生活之音楽ピース社

~そしてピアノとすこし猫~

~ようこそ生活之音楽ピース社ブログへ~

こちらはクラシック音楽ライター/翻訳の飯田有抄のブログです。 音楽と人と猫のことを、書いています。*最新記事はこの下です*
主な活動とプロフィール
全音楽譜出版社、音楽之友社から出版される楽譜の作曲者による解説の英語訳。CDブックレットの解説日本語訳等。
雑誌「ムジカノーヴァ」、「CDジャーナル」、「ぶらあぼ」等の雑誌でインタビューやレポート記事を執筆。CDの楽曲解説やコンサートのプログラムノートなど。
「ブルクミュラー特集」にてNHK-FM番組、NHK Eテレ「ららら♪クラシック」出演。
東京交響楽団・サントリーホール主催「こども定期演奏会」楽曲解説執筆。
2016年杉並公会堂 小林研一郎指揮 日本フィルハーモニー交響楽団 「ベートーヴェンツィクルス」全6回プレトークおよび楽曲解説担当。
クラシック音楽専門インターネットラジオOTTAVA、木・金「Salone」19:00~22:00生放送 プレゼンター

念願のブルクミュラーの本を出版いたしました!
飯田有抄・前島美保著『ブルクミュラー25の不思議~なぜこんなにも愛されるのか』(音楽之友社)



その他書籍「あなたがピアノを続けるべき11の理由」(ヤマハ・ミュージック・メディア)2011年9月
「あなたがピアノを教えるべき11の理由」(ヤマハ・ミュージック・メディア)2013年2月

1974年北海道小樽市生まれ。東京芸術大学大学院音楽研究科修士課程修了(武満徹研究)。Macquarie University 通訳翻訳コース修士課程修了(英語⇔日本語)。趣味:猫情報を収集すること、猫と昼寝すること。ピアノ小品を愛すること。着物選び。三味線端唄(松永流端唄師範 松永花有)。

「レット・イット・ゴー」を熱唱するときの気分

2014年05月31日 | 音楽
映画「アナと雪の女王」より「レット・イット・ゴー~ありのままで~」、猫がお手つきしているコチラの楽譜、本屋さんで偶然見つけて買っちゃいました! もちろん劇場で映画も見まして、松たか子さんの音源もiTunesでお金払ってヘビロテしたクチです。この歌は名曲として、おそらくスタンダード化していくでしょう。まぁ実によくできている。

 ところでこれ、ぱっと見、「自分を信じて!」みたいなよくアリがちなキレイな人生応援歌にも思えます。実際そう受け取っていいだろうし、10代の人々は「そうだ! 私もがんばらなきゃ!」と共感していい。カラオケなどでも、そう思って熱唱してくれ。

 ですが。オトナといたしましては、また一歩引いた解釈で、この曲を味わってしまいます。
 この曲には不自然なまでに「じぶん」という言葉が出て来ます。

「ありのままの自分になるの」
「自分をためしたいの」
「自分をすきになって」
「自分しんじて」

「じぶん」って、音として美しいとは思えないんですよね。濁点が二カ所もあって。でもこの曲を歌う「ひとりの私」は、何度も「自分」「自分」「自分」と叫ぶわけです。「これでいいの これでいいの」と言いながら。 どうですか。 こんな娘さん。 いやはやもう、どうしてもヒリヒリするようなものを、感じ取って泣きそうになってしまいます。

「もう自由よ なんでもできる 変わるのよ私」

そうだね。なぜか意味もわからず根拠もなしに、全能感に支配されてしまう、そんなことってある。

「輝いていたい もう決めたの」

うわ。 切ないまでにヒリヒリとしてしまいます。いやもう、自己実現願望ゴリゴリ系の、ちょっとコワい歌になる一歩手前です。
 あなたが自分で「決めたの」と言っても、あなたが実際に輝けるかどうかは、あなた自身ではなく、社会が決めることでもあるのですよ、今のあなたのにように「自分」「自分」「自分」と、全てのベクトルが自分に向いているままでは、おそらくは誰もあなたとは向き合えないし、輝くことなど許されない日が、そう遠くないうちに来てしまう……
 
