今見返すと、「実際に体験した事を抽象化して表現する」と言うのは物語を創る上で一つの方法ではあるが。
問題提起ならともかく、成功例、みたいなものは、ちょっと「面白い」か?それは少し、思った。
以前に考えた「とある職場での騒乱について」の、プロデューサー残酷物語、みたいな話の続編ではある。しかし?今回は割と現場的な成功例、その変換、という感じにはなった。以前にちょっと話した「12チームで3種の競技での大会」を如何に?みたいな奴の、顛末。面白いか否か、テキストのみでは理解されにくい、というのは理解しつつも、ちょっと考える。
「阿川ディレクター、奮闘する」
前回のガンダムを何とか成功させたプロデューサーだったが、その後に続く物語では、自身の提案の殆どが採用されず、みたいな感じにはなり…正直懲りた、という失意に支配されつつも。会社側はしかし、現状のメインコンテンツに迫るその危機感故、だろうか、彼に休む間を与えなかった。
次なるガンダムの制作が、気づくと決まっていた。
そのプロデューサーから依頼されたディレクター「阿川 直也」氏は、久々の監督業に意欲的にはなる。以前にはちょっと才走った結果で損害を出し、しばらく干されていた彼だったが、家族も居る中、同じ失敗は二度と、そんな決意と共にまず、顔合わせと言う事に。プロデューサーによって集められたスタッフは、それ相応の?人々が集まっており…また、創りたいそれと言うのもあって。ともかくオーダーに見合う様に、現場からネタを集める、という事になり、プロデューサーも、その方向性には同意する。阿川はその創案?を元に、企画原案を立てる事に。
条件は、13話程度のOVAシリーズ。その時、それでもその最初の創案はちょっと壮大?過ぎた。グリプス戦役のそれを、ガンダムWの世界観で、というそれは、ちょっと13話で描くのは、少し面倒が多い、という事から、ディレクターは少し規模を縮小して考える事に。
それも、悪い癖か。本当にグリプス戦役時の話として考え始める。
アクシズへ物資を輸送する部隊は、ティターンズ、エゥーゴ双方の目を掻い潜って、そのアクシズへと届けねば成らない。入り乱れる思惑の中、結末は如何に?
「めんどい」と、最初の企画会議でまずシナリオライターから突っ込みが入る。
監督としては連邦の?新形ガンダムによる遭遇戦、という所から考えていたが、シナリオとしては何処から手を付けていいのか解らない、という話。
「もっとシンプルに、単に次々敵が出てくるで良いんじゃねーの?」と、創案の原画監督、それは言う。
監督はプロデューサーに相談するが、
「お任せします」
で、終わってしまった。
監督はともかく孤軍奮闘と言うか、一人次の企画会議に向け、全体のプロットを練る事には成る。
草案
最初に、連邦の新型ガンダムテスト部隊が空域に到達し、マニューバその他のテストをしてる。
そこでパイロットは違和感を感じる、多少自由に動ける事から、気になった方向へ進むと、その先にジオンの、大型貨物船の姿が。主人公は報告、部隊はその接収へ向かうが相手から、MS部隊が発進し、交戦状態に陥る。そこは逃げられるが、追撃の命が。
ティターンズから増援という事で、幾つかのMSを載せた艦船が合流するが指揮系統は、ティターンズ側。主人公らは最後尾という事になった。一方その頃ジオン軍輸送艦では事態を切り抜ける為に検討、「エゥーゴを呼び出しましょう」それをぶつければ、少しは。
という先で、ティターンズらが追い付いた時、同時にエゥーゴの部隊もその宙域に出現し、自体は想定外の遭遇戦という事になる。その隙に逃げていくジオン軍輸送船。
主人公らはティターンズの援護をするが、戦いは硬直し、双方痛み分け的に退避し。
ティターンズはエゥーゴ部隊への追撃を決定し、ジオン輸送船は主人公らに委ねられる。
主人公らは輸送船を追う事に成る物の、エゥーゴ部隊の方が輸送船の存在を重視。
ティターンズが居た、という事はジオンとの癒着も考えられる、証拠を抑えられれば?という事から、エゥーゴは増援を送る事になり、追撃のティターンズは数的優位を覆され、窮地に。
彼らは彼らで主人公らの艦隊に救援を要請、結果、再度の三つどもえ、と言う形に。
結局、ティターンズ、エゥーゴ、主人公ら共々、ただ損害を重ねただけで、ジオン輸送船には逃げられる。
輸送船はその時、損害を避けた、という事が功を奏した。
「こんな感じですが、どうでしょう?」「良く解らない」と言う、再びの企画会議での、オチ。
様々なツッコミを補正しつつ、最終的には「それなら単に前半の追撃戦だけで良いのでは?」という、そこは監督も同意し、ともかくシナリオはエゥーゴが誘い出され乱戦になる、所までという事になった。
全体テーマは、血気に先走って好戦的な連中に対して、損害を避ける人々が勝った、という所をオチにして。
「そんな面白いですか?」と、シナリオさんからもそんなツッコミがされる中、過去の経験則から「こんなもんで」と言う所でオチにして、ともかく製作が開始される。プロデューサーからは謎の感謝はされる。それで良い。
製作はそれでも、最初の客の否定感は次第に薄れ、最終巻に至るに従って、盛り上がりは見せる。
ともかく監督にしろ、「可もなく不可もなし」失敗とは言えない、と言う程度には、オチに成った。
良くも悪くもプラモデルの売上は上々で、製作側にも幾ばくかの返礼があった、位。
ただ監督としては、「売れたの?」と言う問いには、どうも言葉は鈍る結果には、成った。
プロデューサーと後に話をする所では、欲張らないのが良かったんだろうな、良くやったよ、そんな話に。
ちょっと、内容の抽象化は果たして?ではある。元々それほどに大きくないスポーツ大会?の顛末、その抽象化?である。こういうネタを探してシナリオに起こすべきか?は、ちょっと考える所だったりはする。「現実」にそこで起こった事なら、如何なる疑問もまた、現実に問うしかない訳だが。
現状では、意外と理想かもしれない。余計な思惑、変な対立も無く、ただ要求されたものが、満足いく形で具現化した、という。運がよかった、というのは、果たしてだ。
ともかく世界には、作者だけが居る訳ではない。