Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

黒牢城

2024-06-21 15:36:18 | 読書
米澤穂信「黒牢城」KADOKAWA (角川文庫 2024/6).

著者の初体験は 2007 年の「夏季限定トロピカルパフェ事件」であった.時代小説で直木賞とは !  と思ったのを思い出し,文庫化したので購読.ちなみに単行本は 2021/6.

*****本能寺の変より4年前。織田信長に叛旗を翻し有岡城に立て籠った荒木村重は、城内で起こる難事件に翻弄されていた。このままでは城が落ちる。兵や民草の心に巣食う疑念を晴らすため、村重は土牢に捕らえた知将・黒田官兵衛に謎を解くよう求めるが――。
事件の裏には何が潜むのか。乱世を生きる果てに救いはあるか。城という巨大な密室で起きた四つの事件に対峙する、村重と官兵衛、二人の探偵の壮絶な推理戦が歴史を動かす。*****

4つの章を序章と終章が挟む構成.帯にあるように,直木賞を別にすれば,ミステリ界からの評価が高い.黒田官兵衛が安楽椅子探偵役で4つの事件を解決するのだが,4つの短編ミステリとしてはそこそこ.荒木村重を中心に据えた底流が味噌.
とにかく一気読みしてしまったし,確かにおもしろかった.

初期 ? の高校生ミステリはオタクっぽかったが,その部分が成長して「ジャンルを超える知的浸透圧,その底力」に成長したのだろう.この文言はマライ・メイトライン (ドイツ公共放送プロデューサー) による解説のタイトルより.内容は「日本の戦国末期という舞台設定でありながら,その擬似宗教性と擬似哲学性から発する強大な倫理の倒錯は...」という調子.

くりかえし現れる軍議場面は,倒産必至の会社の経営会議を思わせた.16 トンが感じたのは宗教でも哲学でもなく,追い詰められたワンマン社長の心理だった.
終章には Wikipedia と同じだが,この小説を読んでから史実を知って「ふ~ん」と思ってしまった.
コメント
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