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ライツヴィルカルテット その1

2019年06月18日 | Eクイーン
「十日間の不思議」

「構想が大きければ大きいほど、物語は絵空事になる」(「推理の芸術」P116)
「梗概の膨大な無茶のすべてを、純粋なレトリックというマントで覆い隠す」(同P248)
と、リーのセリフには苦労がにじんでいます。
リーが付け加えたという父親のイメージとは
「犯人が十戒のモチーフを選んだのは強迫的な父親像への復讐」
という心理をエラリーに説明させているところかと思いますが、
それは結果的にこの構想を作ったダネイの心理をも暴露することになり、
「最も激しい反応を引きずり出すため」(同P248)とは、
ダネイへのリーからの精神攻撃だったのかもしれません。

作者という二人の神様が戦っている間、ワリを喰うのは登場人物たちで、
エラリーが罰を受けるのは、初期のころの得意げに探偵稼業をしていた罪業のため、なのか。
リーもがんばってリアルな人物に仕立てているにもかかわらず、
その言動に納得できないんだなあ。
とくにバカップルの二人については、わざとヤバい方を選んでいるとしか思えない。
(現実にそういう人たちもいるでしょうが)

傑作「災厄の町」(および「フォックス家の殺人」)がリー主導で書かれたとすると(証拠はないけど)、
ダネイが敵愾心を燃やして「自分が考える探偵小説の傑作」を目指して構想したのが「十日間の不思議」ではなかろうか。

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