アンジョルラスが好き

おもにAaron Tveitについて
彼に興味が無ければつまらないです。
コメント欄が面白いので読んで下さいね。

リラの恋・あなたはどこに・・・ 2

2015-03-17 | 妄想のアーロン

これ、なんと、俳優のアンソニー・ホプキンスの作曲です。若い頃、音楽家を目指していたとか。
素人の作曲じゃないですよね。現代のワルツ王アンドレ・リュウが50年間陽の目を見なかったこの曲を演奏したんだとか。


アンジョルラスを探し始めてから、もう20日以上経ちました。

リラは故郷の人々に、ひと月で帰る約束をしてきました。
帰る日が刻々と近づいています。

彼の消息は、未だに、まったくわかりません。
前の下宿も度々訪ねましたが、あれから1度も来ていないようです。
リラは毎日、あてもなく探し続けました。

まさか彼が住まいを変えているとは思っていないアンジョルラスの母は、
リラがパリに立つ前に、固い約束をさせました。

パリを見て歩くときは、必ず明るい大通りを歩くこと
一歩たりとも、裏道に入ってはいけない。
歩きまわるのは昼間だけ。夕方にはお屋敷に帰ること。

マルセイユも大きな港町で、それなりに危険はありますが、
リラをひとりで歩かせることはありません。


これ、マルセイユじゃなくて、多分リヴァプールだけど、マルセイユのつもりで。

リラはお屋敷のまわりのほんの狭い世界しか知りません。
小さいころは冒険好きでしたが、今は考え深い娘に成長していました。


表通りこそ街灯が輝いていますが、一歩入った裏通りは暗い闇に包まれています。
そして、少し郊外の城塞の近くは貧民外で、深い闇に包まれた何が起こるか
わからない世界です。実際、毎日のように夜警は十数体もの遺体を
回収していると聞きます。

今日も大学、パンテオン、リュクサンブール公園など、考えうる限り回りました。
そして、やや怪しげな路地にも足を踏み入れました。しかし、道は思ったより複雑です。
ぐるぐると路地を迷ったリラは、ひたすら来た道を戻ろうとしました。
早く大きな通りに出なければ帰りの道がわかりません。
実はここはカルチェラタンの学生街で、非常に危険な貧民街ではなかったのですが、
リラにはそんなことはわかりませんでした。



アンジョルラスが住まいを密かに変えていると知っていたら、アンジョルラスの母は、決してリラを
パリにやることは無かったでしょう。

医者に見せて、何か気が紛れるようなことをさせてやったでしょう。
けれど、彼女は、リラがすぐにアンジョルラスに会えたと思っていました。


「喉が渇いたなぁ」
ふと見ると『カフェミュザン』という看板が見えました。


カフェがどういうものかは、リラも知っていました。が・・・
もちろん、入ったことはありません。
若い娘、ひとりで入れるような場所ではなさそうです。とにかく帰ろう。

数人の若い男たちがやって来て、カフェに入ろうとしています。
ふと風に乗って「・・・ァンジョルラス」と聞こえたような気がしました。

思わず男たちを見つめたリラに、数人が優しげな笑みを浮かべて
中に入っていきました。

リラはいつも耳をそばだてていました。どこかでアンジョルラスの消息が掴めないかと。

サン=ジョルジュがそう聞こえたり、アンジェだったり、 アンリ・ジョルラスだったり・・・

恥ずかしさをこらえて、リラは見知らぬ人に問いかけます。

何度も何度も、たくさんの人に尋ねても、いつも聞き間違いでした。
けれど、今、確かに・・・アンジョルラスって聞こえた・・・
追いかけて聞きたい。

どうしよう、もう直に日が暮れる・・・
明日、出直してこようか。間違えずに、またこの場所に来れるでしょうか?
それに、彼らが明日いる保証はありません。
今すぐ入っていって、彼らに聞きたい。でも、すぐに帰らないともう時間がない。
そして、なにより、居酒屋などに一人で入るのはリラにとって大変な恐怖でした。
知らない男に何をされるかわからない、そう思い込んでいました。

日が暮れて知らない街に取り残されるのも、とんでもなく怖ろしいことです。
この路地から表通りに出るのはどうしたらいいのか、一抹の不安がよぎります。

鹿島茂の『パリ時間旅行』に、鹿島先生が体験した暗闇の恐怖が書かれてました。
新月の夜に、ボヘミアの森で、車のヘッドライド以外は何も光源がない状態になって、
ただひたすら続く際限のない漆黒の闇、それは背筋が凍るほど怖ろしいものだったそうです。
私たち現代の日本人は、暗いといっても、街灯や家からの明かりや、コンビニ、車のライト
自販機・・・普通に人が暮らしているところでは、漆黒の闇はありませんよね。
パリには街灯がすでにあって、大通りを照らしていたそうですが、路地の隅々までは
明るくなかったんじゃないかと思います。
家の中の灯りも、外にもれるほどは明るくなかっただろうし。
1830年くらいのパリって、女性ひとりで夜歩いたりできたのかな?
エポニーヌは別として。


