童話「ベロ出しちょんま」を書いた斎藤隆介が
雑誌「室内」に連載していた、職人の聞き書きです。
ほとんどが明治生まれの職人が語る、粋と意地の話って
ほんとに日本のいい部分、という気がします。
それに職人の顔ってすばらしいです。
泣ける話というのは、こういう本のことだと。 . . . 本文を読む
フランス象徴派の詩人でありながら流行り歌の作詞家、
早稲田の教授なのに株屋、
童謡を書いているのに、70になっても浮気しまくる西條八十
その評伝です。
書き手は斉藤憐。上海バンスキングの作者と言えば、ご存知でしょうか。
ランボーの研究を書き上げるはずが歌謡曲の歌詞を書き、晩年の病床にあってもラジオから流れる小娘の歌う自作の歌をニコニコしながら聞いている姿は、天性の歌謡曲作詞者そのもの。そ . . . 本文を読む
「日本」とは何か 日本の歴史00 網野善彦
どこの国にでも国の始まりがあるはずですが、日本はいつから日本だったのでしょうか。
そんな簡単な疑問さえ抱かなかったのは、明治以降の権力が『悠久な過去から「日本はあった」と思わせる教育』をしてきたせいでしょう。
個人としての天皇に責任は無いにしても、天皇制がその責の一端をになっていたことは間違いないはず。
とにかく日本列島に住んでいた人は画一ではなく、様 . . . 本文を読む
サンカという言葉は戦前の伝奇小説ぐらいにしかお目にかかれない「死語」だと思っていましたが。
ずいぶん前に三角寛の本が復刻されたこともありますが、
そもそもサンカとは何か?
国枝史郎の作品に出てくるような、妖しい力を使う謎の一族?
著者は問題にかかわった視点から、サンカとは江戸時代末の大飢饉時に山中に入った低所得農民だと推測しています。
柳田國男のいう「サンカ=先日本先住民の末裔」ではな . . . 本文を読む
世界の円谷です。
わたしも著者と同い年であるせいか、著者とまったく同じ行動パターンなのがおかしかったですね。
番組のクレジットに「特撮監修 円谷英二」となければB級作品だと思っていた!
これです。
特撮技術そのものもさることながら、映画自体のカット割や演出に細心の注意を払っているような気がします。
「三大怪獣 地球最大の決戦」で手前の鳥居をナメながら遠方のキングギドラを映すカットとか、
「 . . . 本文を読む
なぜかビートルズの謎本が2冊出ました。
ビートルズ謎本2冊、ビートルズの人となりとかゴシップ系の話題は「謎」の方で、「真実」は楽曲分析にウェイトがかかってます。
こういった人間関係の日本の研究者のつらいところは、どうしても二次資料を使わざるをえないことで、英国の研究者は関係者に直接会えることが強みですね。
「真実」はビートルズを演奏する人たちへの実践的アドバイス、みたいなものです。アルバムご . . . 本文を読む
戦国時代から現代(明治あたりまで)の実在の剣客たちの評伝。
意外に面白いんですよ。
さらに言えば事実を書いた歴史書ではなく、伝聞や先行書からの孫引き、講談、創作、などが渾然一体となって、あったであろう事実とそうであって欲しい夢がないまぜになった一種のファンタジーに近いものを感じました。
有名どころの宮本武蔵や柳生一族、近代では男谷精一郎、山岡鉄舟あたりはページが多いんですが、佐々木小次郎まで入って . . . 本文を読む
ハイパーリアリズムを使い捨ての挿絵で
日本の画家の誰よりも最初に具現化してしまった、
いまや伝説の挿絵画家、でしょうね。
対象物を線でなくマッスで描いて、
写真製版技術の未発達のころは、
「まるで写真のようだ」「写真以上」
と言われたことは想像にかたくありません。
とにかく、かっこいい。
昭和40年に亡くなっているので、
直接雑誌で見たことはなかったのですが、
話だけは、あ . . . 本文を読む
フィル・スペクターに「勉強させてくれ」と手紙を書いた、それだけで驚くが、なんとスペクターからOKという返事をもらった、というのがまた驚き。しかし、その頃(70年ごろ)スペクターはクスリやなんかでイカレポンチになってて、スペクター弟子入りは雲散。そのかわりに選んだ師匠がスティーヴ・バリというんだから、筋金入りのポップスマニアですね。その頃ならロック・ソウル畑の人脈でもよかったのでは?(例えばアトラン . . . 本文を読む
たぶん今年一番の興奮本です。
とはいえ元版は10年ほど前に出ているので、そのときに読んでいればとは思うのですが、たぶんこちらの頭がついてゆかないでしょうね。それにこの文庫は新仮名遣いに直してありますが、元版は旧仮名遣い、読み通すのにずいぶん時間がかかったでしょうね。
旧約聖書の「創成記」、いわくアダムとイブの楽園追放、カインのアベル殺し、ノアの方舟、バベルの塔のエピソードなど、そのウラに隠された . . . 本文を読む
頭の中の、いわゆる「小説」というものを記憶する部分のほとんどは、「翻訳小説」、とくにミステリ、SF、ファンタジィと呼ばれるエンタメ系で埋まっている。小学校中ごろからの蓄積だから相当な分量になるはずで、当たり前だが数えたこともない。読み捨てられるはずのエンタメ小説を集めて分析しようなんてのは、よほどの物好きでしかない。でも、忘れられるはずの翻訳者の名前がなぜか作者の名前とコミで記憶しているのは不思議 . . . 本文を読む
まだ読了前ですが、北一輝という人物がナニモノであったのか。
ほかに北一輝のことを著したものを読んだことがないので、刷り込み状態であるとはいえ、この本は相当に攻撃的です。30年前に書かれたのですが、その時点で世に出ていた北一輝論をことごとく粉砕して、相手の耳の穴に原稿用紙をつっこむぐらいのイキオイで自説を展開していきます。
でもオモシロイ。
「革命帝国」(!)「明治憲法は民主的」(!)「西郷は日本的 . . . 本文を読む
「阿片王 佐野眞一著 新潮社」
満州という国は戦後日本の高度成長のたたき台となった。特急あじあ号の最高速度は新幹線開通当時のこだまと同じだ。水洗便所、セントラルヒーティングなど、戦後日本のモデルがそこにあった。それは満州国での若手官僚、実業家たちが戦後の第一線にたったということを意味し、戦後日本の繁栄は満州と地続きだったともいえる。その満州と関東軍を金で支えたのが阿片王と呼ばれた里見甫という人物だ . . . 本文を読む
山中峯太郎って誰、ですよね。戦前の小説家ですがわたしも読んだことがありません。でも戦時中に発表された「敵中横断三百里」は当時の大ベストセラーで、それが代表作の冒険小説作家、と思いきやじつは作家としても器用な人でいろんな作品を書いているし、信じられないかもしれませんが作家になるまでは中国革命党党員、陸軍中尉、朝日新聞記者という立場をほぼ並立させていたようです。
この本の元になっているのは本人の日記や . . . 本文を読む
新聞の書評で「世界最古の企業が日本にあり、それはなんと聖徳太子が法隆寺を造る前からあった」なんてあったので、書店に走りました。
こういう話となると、伝奇小説的妄想が暴走してしまうので。
ケータイなどの最先端技術には、じつは日本の伝統的技術が多く応用されているという話です。一般的にアジア全体は強固な血族会社が多いのだけど、日本だけは老舗といえども他の血を入れつつ革新を伝統として、時代に即しつつ生き残 . . . 本文を読む