 と、歌からそんな心配などしてしまうわけですが、考えてみたら映画でも、きちんとそういう場面で使われるわけですよね。

 覚醒し自由になったと思ったはずの主人公。彼女はこの歌を熱唱したあと、社会から隔絶された引きこもりとなってしまうのです。

 そういう歌。「レット・イット・ゴー」は。
 それを世の中では映画館で全員で熱唱するイベントが行われたりなど、よく考えると奇妙な現象が起こっていたとも思います。
 そしてこの曲を「弾き語り」なんかをしていると、さらに感じ入ってしまうのであります。
 娘さん、あなたはきっと遅かれ早かれ気付くでしょう。そのままではいけないっていうこと。今はきっと想像もできないような、厳しい壁にブチ打ち当たったり、恥ずかしい思いなんかも繰り返すことになるでしょう。ああ、ここからが本当に大変なんだよ。。。。

 はっ。これを老婆心というの?? 私もそんな年齢なんだわね(今年40)。そういや若い頃は「老婆心ながら・・・」って人様から何かを言われるのが本当に大っっっっキライだった。「自分でやってみて、ダメだったらそこから自分で学ぶんだから、ほうっといて、やらせてみせてよ!」と。だからこそ、いろいろやっていろいろブツかってきちゃったし、失敗もいっぱいあった。そんでもって、この歌に感じ入ったりするのね。

そんな思いで、この言葉を歌う娘さんを思いやるようなメタ気分で、弾き語り熱唱してしまった夕べでありました。(ぜったい近所の人に迷惑かけてるw)

 それにしてもこの楽譜(デプロMP)は、アレンジがとてもよく出来ています。たいていポップスの譜面って、コードを抑えるだけだったり、オクターヴのつまらない連打で終わりがちなんですが、こちらは弾いていても満足度高い。「弾き語り」バージョンは、歌曲とその伴奏くらいな感じで、正直「弾き語り」には向いていません(笑)そのくらい難しいので、やりがいあって楽しいです。

東京芸術劇場のパイプオルガンに接近!

2014年05月24日 | 音楽
さて、これはなんでしょう?




・・・と見せられて、この写真だけでわかる人はそういないでしょう。
なんとこちら、エレベーターなんです。しかもとても特殊な目的のために、特殊な場所に設置されたエレベーターなのです。


実は・・・ドドン!



ドドドン!



これら、二つのパイプオルガンのパイプを調整するために、楽器と楽器の間に設置されたエレベーターなのであります!!
ものすごく特殊です!




つい先日、池袋の東京芸術劇場のパイプオルガンを間近で見せていただき、音まで出させていただくという、とても貴重な機会をいただきました。
「芸劇」のオルガンと言えば、そう、あの大ホールのステージの上に君臨しております立派な楽器です。二種類あるのをご存知ですか?ルネサンス・バロックタイプ(木の色)のオルガンと、モダンタイプ(淡いグレー)のオルガンです。二つは背中合わせになっていまして、スイッチでウィ~~~ンと台座(?)が回転し、使用するオルガンが客席にお出ましになるという仕掛けなのです。

この日は楽器の目の前に連れて行っていただいたので、遠景からのオルガン全貌写真はありません。なのでハイこちら、パンプレットの表紙ですw



淡いグレーのモダンタイプは、遠目でみるとメタリックのような輝きですが、ルネッサンス・バロックタイプと同様に木材です。近くで見ると、色が塗られているけれどボディがちゃんと木なのがわかりました。

とにかく巨大な二つの楽器、放つオーラはハンパじゃありません。舞台の上はとても高いし、美しい二面の鍵盤と膨大なパイプに囲まれてはいるしで、初めて近付いたら激しく圧倒されないはずはありません。

お話を伺ったのは、東京芸術劇場オルガニストで上野学園大学教授の小林英之先生です。オルガンについてほとんど何もわからぬ訪問者にも関わらず、楽器の特性などについて教えてくださいました!



いろいろな質問に紳士的にお答えくださった小林先生(若い頃の江守徹さん似)。


まぁ、私が東京芸術劇場のオルガンの仕様や特性などについて何か書こうとしても始まりません。というより、にわか勉強でわかったように書いてもどうにもなりません(汗)知識を得たい方はコチラの東京芸術劇場 パイプオルガンの魅力を読んでいただくのがいいでしょう。
ここではオルガンについて先生が教えて下さったこと、この巨大な楽器に触れて感じたことなどを書いてみたいと思います。

****

木目調の方のオルガンは、実はルネッサンスとバロックの二種類のオルガンが入っているんですね。鍵盤上部についているレバーひとつで切り替えられます。
ルネッサンスとバロック、大きく何が違うか。ピッチと調律なんですね。ルネッサンスの方はa=467Hzで、ミーントーン調律法。バロックはa=415Hz、バロック調律法です。
ミーントーン調律法は、長3度の純度が高く美しく響きます。これが興味深いのは、あらゆる調性に対して万能ではない、というところ。先生いわく、

