Activated Sludge ブログ ~日々読学~

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●『官僚とメディア』読了(1/3)

2010年04月04日 07時09分00秒 | Weblog

官僚とメディア』、3月に読了。魚住昭著。角川oneテーマ21新書。2007年4月刊(2007年6月、四版)。

 
「第一章 もみ消されたスキャンダル」、「第二章 組織メディアの内実」、「第三章 悪のトライアングル」、「第四章 官僚たちの思惑」、「第五章 情報幕僚」、「第六章 検察の暴走」、「第七章 NHK朝日新聞」、「第八章 最高裁が手を染めた「二十七億円の癒着」」。

 共同通信で、「・・・安倍晋三にからむ記事の出稿を当面見送るとの通告・・・。・・・上から突然ストップ・・・。/・・・「美しい国」を掲げて安倍政権が華々しく登場した直後、・・・差し止められた・・・」(pp.9-10)。「ドロドロした実態」とへそ茶。「安倍事務所の体質からいって・・・、安倍直系の江島市政では談合とか選挙違反とかいろんな不正が無法地帯のように横行している。『美しい国』とか『再チャレンジ』とか、・・・へそで茶がわくっていう話だよ」(p.16)。
 共同通信の「支局開発を非難するのは増元だけではない。・・・、特に安倍首相や麻生外相ら政権中枢にそれが強い・・・。/・・・官邸から嫌がらせをされることを恐れた共同の上層部が自主規制した結果でしょう。記事を差し止めたのは編集局長の後藤(謙次)さんの判断だったと聞いています。・・・/・・・報道機関が権力批判の刃を鈍らせてしまうなら、・・・。まして、首相にまつわる記事を自主規制で握りつぶしたのなら、メディアとしてはこれ以上ない、絶望的な愚行だろう。たとえどんな大義名分があろうと、権力批判の刃を捨てた報道機関報道機関の名に値しない」(pp.27-29)。
 斎藤茂男さんの『事実が「私」を鍛える』(p.32)。
 「我々記者は人の不幸をネタに飯を食っている。それはそれで仕方のないことだが、最低限の倫理だけは守りたい。それは相手がどんなにエラい政治家だろうと、自社に関係の深い大物だろうと、特別扱いせず、公平に記事を書くことだ。それができないとしたら報道機関の看板を降ろした方がいい」(p.39)。
 渡辺恒雄氏の下品さに通じる愚劣な行為。「・・・ナベツネ氏の頭の中には、自分の会社の利益のために政府に圧力をかけるのは、報道機関の禁じ手なのだ、という意識が全くない。国有地の払い下げを受けることや公取委を抑えるために政界工作をすることを少しも後ろめたく思っていない。・・・いったい彼の精神構造はどうなっているのだろうか。/・・・ジャーナリストとして恥ずべきことをしているという後ろめたさのかけらもないことだ。共同通信の当該幹部たちだって「報道にあたっては自社の利益に拘泥してはならない」というジャーナリストの理念を知らなかったわけではないだろう」(p.51)。
 ナベツネ渡辺渡邉)についての横やり。「・・・「元大本営参謀・瀬島龍三」・・・一冊の本(『沈黙のファイル』・・・)・・・。/・・・ゲラ刷りを見た編集局幹部から横やりが入った。・・・元KCIA幹部の証言記録から読売新聞社長(当時)の渡邉恒雄に関する部分を削れと言ってきたのである。渡邉には「右翼の黒幕」児玉誉士夫とともに日韓条約の裏舞台でずいぶん手助けしてもらったという証言をそのまま出すと具合が悪いことになるのだという。要するに業界の超大物の神経に障るようなことをしたくないという編集局幹部たちの自主規制である」(p.46、49、126)。
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●『官僚とメディア』読了(2/3)

