せっかくの休みの日、スーツを着たことはあるだろうか。
少なくともあくっまさんは、休みの日はお葬式ぐらいしかスーツを着たことが無い。
あ……学生時代は試合のたびにスーツだったが、足元はスニーカーだったな。
1月27日、土曜日。
あくっまさんとクラブの同期で主将だったMは、部室にいた。
学生課から一月末に部室を明け渡すよう言われていたので、最後の抗議にとOGの署名74名分を提出する為だ。
十時半近くになり、先輩のYが登場。そして1コマ目の試験が終わった一年生二人も現れたので、クラブの置かれている立場を初めてちゃんと説明した。
もう、部室がなくなってしまうかもしれない現実。
そしてこれから学生課へ抗議に行くが、二人には急だが「部活を続けるか」「続けるか考え直すか」選択してもらわないといけない事。
今の状況でクラブ員として意志確認もせず学生課へ連れて行くのは、あまりに酷だと思ったからだ。
また、うやむやのまま学生課に連れて行っても、学生課から一つでも一年生に尋ねられたら、不信感をクラブに対して委託だろう。
二人は暫く話し合い、結論を出した。
「なんとしてでもあっても続けたい」
この答えを聞いたあくっまさん。
感動よりも先に、「また指導の予定で週末が埋まるのか…」と想像してしまったのは内緒だ。
とにかく五人で菓子折りと署名を携えながら、学生課へ向かった。
学生課には予め四年生から「OGが行く」という話は通してあったので、自分達が着くとすぐに部屋の奥にある談話スペースに誘導された。
四年生から「学生課は冷たい、いうことがコロコロ変わる」と説明を受けていたので、思ったよりも優しい対応に動揺する。しかしこの動揺は、この後の学生課の説明を受けた後と比べると比較にならなかった。
まずY先輩が今までのクラブの経緯について学生課から聞いた。すると学生課は丁寧に説明した。
「アーチェリークラブさんは、2005年の12月に休部か廃部のどちらかを選択するように説明されています。実質四年生一人で休部は難しいという事で、廃部の選択をされたので、そのまま廃部が決まりました。」
一同、呆然。
あくっまさん、とにかく自分達が聞いてきた状況を話す。
「あの、年内に五人集まると復活するという話は…」
学生課の事務員は先ほどの調子を崩さず答えた。
「廃部が決定した場合は、どんなに人数を集めても出来ません。また七名いないと公認サークルとしての存在は出来ません。ですから休部の手続きを取っていただいて、今年中に七名集めればもとの公認という措置は取れたのですが…本当に残念です」
唖然としたまま、あくっまさんは何とか言葉を搾り出した。
「あの、四年生からは事務連絡会議で突然そちらから廃部が決められた、と聞いたのですが」
それを聞いた事務員はすぐに説き伏せる。
「いいえ、(四年生)さんの休部の申請が間に合わず、廃部の手続きをしました」
なんだこれ。
四年生から聞いた事と説明されている事が全く違う。
事務員は申し訳なさそうに言葉を続けた。
「休部と廃部の説明は何度も説明しました。来年度から新しく加盟申請されるサークルがあり、アーチェリークラブさんのスペースを渡す計画になっております。ですから今年度中には部室を引き渡していただきたいのですが…」
あくっまさんは何にも言えなかった。
部員がとても少ないアーチェリークラブと、頑張って活動してきたサークル。より活動しているほうに譲り渡すのは、至極真っ当だろう。
事務員は説明を続けた。
「アーチェリークラブさんはこれから七名以上の部員を集めて、クラブ連絡協議会に申請し、承認が得られたら同好会になれます。最低二年以上の活動をして、その後十名以上の部員がいましたら公認サークルとなれます。そうなったら部室がお渡し出来ます。実際そこまでやるのは難しいですが、頑張って活動を続けてください」
ここまで聞いて、あくっまさんたちは顔を見合わせた。
これまでの一年間、クラブ連絡協議会というものに申請をしていない。思い出せばそういう会議に出ていたような気もするが、申請等の手続きの話など今まで出てこなかったからだ。
「毎年六月と十一月頃、連絡協議会が開催されます。それまでに七名集まりましたら、申請をしてください」
去年始めの決定は覆せないので、署名は受け取れないと事務員は言った。そして菓子折りは受け取ってはいけない決まりだからと、そのまま持ち帰えざるをえなかった。
一年間、新歓して指導して試合応援に行って……一体なんだったんだろう。
虚しい気持ちのまま、学生課を後にした。
一年生が新歓までやりたいというのでこれからもクラブは続ける。そして六月の連協までに七名に到達するまでの残りの二名が入らなければ、活動は終了しようという結論が出た。
しかし。