「異名同音ではなくて、異名異音なんですよ。たとえばこの鍵盤は、cis専用であって、desとしては使えない。ここはes 専用であって、Es durの主和音では、ほら、こう奇麗に響くけれど、H durではダメ(先生がh-es-fisを弾く。disではなくesなので、キモチわるい響き!!)。bはbであって、aisにはならない。簡単に示せば、ミーントーンってそういうことなんですよ。この調律では、♯が三つまで、♭が二つまでの曲が適しています。まぁ、この時代の曲にはそれほど調号の多い曲はもともとありませんから」

調性もそうだけれど、このオルガンでは作曲家もオランダや北ドイツの人たちの作品に限られるのだとか。スウェーリンク、ブクステフーデ、シャイデマン、シャイトなどの作品はいけるそうですが、フレスコバルディなど華やかなイタリア音楽には向かないそう。「弾けなくはないけど、パイプの整音が違うからね」と先生。



それにしても、ミーントーン調律法で得られた長3度の美しさは、当時の作曲家を相当インスパイアしたのでしょうね。ピカルディー終止(短調の曲が最後の和音だけ長調で終わる)というのは、このミーントーンで得られる3度を最後にファーーーっと鳴らしたいあまりに書かれるようになったのだとか。調律に触発されて、音楽の内容が変わる。新しい手法が生まれる。 こういう話は面白いですね。当時の人々の耳にオルガンが放つ純正の3度はどれだけの輝きを持っていたことでしょうか。そんなことは(ピカルディーなんて名前も)つゆ知らずに、なぜか子供の頃、家の平均律のピアノで短調の曲でも最後の和音だけ長調にしてうっとりしてワタシ。現代人の耳は若干ニブいのであります。
ちなみに先生は「長3度はその昔は不協和とされていたんですよね。完全五度が美しいとされていた時代には。オルガン音楽は14世紀の終わり頃から残っていますが、その頃はまだ完全五度が美しいとされていたんですよ。結局人間の耳なんて、教育次第なんですよね」
美の判断力とは後天的なものなんですね。

ちなみにこちらの鍵盤は、黄楊でできているそうです。



恐れ多くも、「弾いていいですよ」という先生やスタッフの方々の寛容なお言葉に甘えて、ちょっと弾かせていただきました。でも当然足鍵盤なんて触れませんし、オルガン用の楽譜も持っていないので、大胆にもまったくオルガン用じゃない(笑)バッハのフランス組曲からd moll のアルマンドを弾いてみました。切り替えがミーントーンになっていたので、かなり「うぎゃ!」という響きにもなりましたが、冒頭と終わりに出てくる左手の長い音価を伸ばしたまま演奏できるという夢の感触を味わうことができて(ピアノだと減衰しますから)、気持ちようございました!

・・・と、ふと目線をストップの上にみやると、なにやら面白い装飾が。なんだこれ? 顔?





「あ、これは、ガルニエの子供たちだって聞いたことがあるよ」と先生。ガルニエとはこのオルガンの製作者であるフランス人のマルク・ガルニエ氏のこと。子供たちの顔をこんなところに?! ちょっとキモ可愛いですね。

これらの装飾は、東日本大震災の時には一部落ちて壊れてしまったそうですが、すべて修復がなされたそうです。阪神淡路大震災後に、パイプに関しては全て耐震工事がなされていたので、びくともしなかったのだとか。しかし繊細な装飾も元通りになってよかったですね、ガルニエの子供たちよ。

さて、ここで「回しましょうか」と先生がおっしゃると、スタッフの方が例のスイッチを!! ウィィ~~~~~~ンと台座が回転して、モダンタイプが現れました。このお色直しはなかなかに迫力ある場面でした。ホールの天板の高さを、モダンタイプに合わせておかないと大変なことになるそうです(折れちゃう!)。舞台の設営をされるスタッフさんたちの間では、「今日オルガンどっち向いてる?!」っていうのは合い言葉なのだとか。

モダンタイプの鍵盤とストップです。手鍵盤は5段もあります。譜面台のデザインだとか、どことなく近未来的な雰囲気が漂います。


こういうところがモダンっぽい! コンピューターでストップを小節単位で記憶させられるそうなのです。が、これは実はルネッサンス・バロックオルガンでもできるそう。


こちらのモダンタイプは、19世紀以降のフランスのオルガンをモデルとし、さまざまな要素も付け加えられているのですって。調律はほぼ平均律。汎用性は高いので、こちらで古い曲も演奏されるそうです。

