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チラシの裏

宇宙の孤児と世代型宇宙船

2013年08月04日 | SF
世代型宇宙船というシロモノはSFならではのアイデアですが、
これをテーマに書かれている作品は意外に無さそうです。
ワタシが読んでないか、翻訳されていないのか?
オールディスの「Non-stop!」の翻訳が出るのを待っているんですが、
ムリだろうなあ。

「Non-stop!」についてはこちらのブログを参照。
すばらしいブログですが更新されていないのが残念。
もっと紹介して欲しいです。
英語の読めないSFマニアの原書落ち穂拾い



ブリッシュの「星屑のかなたへ」も
世代型宇宙船のヴァリエーションの一つかもしれませんが、ちょっと違うか。


イラストは鶴田一郎

新潮文庫宇宙SFコレクション1「スペースマン」所収のセイバーヘーゲン「バース・デイ」は
伊藤典夫と浅倉久志のお眼鏡にかなっただけある好短編ですが、
世代型宇宙船を舞台にしなくても(地球上でもどこでも)同じ効果はあるんじゃないか、と。




最初に世代型宇宙船というアイデアで書かれた
ハインラインの「宇宙の孤児」の完成度が高かったため、
後発の作品が「宇宙の孤児」を超えられなかったのではないか、と思えます。
それは宇宙船の中の生活を比較的ヴィヴィッドに描いている点も見逃せません。
叛乱によって乗組員と乗客との間にヒエラルヒーが生じるとか、
女性が登場人物の配偶者でしかない扱われ方とか、
いかにもタカ派なハインラインの面目躍如です。
その強引さがハインラインのジュブナイルに躍動感を与えているのも事実でしょう。
「宇宙の孤児」では最後に、瀕死の仲間のミュータントに引導を渡す場面もあり、
けっこうハードボイルドです。


クリス・フォス調の宇宙船を描くは鶴田一郎。
物語の最後の場面らしいのは、
左下に見える小さな光跡が主人公たちが乗る脱出船?


世代型宇宙船で到達した星で、
乗組員が神になり乗客たちは支配される民衆となる物語がゼラズニイの「光の王」で、
「宇宙の孤児」で主人公たちが脱出した宇宙船の結末から物語を書きおこしている、
という解釈もできます。

そういえば、ロバート・J・ソウヤーの「ゴールデン・フリース」は
恒星間植民宇宙船のなかで起きた事故(殺人?)を探る男がたどりついた驚愕の真相、
というSFミステリです。



「宇宙船内連続胃かっきられ事件」なんてのもあったなあ(吾妻ひでお&萩尾望都)。
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