまで良く考えますよね?」
「そういうものか?」
こんな感じの会話をしていました。
「血液内科を30床にするという噂は本当ですか?」から始まったのですけどね。
今、病棟の看護師さんも数が少なくなり、さらに新人さんが増えてきたため守備力が非常に低いです。それは本当に大きな問題ですが、そこにさらに患者数を増やされると大変なことになります。
うちの入院患者さんの主体は「骨髄移植を念頭に置いている人」「急性白血病」「悪性リンパ腫のサルベージ→自家移植」などで構成され、そこに外来でなんとか粘っている患者さん達の悪化に対して対応している感じです。
本当は関連病院とかがあればよいのでしょうけどね。
ともかく、疲労が格段にたまりやすい状況にあるわけです。
有名な話ですが「Nature」の1997年の論文では24時間ずっと起きていることは「アルコールの血中濃度0.1%と同レベル」まで行動機能レベルを下げるといわれています。
これは長時間の勤務を続けた場合だけではなく、長期にわたって睡眠時間を奪われていることが「Sleep debt」と呼ばれる状態になり健康を損ね、疲労状態に陥る。
研究では1週間に5時間睡眠で活動していた時と24時間眠らなかったときは、同レベルの行動機能レベルを引き起こすとされています。
僕は学生時代から「3~4時間睡眠」で良い人間でした。しかし、それは良質の睡眠を取れるからであって…
今のように夜中にも電話が鳴り、浅い半覚醒状態が継続する状態では「3~4時間」では体がもちませんでした。
というより、寝れるときは寝たいと思います・・・(汗
アメリカでは2003年にレジデントの週勤務時間を最大80時間、連続勤務の上限を30時間(汗)、週に1回は休日とするようにと定めた。当然ながら根拠があるわけではないのですけど、それでも勤務体制の問題は患者や社会の安全に支障を生じるという判断なのでしょう。
それを考えると「我が大学病院」の勤務体制は常軌を逸しているの一言に尽きるとは思う。
日本全体もそうなのですけどね。
それは「さかのぼり」続ければ、どこが問題かは自明なのですが・・・しかたありますまい。
同様に看護師も過労状態が続いているわけで・・・。
うちの教授は「看護師の超過勤務体制を改善するために、少しでも協力しなくてはならない」といっていますが、協力できるところはするけど…急変が多いから限界があるだろう・・・と思うところもあって(汗
最近7対1看護…というのがはやっていますが、恐らくペンシルヴァニア大学のAiken教授による(JAMA 288 1987-93)
1、1人の看護師が7人以上の患者を担当すると死亡率が31%上昇する
2、看護師の担当患者数が1人増えるごとに患者の死亡率は7%ずつ増加する
3、患者の数が一人増えるごとに看護師の不満は23%、Burn outは15%増加する
という文献によるのでしょう。
先程、コメントにも書きましたが「日勤」の勤務者が0時過ぎにまだ病棟にいて、そして彼女はこの後、21時から勤務です。
看護師さんは「患者さんを直接看ている」状況ですので、彼女(彼)らの力は病状が悪化するのを防ぐために非常に重要な立場にいます。
そのことを認識していない人間は、現場には必要ないのかもしれません。
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その一方、医師の「担当患者数が一人増えるごとに・・・」という調査はみたことがないです。しかし、日本という国の医師が実際にみている患者さんの数は非常に多い。
僕らみたいな「血液内科」の医師は、どちらかというと「重症患者」「全身管理が必要な患者」を担当しているため、本来は医師数がかなり必要なわけです。
そう言ったことも含め、「これからどうなるのやら」という話を二人でしていました。
今の日本では「これら」のことを達成することは不可能なのでしょうけど、達成すべく頑張るしかないのでは…と思ったりします。
それでは、少し休憩に入ります。
では、また。