「それぞれの時代を反映した音色を使うので、必要なパイプが曲によってまったく違います。その意味では意外と『不便』な楽器なんですよ。ピアノなら一台あればなんでも弾けてしまうし、オーケストラなら必要な楽器の奏者が団員にいなければ『トラ』で呼んでくればいい、といったことになりますが、オルガンはそうは行きません。『メンバー固定のオーケストラ』のようなものなのです。このオルガンならこの曲は弾けるし、この曲は弾けませんね、ということになる。近現代のフランス人、とくにメシアンなんかはかなり精密な音色の組み合わせを指示しています。このオルガンでも、ある程度は工夫をしないと、書いてある通りには弾けないんですよ」

オルガン奏者は、オルガンありきでプログラミングをされるそう。まずは演奏を依頼されたオルガンのストップリストを見ることがスタートライン。それで何が弾けて何が弾けないのか、ほぼ消去法のようにして曲目を決めるそうで、これもモダンピアノ奏者の感覚ではほとんどわからないお話!コンクールでは、音色の扱いもその人が「曲がわかっているか、わかっていないか」をはっきり伝えてしまうので、審査対象になるんだそうです。なるほどなぁ!!

****

ピアノに慣れ親しんでいると「鍵盤楽器」ということで近しいようでありながら、その圧倒的な存在感やストップや足鍵盤の未知なる操作からは、ものすごく遠さを感じさせるパイプオルガン。

こんなに巨大で、この楽器の場合は9000本以上もパイプがあるというのに、意外にも「これはいけるけど、あれはムリ。この曲は工夫が必要」など、できることに限りがあるというのもパイプオルガン。

私は今回、パイプオルガンという楽器の持つ非常に両義性に満ちた魅力を感じました。

そんな魅力と出会ってしまったからには、あらためてじっくりと演奏を聴きたくなるのが人情です。芸術劇場のオルガン演奏会、ナイトタイムやランチタイムのコンサートが頻繁にあるようなので、今後足を運んでみたいと思います。オルガン講座も人気のようです。実はこの日も講座があって、アマチュアの方たちが10分という時間制限で試弾されていたのですが、最後に演奏されていた方がバリバリに弾き熟されていて驚きました! オルガン愛好家の層が、実は密かに広まっているのでしょうか?!?!

充実の見学を終えて・・・劇場から外に出てふと空を見合えると、ふくろうのシルエットが美しかった。いけふくろう・・・?


素敵なお話を聴かせてくださった小林先生、そして貴重な機会を与えてくださった東京芸術劇場のスタッフの皆様に感謝申し上げます。

BBC交響楽団とブリティッシュ・カウンシルによるワークショップ

2014年03月29日 | 音楽
本日はブリティッシュ・カウンシル主催、BBC交響楽団の奏者たちによる音楽ワークショップ「ファミリー・オーケストラ」@東京国際フォーラムに参加してきました! BBC響の人たちがトレーナーとなって、様々な楽器を持ち込んだ参加者100人と、2時間で一つの作品を作り上げるというイベント。
「あらゆる方が対象。まったく音楽に触れたことがない方でも、楽譜が読めない方でも、心配はいりません。どのような楽器を持ち込んでも大丈夫。子どもからお年寄りまで、さまざまな人が一緒になって音楽を作り上げるのが、このオーケストラの目的」
 誘っていただき「面白そう!いきます!」とお返事したものの、気がつきゃ私、持ち運び可能な楽器なんてなんもできないじゃないか! ピアノしか弾けないもん・・・む?ピアノ? そういえば、持ち運べるピアノ、持ってたんでした。トイピアノ♪ 以前、フランスからやってきたアンティークピアノ君を連れていくことにしました~

 会場は100人の大人と子どもたち。ヴァイオリンやクラリネットやフルートのほか、リコーダーやピアニカを持って来た人も多かったです。中には三味線や尺八も! あ、そうか、私三味線の師範だった、そのテもあったか!とは思いましたが、三味線は西洋音階で理解していないので、即座になにもできません。というわけで、トイピアノの私。どこに座るべきかわからなかったんですが、鍵盤ってことでピアニカの人たちに付いて行ったら、そこは管楽器セクションだった(爆)

 で、2時間で「これから皆さんで一つの作品を作ります」っていうワークショップ・ディレクターのアポッツさん。これがまぁ、よく出来ておりました!面白かったので、 創作曲の構成を書いてみます。

