クヌギ林の下は綺麗に下草が刈ってあった。
持ち主はこの時期にヒガンバナが咲くのを知っていて、丹念に草刈りをしてあるに違いない。
そのかいあって一面に赤いヒガンバナが咲いている。
江里山棚田から唐津市の蕨野棚田へ向かうには、天山へと続くくねくねとした山道を走る。
県道なので舗装はされているが、車の離合にも気を遣う一車線程の道幅しかない。
この途中にこのスポットはあるのだが、江里山棚田を見ての帰りにいつも立ち寄る。
ヒガンバナの絨毯のようなクヌギ林に、クロアゲハが数匹舞っていた。
そのうちの一匹は、相当に羽が傷んでいた。
ひたすらにヒガンバナの蜜を吸うクロアゲハに、木々の間から漏れる日の光がスポットライトをあてていた。
アスファルトの舗装面に、セミがひっくり返ってお腹を見せている。
煩いほどに鳴き続け、地上での短い一生を終えていた。
今年も何匹か指先でつまみ上げ、植え込みの中へとそっと放り投げ入れてやる。
土へ帰りまた戻ってきなよと言いながら。