2010年04月04日 07時07分14秒 | Weblog

魚住昭著、官僚とメディア

 耐震強度偽装事件(p.56)。小嶋進や篠塚明らに「ぬれぎぬを着せていることになる」(p.58)。姉歯氏の設計について、「今回の事件は、勉強不足のあほな建築士がきちんと検討されている合理的な設計の結果を真似しただけです。何故そうなるのかの技術的な裏付けをせずに形だけ真似をした(所謂偽造ですが)だけのことです。・・・。構造的なセンスが悪すぎます。・・・鉄筋が多ければいいという訳ではないのです」(p.80)。「ヒューザーと木村建設のマンションづくりが回を重ねるにつれ「経済設計のできる有能な構造設計者」として姉歯の評価を高めていった。実際には彼は荷重や地震力の入力値を減らして「熟練」を装ったにすぎなかったのだが、誰もそのからくりに気付かなかったらしい。ブラックボックス化した計算プログラムと、形骸化した建築確認システムが偽装を覆い隠してしまったからである」(pp.83-84)。
 「構造の専門家たちからの不信の声が上がった。・・・国交省に対する厳しい批判が相次いだ。・・・「国交省が『震度五で倒壊のおそれ』と発表したが、なぜそんなことが言えるのか? もし間違っていたら、国交省がやったことは計算書偽造よりもはるかに大きな犯罪になる」/「・・・まったく根拠がない。・・・耐震補強で対応できるものがたくさんあるはずだ」」(p.87)。オーバー、センセーショナルに走り過ぎ。マスコミバカ騒ぎ思考停止。「・・・自ら煽った偽装パニックの沈静化を図ろうということだろう。これではまるでマッチポンプである」(p.94)。
 「国策捜査」。「・・・なぜ、姉歯だけでなく、小嶋や木村建設の幹部たち、それにイーホームズ社長の藤田らが逮捕されなければならなかったのか・・・。/そう、彼らは事件の被害者であって、姉歯の犯行にはまったく荷担していない。あれほど大胆な耐震データ偽装が行われているとは夢にも知らなかったのである。もちろん・・・社会的あるいは道義的責任がある。だが、それは刑事責任とは別の位相のものだ。/・・・当初の見込みが大幅に外れ、大上段に振りかぶった太刀の降ろしどころが分からなくなった捜査員達・・・。ある意味では彼らもマスコミ報道の被害者だったのである。・・・/つまり事件関係者の身柄を拘束して、見せしめにするためのあからさまな別件逮捕である。言い方を換えれば、彼らが事件に関係して世間を騒がせたこと、あるいはマスコミ世論の指弾を受けたこと自体をけしからんとする「ケシカラン罪逮捕」である」(pp.97-100、101)。
 誤り、ウソ、ヌレギヌ、イメージによる当局の罪人作り(p.106)。「生贄として差し出されたのが小嶋であり、木村、篠塚であり、藤田たちだったというわけだ」(p.107)が、では「誰がトクをしたのか」。国交省の官僚たちの情報操作。「・・・流された情報の大半は国交省を発信源としている。国交省の担当記者たちはそれと気づかぬまま、(たぶんいまだにそうだろう)官僚たちの生き残り戦略に加担させられたのである」(p.108)。

 先日時効を迎えた國松孝次警察庁長官狙撃事件オウム元幹部が関与という〝特ダネ〟を放ったのは産経新聞(p.110)。警視庁公安部の捜査、東京地検の処分保留による釈放、「つまりこの事件の捜査は惨憺たる失敗に終わった・・・」(p.113)。「反省の弁はひと言もなし。過去にこれほど惨めな敗北」を「勝利」と言いくるめることができたのは戦時中の軍部だけだろう。もっとひどかったのは東京地検次席検事・・・被疑者の人権を尊重しなければならないという意識のかけらもないオウム信者は人間じゃないんだから煮て食おうが焼いて食おうが当局の勝手なんだと言わんばかりである。/警察検察にもまして惨めだったのは、公安当局のリークに踊らされた新聞テレビだった。素人でもデタラメだと分かる「・・・実行犯・・・・指揮官」説をさも真実であるかのように実名で報じてしまったのだから」(p.113)。大谷昭宏さんは「・・・なんて珍妙な捜査があるか」(p.114)。
 「客観報道主義は無責任主義の別名・・・。・・・河野義行さんのケース・・・」(p.118)。「地下鉄サリン事件和歌山カレー事件など重大事件が起きるたびにメディア・スクラム集団過熱取材)が繰り返される・・・」(p.119)。「・・・記者クラブ制度・・・。/・・・記者たちはいつのまにか権力との距離感を見失い、最も大事な批判精神をなくしてしまう」(p.120)。
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●『官僚とメディア』読了(3/3)