まず参加者は弦、打、管、声の4つのセクションに分けられる。

1、どんな音でもいい。指揮者の合図で何音かを一斉にスタッカートで鳴らす。

2、指揮者の指1本=レ、2本=ファ、3本=ソ、4本=ラ、5本=ド
の合図が、セクションごとにキューを出され、強弱や長さも指揮者に従う。

3、弦=レ、管=ファ、声=ラ のロングトーンを指揮者の合図で。あいだにチューブラーベルが鳴らされる。

4、セクションごとの曲の演奏(多分ここが山場。20分ほど、セクションに分かれた練習もありました)
弦=ドビュッシーの「海」的なフレーズの積み重ね
打=ストラヴィンスキーの「春祭」にインスパイアされたリズムアンサンブル
管=ガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」にインスパイアされた短いフレーズの合奏
声=ヴィラ=ロボスの・・・なんだったかな?・・・にインスパイアされた部族的な声とボディーパーカッション

5、セクションごとに与えられたd mollの短いモチーフを、指揮者のキューに従い繰り返し、合図でフィニッシュ!

これを全部つなげて、見事、さいごに通して演奏したのです。何分くらいだったんだろう?たぶん10~15分くらい?の現代風な一つの曲になってました!本当に見事でした!

こんな風に言葉で書いたって、まったく状況が伝わらないかもしれませんが、良かったですよ。このワークショップの成功の鍵はどうやら・・・

●音楽的に限られた素材(モチーフ)を使うこと
●パートリーダーたちがしっかりと曲の骨組みを支えてくれること
●指揮者(ワークショップ全体のディレクター)が全身のアクションと話術で、巧みに参加者の集中力を惹き付けること

・・・あたりにあったのではないかと思います。もとより、参加者たちは何かしらオーケストラに関心のある人たちなので、経験値はバランバランだとしても、上記の条件がそろうと、創作曲の合奏としてきちんとまとまるのだと思います。

プロオーケストラによるこうしたワークショップの意味って、とくに子どもたちに「君も楽団員を目指そう!」とかいうよりも、音楽するという行為の根源的な歓びを味わい、オーケストラ団員の気分を体感することで、オーケストラを愛する「良き聴衆」を作ろうとしているのかなぁと感じました。
いいですよね、こういうアウトリーチの活動。
こうした活動が日本のオーケストラにも求められていくのでしょうか。面白いです。


ブルクミュラー「12の練習曲」が、タイトル付きで蘇る!

2014年03月08日 | 音楽
きましたーーーーっ!
近日発売の新しいブルクミュラーの楽譜です!解説陣の一人に加えていただきました!!ご存知、春畑セロリさん、黒田亜樹さんと共に!!ひゃー

よ~~くご覧ください。3冊同じ楽譜じゃないですよ。こちら、「12の練習曲 op.105」であります! 大ヒット作「25の練習曲」の続編が「18の練習曲」、そのさらに続編が「12の練習曲」でなのであります!
 でもね、「12」って、これまで不遇だったんですよ・・・。難易度が上がるから、弾かれる率も低くなる。それは仕方なし。でも、もっと大きな理由は、「25」も「18」も、ピアノ学習者たちにとって嬉しいステキなタイトルってものがあるのに、なぜか「12」だけはいきなり番号スタイル。番号だけになると、突如として練習曲然とした、近寄りがたい感じになるのですよね~・・・

 と・こ・ろ・が。昨年、「25の不思議」執筆中に、「12」の初版調査をしていて、発見して取り寄せた楽譜をみたら、ななななんと。付いていたんですね!タイトルが!!!
こーれーを、アナタ。夜中に一人で発見してごらんなさいよ。もうね、ぞわぞわぞわ~~~~っと来ましたヨ!!
これまで「第1番」「第2番」というように番号でしか知らなかった曲に、いきなり「Chant du printemps」だの「La dramatique」だのが印字されている19世紀当時の楽譜を見てしまったあの瞬間……。

というわけで、大騒ぎして本の出版社である音楽之友社さんに報告。真夏の深夜のことでした。それからじわじわと、タイトル復活版の話が進み…こうして出版となったわけであります!ご尽力いただいた編集者様(涙)ありがとうございます。。。ブルクミュラーくんはあの世で怒ってるでしょうか、喜んでいるでしょうか・・・眠っていたタイトルが蘇った今、そんなことが少し気になります。なにしろ、初版以外の現行までの他の版には、タイトルがいずれも消えていますので。。。

まだまだ不思議の多いブルクミュラー。「18の不思議」も作れそうですね・・・
とりあえず、難易度は高いが素敵な曲の多い「12の練習曲」、これから見直しがどんどん進み、多くの方が弾いて下さることを期待しております☆

