菜の花の咲く

 滋賀県守山市の琵琶湖湖畔に、菜の花のたくさん植えられた場所がある。まだ二月なのにまるで春の陽気だから、先日そこへ行ってきた。
 大きな空と大きな水の琵琶湖の浜は、こころが水の色にすぅーっと溶けるような、深呼吸がしたくなるようなところ。同じ大きな水でも、琵琶湖と海はやはり違う。どこまでも広く深さも知れない青い海は、ちょっと緊張感を伴ったような魅力があるけれど、琵琶湖は陸の中で閉じているから、安心していられる。
 その日は風も穏やかで、浜辺に座って、お弁当を広げた。青い湖面に、水鳥が羽ばたく。息子は、得意げに身の丈の何倍もある枯れた葦を頭上に掲げ、青空を背に遊んでいる。
 菜の花は、触れると弾けてしまいそうに満開だ。濃い黄色が、光を含んで眩しい。黄色い花の向こうには、琵琶湖を挟んで、対岸の比良山系が見えるので、その構図を切り取ろうと、アマチュアカメラマンたちが、それぞれ三脚を立てている。山には少しだけ残雪があった。
 春みたいな太陽を背に受けて、ただぼうっとしていられる場所だけれど、湖面を渡る風が少し吹き出したので、脱いでいたコートを羽織ってその日は帰った。
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