医師日記

「美」にまつわる独り言です
水沼雅斉(みずぬま まさなり)

ユダヤの美宝2

2007年10月14日 15時56分57秒 | Weblog
 作者のポール・サスマンは1968年生まれ・・・ってことは僕より4歳年下・・・?

 それで、この知識は・・・まだ30歳代にして・・しかも物語の構成力・・・すっ凄過ぎるぜいっ!

 彼はケンブリッジ大卒。

 卒後3年間、世界各地を放浪して、墓堀人、建設労働者、洗剤セールスマン、コメディアンを経て、コラムニスト、フリージャーナリストとして活躍後、「カンビュセス王の秘宝」でデビューしたそうで、実際の発掘調査にも参加しているんだそうです。

 日本の文壇にもこれくらいの大風呂敷を広げられる、若き大物に登場して欲しいものですな。

 亡国のイージスの福井晴敏氏も1968年生まれですから期待の星です。

 ポール・サスマンの小説の特長は、何といっても、豊富な考古学的な知識と、題材の面白さ、国際色豊かな構成です。

 中でも、本書のあとがきにも評価されておりますが・・・

 白人の書く小説は当然ながら白人の主役が多く、アラブ人は悪者であったり、分(ぶ)が悪かったり、ひどいものでは人種差別的なさげすみがあったり・・・

 しかし、彼の小説はそもそもがイスラム教徒の有色人種であるエジプト人が主役だし、イスラムの民にもユダヤの民にもパレスティナの民にもヨーロッパ人にも公平なところが素晴らしい。

 むしろ欧米諸国が悪者だったりして・・・。

 残念なことには、カンビュセスでも本題でもそうですが、どうしてもいつも大どんでん返しを狙いすぎ、後半に無理が生じるところかな・・・。