あけましておめでとうございます

2014年01月02日 | 音楽
明けましておめでとうございます。新年を迎えますと、いろいろと志などもアップデートしたくなるものです。
年末に見たNHKの『くんれん~あなたの知らない危機管理の世界』という番組で、JRの若い職員さんたちが日頃から人の命に関わる業務を担う中、レールや電線の整備を正確・精密・時間通りに実践する訓練を伝えていました。その中の職員のお1人が、学生時代に就職活動をする際にこの仕事を選んだのは「公共性の高い仕事をしたいと思った」のが理由だと挙げられていたのが、すごくすごく印象的でした。
「公共性の高い仕事」……いやぁ…、22か23かそこらのワタクシなんて、お恥ずかしいことにそんな考え方の「か」の字もなかったと思います…決して誰もがそうではありませんが、だいたいが「芸術」とかの学校で勉強しちゃうような学生はその段階で、およそそうした視点への開眼が遅れがちなのでは否めないでありましょう。
 恥ずかしさ満点の自問自答ばかり繰り返した長すぎる学生生活を経て、その後はナントカカントカ仕事をしてきて、あらまぁ気がつけば今年フォーティー。自然に流れて行き着いた、といいますか、むりくり「なろう」と思って「なった」職種ではないこのライター業と翻訳業、それなりに培ってきたものを使い、ある意味で対象を「公共性の高い」ものへと変換させていくことができる仕事であるからこそ意志をもって続けてこられているのだと思います。より広く、より誘起的な発信に勉めて……☆ 今年も一つ一つがんばります☆

山の中で、パンチの利いたラーメン

2013年12月28日 | Weblog
今朝は張り切って5:50に起床しました。まだ暗い。
千葉までラーメンを食べに行くという目的のために。
山の中のラーメン屋さん。
千葉県長生郡長南町というところの、
なんでも知る人ぞ知る人気店なのだとか。

この1年、お互いにバタバタとしていて、
たぶん1度も一緒に遊びらしい遊びに遠出することができなかった私と夫の人。
年末に1日くらいは・・・ということで、がんばりました!

レインボーブリッジで日の出を見てテンションがあがり、



アクアラインを走って爽快さを味わい、



たどり着いたのは・・・



ここ。

めっちゃ山の中。まわりこんな感じ。





途中で道がまったくわからなくなり(ナビが機能するのをやめた・汗)、
ラーメン屋さんの屋根は見えているのに、
なぜかそこに辿り着けない。
近くをウロウロして迷いに迷って辿り着きました。

こちら、「ラーメン八平」、初めての客にとってはオーダーの仕方がけっこう難しい(泣)。
おばあさんと娘さんらしき女性が二人できりもりしているようで、
ある程度の人数分を一度に作り、
それが納品されたら、また次の何人分かを作るっていうシステムらしい。
なかなか注文できない我々に、
常連さんとおぼしきお兄さんが促してくれた!優しい!

ちなみに、そういう「ご当地ルール」みたいなのを、
私はのんびり構えて順応できる人間では全くない。
こういう場合かなり動揺する。
「え~、待っても待ってもいつまでも私だけ注文できなかったらどうしよう・・・」と。
だから海外のレストランのオーダーとかお会計とか、もの凄く苦手なタイプ。

さて、人気店らしいという噂は本当で、
がんばって(!)入れたオーダーを聞き入れてもらえたのが、
入店後20分くらい。
座っている席は土間なので、足下からシンシンと冷えてくる。
しかも久々の早起きで眠いし、空腹感もマックスで、
我々夫婦は省エネモードに入っていた(=完全無口)。

でも我々の近くに座っていた、オーダーを促してくれた優しいお兄さんとその可愛い彼女は、
お互いに気遣いながら、長い待ち時間も楽しそうに会話をしている。
彼ががんばって映画の話とかをふり、彼女も優しい微笑みで穏やかに言葉を返している。

「いいね。デートっていいね。素敵だね。君たち眩しいよ」

そう心の中でつぶやきながら、
気の遠くなるような思いで、無言・無表情でラーメンをひたすら待った。
注文したのは有名な「アリランチャーシューの中、辛さ普通」である。

到着からほぼ1時間後、ようやくラーメンが目の前に来た!
・・・・・・が、これが、もの凄いパンチ力あるヴィジュアル。
まっ茶色なスープ、にんにくゴロンゴロン、たまねぎどっさり、
そしてチャーシューが覆い尽くし麺がまるで見えない!
おばあさんが作っているなんて、ちょっと想像しがたいくらいだ。
味は濃い。かなり濃い。そしてちょっと辛い。すっごくスタミナ系。