2010年04月04日 07時03分58秒 | Weblog

魚住昭著、官僚とメディア

 思考停止。「特捜検察はいまブレーキの壊れた車のように暴走し始めている。誇張でも冗談でもない。ライブドア・村上ファンド事件の推移を見て、私は本気でそう思うようになった。/一見華やかでも、捜査の中身は疑問だらけ。これほど無理筋の経済事件は戦後検察史にもほとんど例がない。・・・検察の公正さに対する信頼は音を立てて崩れつつある・・・」(p.130)。郷原信郎さん(p.138)。
 ムネオ疑獄の鈴木宗男氏佐藤優氏(p.140)。「要は学会参加費のひねり出し方が悪かったというのだが、・・・。こんな犯罪のかけらもない容疑事実で逮捕されるのなら、公務員はみな逮捕の恐怖に脅えなくてはならなくなる」。「司法官僚のおごり」(p.141)と『特捜検察の闇』(p.143)。最高検の命令による大阪地検特捜部による三井環大阪高検公安部長の口封じ逮捕(p.146)。

 朝日新聞の誤報などでは決してない「番組改変が政治的圧力によって行われた」間違いのない事実(p.150、『国家とメディア』)。「NHK・・・らが中川昭一・経産相(当時)、安倍晋三自民党幹事長代理(当時)内閣総理大臣に呼ばれ、・・・などと放送中止を求める発言もした」。「中川NHKに事前に圧力をかけたことをはっきり認めている。これだけはっきりしゃべったことを後でひっくり返すのは、無責任極まりない態度だと言うほかない」(p.167)。辰濃哲郎記者の〝無断〟録音〝事件〟。「・・・辰濃の名誉はどうなるのだろう。ことの真相を伏せられ、必要以上の汚名を着せられたまま退社処分になった彼の人権はどうなるのか」(p.170)。

 「・・・産経新聞・・・が最高裁と共催した裁判員制度タウンミーティングでサクラを動員・・・」(p.180)。保坂展人元議員(p.182、203)。「次々と明らかになる最高裁のデタラメな契約実態に、委員席からは驚きと失望のため息が漏れた。国民が「法の番人」として信頼を寄せてきた最高裁のエリート裁判官たちの正体は、こんなにもお粗末なものだったのか」(p.203)。政治評論家の森田実さん(p.186)。パックニュース方式。「・・・産経大阪本社には五段広告三回分の料金として、八百万円近いカネが入る。サクラに日当を払っても十分儲かる仕組みなのである」(p.194)。
 「刑事裁判の迅速化と効率化だけが強調され、企業法務に携わる弁護士を大量に増やすという意図が明確だった。早い話が小泉政権時代に進められた規制緩和構造改革路線の司法である。そのためか、被告が無罪を主張すると一年でも二年でも身柄を拘束され続ける「人質司法」や、冤罪の温床とされる代用監獄をなくそうとする姿勢はまったく見られなかった」(p.204)。
 司法とメディアの深い闇。森喜朗元首相(p.207)。

 あとがき(p.209)、「メディアはだれのものか」。名作『不当逮捕』を著した、尊敬してやまない先輩記者である本田靖春さんから、「魚住君。いい仕事をするんだよ。そうしたら君のようになりたいと言う記者が陸続として出てくるから」。青木理さん。
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