お風呂猫

 みゆちゃんはお風呂に入りたがる。と言っても、猫なので、当然湯船には入らないが、私と息子がお風呂に入っていると、ドアの前に座って、開けてくれとにゃあにゃあ鳴く。みゆちゃんは普段から息子をライバル視しているので、息子だけがお風呂に入って自分は入れないという状況がいやなのである(これに関しては息子も同じで、みゆちゃんをライバルだと思っている。このあいだ、お風呂に入ろうと誘ってもなかなか応じなかったので、じゃあ、みゆちゃんと入る、と言ってみたら、息子はすぐに入ると従った)。浴室のドアを細く開けてあげると、するりと入ってきて、慎重に浴槽に前足をかけた。私と息子が手を出すと、お湯で濡れているのもかまわずに、ひげの付け根や、顔の側面にこすり付け、そうして満足して、浴室から出て行った。
 実家のネロは、以前よく母とお風呂に入っていた。何をするわけでもなく、湯船に被せたふたの上に黙って座り込んでいる。ぽかぽかと暖かくて気持ちがいいのだろうけれど、あたたかくて快適な場所なら居間にだってある。ネロは母が一番好きであるから、きっと一緒にいたかったのだと思う。
 息子が生まれて間もない頃、父が息子をお風呂に入れたことがあって、そのときはちゃめが浴槽の縁に上って見学に来た。好奇心に加えて、自分のお気に入りの父が孫をお風呂に入れていることが気になったのだろう。
 それぞれの思惑があって、猫はお風呂に入る。
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