いや~これは若い男子が好きそう!かなり喜びそう!
でも・・・アラフォーの身体が冷えきった省エネモードの女には
正直パンチが強すぎて、ちょっと見た目もビックリで、若干引いてしまいました。
あ、でも、おいしいですよ。お店が人気なのはやっぱりわかります。
ただ、ちょっと自分がついていかれなかった・・・orz。
あまりのラーメンの迫力に圧倒されてしまい、
写真撮るということさえアタマからぶっ飛んでしまいました。

食べても食べても減らない・・・
すんごい色のスープなので、
たんまり入ったたまねぎをせっせと食べて、
少しでも血液ドロドロを防ごうと必死なんだけど、
チャーシューも減って行かない。
夫の人はガンガンいってました。

そこに聞こえてきました。やさしいカップルのお兄さんのお声。
「今日はちょっといつもより、味濃いかもなぁ。あとちょっと麺がやわらかめかも・・・」

そーなんだ。
人気の美味しさはわかるけど、普段はもうちょっといい感じなんだ・・・。
と、そこに彼女のお返事。

「そっか、ご愛嬌だね。」

おおおおお!!!!
彼女、多分まだ20代。なんと気の利いた一言!!!

「ご愛嬌だね」

やっさしーーーーー!!!!

いや~若い頃って偏狭じゃないですか。
20代の頃のワタシなんて、そりゃもうつき合ってる男の子には性悪(!)で
けっこうワガママでアホい娘でしたよ。
たぶん、こってりガッツリ男子系の足下冷えるラーメン屋さんに連れて行かれて
待たされでもしたら・・・相当不機嫌なアホ姫になってたと思う。
それにくらべてこの彼女ったら・・・・(涙) なんて可愛い優しい子なの?!?!
私、20代の頃「ご愛嬌」なんてボキャブラリー持ってなかったよたぶん。

あー素敵なカポー。
彼らを見ているだけで、ラーメンの温熱効果も倍増したよ。

さて、そんな八平のラーメンでしたが、
男性にはオススメです。
とくにライダーにはいいかも。山道を攻めたあと、
ここでピリ辛ニンニクスープのラーメンで
あったまるといいと思うよ~
夫の人(ライダー)も今度また来るって言ってました。

さて、ラーメンを食べた我々は、おとなしく都内へ帰っていきました。
年末年始といえど、ほぼ平常営業で原稿書く予定でいます(^^;)
スタミナつけたし、がんばるぞー。

時間の問題・・・・・・

2013年12月27日 | ねこごと
先日、我が家の巨大チワワが、見なれない色したウ○コを出しており、
病気かと慌てたのですが、それはどうやら



彼のお気に入りの子象ぬいぐるみの片耳であることが判明。
しかももう片方の耳が取れるのも時間の問題。
また飲み込んで、万一詰まりでもしては大変である。

というわけで、子象には気の毒だが、
取れかけていたもう片方もちょん切りました。



両耳がなくたって、やっぱり愛してるみたいです。

もうなんだかワケのわからない形になった子象。
我が家では「テングー」と呼ばれることになりました。

使用例:
「わっち(←犬の名)、テングーとってこい!」
「あれ? テングーどこいった?」
「エサもうあげたでしょ! テングーで遊びなさい」


テングーって知ってます?
密かに我が心の師匠とあおいでいるみうらじゅんさんが考案した
天狗のキャラです。
ピングー絶頂期くらいに登場してたやつです。



とくにオチのない話ですが、
久々にブログに犬・猫を登場させたかったっていう。

『ブルグミュラー25の不思議』@山野楽器本店さま 

2013年12月26日 | 音楽
山野楽器銀座本店さんではブルクミュラー本がポップ付きで置いてくださっているとのこと!(涙)ブルク君の微笑む、よい感じのポップであります。 誠にありがたいことでございます。(お写真掲載の許可をいただいております)

タイミングによっては大きなお店でも手に入りにくいこともあるようなのですが、中規模(?)くらいの本屋さんで棚にささっていたりしますので、「ないじゃん!(怒)」と思わず、どうぞお近くのお店をごらんになって手に取ってみていただけると嬉しいです♪  冬休みのおコタとミカンのお共にどうぞ☆


バレエとピアノ音楽~ブルクミュラーに導かれた礒山先生との出会い

2013年12月25日 | 音楽
 先日発売になったばかりの『ブルクミュラー25の不思議~なぜこんなにも愛されるのか』(飯田有抄・前島美保著、音楽之友社)、執筆にあたりお世話になった方々のお手元には近日中に届くことと思います♪

