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●『官僚とメディア』読了(2/3)

2010年04月04日 07時07分14秒 | Weblog

魚住昭著、官僚とメディア

 耐震強度偽装事件(p.56)。小嶋進や篠塚明らに「ぬれぎぬを着せていることになる」(p.58)。姉歯氏の設計について、「今回の事件は、勉強不足のあほな建築士がきちんと検討されている合理的な設計の結果を真似しただけです。何故そうなるのかの技術的な裏付けをせずに形だけ真似をした(所謂偽造ですが)だけのことです。・・・。構造的なセンスが悪すぎます。・・・鉄筋が多ければいいという訳ではないのです」(p.80)。「ヒューザーと木村建設のマンションづくりが回を重ねるにつれ「経済設計のできる有能な構造設計者」として姉歯の評価を高めていった。実際には彼は荷重や地震力の入力値を減らして「熟練」を装ったにすぎなかったのだが、誰もそのからくりに気付かなかったらしい。ブラックボックス化した計算プログラムと、形骸化した建築確認システムが偽装を覆い隠してしまったからである」(pp.83-84)。
 「構造の専門家たちからの不信の声が上がった。・・・国交省に対する厳しい批判が相次いだ。・・・「国交省が『震度五で倒壊のおそれ』と発表したが、なぜそんなことが言えるのか? もし間違っていたら、国交省がやったことは計算書偽造よりもはるかに大きな犯罪になる」/「・・・まったく根拠がない。・・・耐震補強で対応できるものがたくさんあるはずだ」」(p.87)。オーバー、センセーショナルに走り過ぎ。マスコミバカ騒ぎ思考停止。「・・・自ら煽った偽装パニックの沈静化を図ろうということだろう。これではまるでマッチポンプである」(p.94)。
 「国策捜査」。「・・・なぜ、姉歯だけでなく、小嶋や木村建設の幹部たち、それにイーホームズ社長の藤田らが逮捕されなければならなかったのか・・・。/そう、彼らは事件の被害者であって、姉歯の犯行にはまったく荷担していない。あれほど大胆な耐震データ偽装が行われているとは夢にも知らなかったのである。もちろん・・・社会的あるいは道義的責任がある。だが、それは刑事責任とは別の位相のものだ。/・・・当初の見込みが大幅に外れ、大上段に振りかぶった太刀の降ろしどころが分からなくなった捜査員達・・・。ある意味では彼らもマスコミ報道の被害者だったのである。・・・/つまり事件関係者の身柄を拘束して、見せしめにするためのあからさまな別件逮捕である。言い方を換えれば、彼らが事件に関係して世間を騒がせたこと、あるいはマスコミ世論の指弾を受けたこと自体をけしからんとする「ケシカラン罪逮捕」である」(pp.97-100、101)。
 誤り、ウソ、ヌレギヌ、イメージによる当局の罪人作り(p.106)。「生贄として差し出されたのが小嶋であり、木村、篠塚であり、藤田たちだったというわけだ」(p.107)が、では「誰がトクをしたのか」。国交省の官僚たちの情報操作。「・・・流された情報の大半は国交省を発信源としている。国交省の担当記者たちはそれと気づかぬまま、(たぶんいまだにそうだろう)官僚たちの生き残り戦略に加担させられたのである」(p.108)。

 先日時効を迎えた國松孝次警察庁長官狙撃事件オウム元幹部が関与という〝特ダネ〟を放ったのは産経新聞(p.110)。警視庁公安部の捜査、東京地検の処分保留による釈放、「つまりこの事件の捜査は惨憺たる失敗に終わった・・・」(p.113)。「反省の弁はひと言もなし。過去にこれほど惨めな敗北」を「勝利」と言いくるめることができたのは戦時中の軍部だけだろう。もっとひどかったのは東京地検次席検事・・・被疑者の人権を尊重しなければならないという意識のかけらもないオウム信者は人間じゃないんだから煮て食おうが焼いて食おうが当局の勝手なんだと言わんばかりである。/警察検察にもまして惨めだったのは、公安当局のリークに踊らされた新聞テレビだった。素人でもデタラメだと分かる「・・・実行犯・・・・指揮官」説をさも真実であるかのように実名で報じてしまったのだから」(p.113)。大谷昭宏さんは「・・・なんて珍妙な捜査があるか」(p.114)。
 「客観報道主義は無責任主義の別名・・・。・・・河野義行さんのケース・・・」(p.118)。「地下鉄サリン事件和歌山カレー事件など重大事件が起きるたびにメディア・スクラム集団過熱取材)が繰り返される・・・」(p.119)。「・・・記者クラブ制度・・・。/・・・記者たちはいつのまにか権力との距離感を見失い、最も大事な批判精神をなくしてしまう」(p.120)。
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