報われない気持ちが大きすぎる。
少なくともあくっまさんは、休みの日はお葬式ぐらいしかスーツを着たことが無い。
あ……学生時代は試合のたびにスーツだったが、足元はスニーカーだったな。
1月27日、土曜日。
あくっまさんとクラブの同期で主将だったMは、部室にいた。
学生課から一月末に部室を明け渡すよう言われていたので、最後の抗議にとOGの署名74名分を提出する為だ。
十時半近くになり、先輩のYが登場。そして1コマ目の試験が終わった一年生二人も現れたので、クラブの置かれている立場を初めてちゃんと説明した。
もう、部室がなくなってしまうかもしれない現実。
そしてこれから学生課へ抗議に行くが、二人には急だが「部活を続けるか」「続けるか考え直すか」選択してもらわないといけない事。
今の状況でクラブ員として意志確認もせず学生課へ連れて行くのは、あまりに酷だと思ったからだ。
また、うやむやのまま学生課に連れて行っても、学生課から一つでも一年生に尋ねられたら、不信感をクラブに対して委託だろう。
二人は暫く話し合い、結論を出した。
「なんとしてでもあっても続けたい」
この答えを聞いたあくっまさん。
感動よりも先に、「また指導の予定で週末が埋まるのか…」と想像してしまったのは内緒だ。
とにかく五人で菓子折りと署名を携えながら、学生課へ向かった。
学生課には予め四年生から「OGが行く」という話は通してあったので、自分達が着くとすぐに部屋の奥にある談話スペースに誘導された。
四年生から「学生課は冷たい、いうことがコロコロ変わる」と説明を受けていたので、思ったよりも優しい対応に動揺する。しかしこの動揺は、この後の学生課の説明を受けた後と比べると比較にならなかった。
まずY先輩が今までのクラブの経緯について学生課から聞いた。すると学生課は丁寧に説明した。
「アーチェリークラブさんは、2005年の12月に休部か廃部のどちらかを選択するように説明されています。実質四年生一人で休部は難しいという事で、廃部の選択をされたので、そのまま廃部が決まりました。」
一同、呆然。
あくっまさん、とにかく自分達が聞いてきた状況を話す。
「あの、年内に五人集まると復活するという話は…」
学生課の事務員は先ほどの調子を崩さず答えた。
「廃部が決定した場合は、どんなに人数を集めても出来ません。また七名いないと公認サークルとしての存在は出来ません。ですから休部の手続きを取っていただいて、今年中に七名集めればもとの公認という措置は取れたのですが…本当に残念です」
唖然としたまま、あくっまさんは何とか言葉を搾り出した。
「あの、四年生からは事務連絡会議で突然そちらから廃部が決められた、と聞いたのですが」
それを聞いた事務員はすぐに説き伏せる。
「いいえ、(四年生)さんの休部の申請が間に合わず、廃部の手続きをしました」
なんだこれ。
四年生から聞いた事と説明されている事が全く違う。
事務員は申し訳なさそうに言葉を続けた。
「休部と廃部の説明は何度も説明しました。来年度から新しく加盟申請されるサークルがあり、アーチェリークラブさんのスペースを渡す計画になっております。ですから今年度中には部室を引き渡していただきたいのですが…」
あくっまさんは何にも言えなかった。
部員がとても少ないアーチェリークラブと、頑張って活動してきたサークル。より活動しているほうに譲り渡すのは、至極真っ当だろう。
事務員は説明を続けた。
「アーチェリークラブさんはこれから七名以上の部員を集めて、クラブ連絡協議会に申請し、承認が得られたら同好会になれます。最低二年以上の活動をして、その後十名以上の部員がいましたら公認サークルとなれます。そうなったら部室がお渡し出来ます。実際そこまでやるのは難しいですが、頑張って活動を続けてください」
ここまで聞いて、あくっまさんたちは顔を見合わせた。
これまでの一年間、クラブ連絡協議会というものに申請をしていない。思い出せばそういう会議に出ていたような気もするが、申請等の手続きの話など今まで出てこなかったからだ。
「毎年六月と十一月頃、連絡協議会が開催されます。それまでに七名集まりましたら、申請をしてください」
去年始めの決定は覆せないので、署名は受け取れないと事務員は言った。そして菓子折りは受け取ってはいけない決まりだからと、そのまま持ち帰えざるをえなかった。
一年間、新歓して指導して試合応援に行って……一体なんだったんだろう。
虚しい気持ちのまま、学生課を後にした。
一年生が新歓までやりたいというのでこれからもクラブは続ける。そして六月の連協までに七名に到達するまでの残りの二名が入らなければ、活動は終了しようという結論が出た。
しかし。
報われない気持ちが大きすぎる。