 さて、ブルクミュラーは、かなりバレエの世界にどっぷりな作曲家だったようで、本書ではそのことにもスポットを当てています。そこで貴重なお話をうかがったのが、本格的なバレエピアニスト(コレペティートル)としてバレエのお稽古現場や試験場で20年以上ものキャリアを積まれてきた礒山久理さん。なんとブルクミュラーの曲は、世界最大のバレエ教育機関「ロイヤル・アカデミー・オブ・ダンス」のグレード試験の課題曲として使用されることもあるそうです!バレエピアニストの見地から、ブルクミュラーのエチュードについてのお話を伺っております。ぜひそんなあたりも注目していただきたいところです。
 本日はそんな礒山先生に本を直接お手渡しすべく、上野でビーフシチュー・ランチ・デートをしてきました~♡ 日本におけるバレエピアニストの誕生、位置づけ、そのお仕事内容などなど、興味深いお話をいろいろとお伺いしました。

「バレエピアニストは、ソロの演奏とは違った技術を求められます。どんなにソロが“上手に”弾けても、お稽古場ではバレエの先生から手厳しい評価をもらうこともあります。テンポは基本的に一定で弾かなければいけないのですが、音色で立体感を出すことが重要です。またダンサーたちは裏拍をとてもよく聴いているので、クラシック音楽のみならず、アフタービートの利いたポップス的な音楽センスも必要になったりします。ロイヤル・アカデミーのグレードは『生ピアノ伴奏』が必須ですので、このグレード試験が日本に導入された時期から、日本でもバレエピアニストたちが現場で育成されることとなりました。私はその最初期から関わってきたのですが、バレエの伴奏で培ってきたことのすべてが、私自身の演奏やピアノ指導に大きな意味をもたらしてくれています」(礒山先生談)

 本来ピアノ音楽の中にはたくさんの舞踏的な要素もあるというのに、これまでなかなかバレエの現場とピアノの世界に通じる風穴があったとは言えないと思います。ブルクミュラーはバレエ・・・そう知ったあとでも、なかなかその筋の人と出会えずにいたのですが、ふとしたことがきっかけで礒山先生と出会えたことが奇跡のようです。
 これをきっかけに、ピアノ曲におけるバレエ的要素や、バレエから教えられるピアノ曲の表現など、いろいろと考えられるような気がしています!
 ブルクミュラーが与えてくれた出会いに、感謝感謝のクリスマス・イヴとなりました☆☆

樹原涼子さんの大人のためのピアノ曲集

2013年12月21日 | 音楽
オトナのピアノ一気弾き(と勝手に名付けている)・・・これぞ贅沢な午後。
樹原涼子さんのピアノ曲集《こころの小箱》と《夢の中の夢》(音楽之友社)を一気弾きしてしまいました(連弾以外の全曲)。
弾きながら、あたまに浮かんだ、率直なヒトコトは・・・・

「助かります!!!」

つまりその。世界観は完全にオトナなんです。タイトルは「時の砂」「言葉よりも」「こころのオルゴール」「いかないで」などなど・・・およそキッズにはわかるまいとほくそ笑んでしまいたくなるような、そう、酸いも甘いも嗅ぎ分けた大人にしかわかるまい!と豪語したくなる世界観。

なーのーに、音の数が少ない!!=よって、すぐに弾けるのです! 助かります!!
なーのーに、「ぅおっ」とキモチよくなる転調や、「ふふっ」と弾けてる感を味わわせてくれる両手の反行音型などなどが仕組まれているのです! 助かります!!

ひさびさに鍵盤に向かってるし、そんなに体力も根気ももうないし(苦笑)、なんか速くて派手な曲とかもう弾けなくてもいい。でもイッチョマエに和声の変化とか和音の重ね方とか、くり返しのときの強弱の妙やら5拍子のリズムなんかを工夫して遊びたい大人たちのワガママ趣味ピアノ・・・・そんなこちらの心をすべて読み取っているかのような作品たち!☆☆☆ 助かります!!

さすが長年指導の現場でご活躍されながら作曲されている樹原先生だけあるなぁ・・・(何目線??スミマセン)と、おもわずうなるワタシ。
そしてなぜか、全曲弾き終わったあと、「過去の貯金」で弾けるシューベルトの即興曲とかも、本当に久々に弾けました。

弾く人としてのピアノ音楽のスイッチを入れてくれるこうした曲集、素敵ですね☆

明日は恵比寿で樹原先生のクリスマスのライブです。また別の楽しさが発見できるのではないかとワクワクしています。