今日は道を覚えながら帰ろう、暗くならないうちに。
けれど、土地勘の無いリラにとって、それはなかなか難しいです。

無計画に建てられた高い建物と入り組んだ狭い路地。
さらに無数の袋小路があり、まるで巨大な迷路のような有様です。
大通りに出るはずが、なんと元の場所に戻ってしまいました。
日は傾き、徐々に闇がせまってきます。

さきほどの数人の若者が思い出されます。
優しそうな顔をした育ちの良さそうな若者たちでした。

勇気を出して、あの店に入ってみよう。
優しそうな人たちだったし、そんなひどい事にはならないだろう。
彼らに道を聞こう。

それに、あの人たち、確かにアンジョルラスって言ってた。

しかし、すでに彼らは帰ったあとでした。

(実はミュザンにはABCの友の部室が奥にあって、普通の客は入れなかった。
 多分、リラが会った青年たちは、奥の部屋にいたんだよ。)
 はーい、壁に並んで、出席番号!
リラは思い切って、店の女将さんにアンジョルラスの事を聞きました。
けれど、女将さんは、そんな名前は知らないようでした。

(ファンの女の子は追い返すように言われてたので)
 ごめんね

外に出たリラは恐怖に包まれます。
完全に日が沈んでいたからです。

あたりは、カフェから漏れるわずかな灯り以外、真っ暗でした。
わずかな月明かりも、雲間に隠れてしまいました。

このまま居ても仕方がない、リラは勇気を振り絞って歩きだしました。

少し行った時です。いきなり誰かに腕をつかまれました。

「きれいなお嬢さん、さっきから酒場の前でうろうろしてたけど、酒でも飲みたいの?」

「俺たちといっしょに行こう。」

とても優雅に着飾った伊達男のふたり組でした。

男たちに囲まれて、リラは動けなくなりました。どうしよう、大声を上げなくちゃ・・・
でも、誰か出てきてくれるだろうか?
ふたりはリラを連れて行こうと、引っ張ります。
リラは声を挙げますが、細い声は、闇に吸い込まれるだけです。

「グリゼット風情がもったいぶるんじゃないよ。」
男たちが嘲笑います。

すると、そのとき、急にリラの手が自由になりました。
誰かが、リラを掴んでいた腕を、おもいっきり何かで叩いたのです。
もともとからかい半分だった相手は、面倒を避けるように去って行きました。

「大丈夫ですか?お嬢さん」

リラは、その声を聞いて驚きました。

月かりが差して、少し回りが見えてきました。

1日たりとも忘れることのなかった人が、そこに立っています。
月光に映えて金色に輝く髪、厳しいけれど、暖かな瞳。
大人っぽく逞しくなったけれど、変わらぬ彼の姿があったのです。

「アンジョルラス!」リラは我を忘れて叫びました。

「・・・まさか、リラ? どうしてこんなところに?」

答えようとした次の瞬間、リラは彼に抱きとめられました。
1日、飲まず食わずで歩き続けて、今、緊張が解けて倒れそうになったからです。

いつもなら、あわてて離れたでしょう。でも今のリラは・・・
やっと会えたアンジョルラスに夢中でしがみついて、決して離れようとはしませんでした。

そして、このとき、リラは決心したのです。
もう二度と、アンジョルラスとは離れないと。




もしもある日、運命が私からあなたを奪い取っても、
もしもあなたが死んでしまい、私から遠く離れ去っても、
そんなことはかまわない
あなたが私を愛していたのならば、私も一緒に死ぬのだから
そして永遠の愛を得るのだから



有名な『愛の讃歌』です。これも、怖ろしいほどリラの歌詞ですね。
訳はこちらにありました。お世話になります。
それにしても、すごい巻き舌。機械音みたいw


リラは、自分を抱いているアンジョルラスの手が、いつまでも緩まないのに気付いてはいませんでした。
いや、むしろ二度と離さないように固く抱きしめていたのは、アンジョルラスの方かもしれません。
故郷を離れていても、リラを忘れた日はありません。
アンジョルラスは、それを単なる郷愁だと思っていました。
けれど、今、リラの黒い目にみつめられて、言葉ではいえない気持ちが湧き上がるのを抑えることができません。
彼はリラを離したくないと思うと同時に、近づいてはいけないという思いにかられました。
今の自分には、何をおいてもやらねばならない事がある・・・・・・




もう、遅いよ、アンジョルラス。お前はすでに敵(リラ)の手に落ちた・・・



むかし、ヴィリアという森の妖精がいました
ある狩人が岩山でヴィリアを見つけ
一目で恋に落ち、じっと見つめていました

それまでに覚えのない震えが若者をおそい
彼はせつないため息をつき始めたのです

ヴィリア おおヴィリア 森の妖精よ
私をつかまえ お前の恋人にしておくれ
ヴィリア おおヴィリア
どんな魔法をかけたのだ?
恋に悩む男は訴えたのです

森の妖精は男を捕らえ
岩屋の中に引きずり込み
気も遠くなるほどキスをした
普通の娘はこんな風にキスはしない

キスに満足した彼女はやがて消え去った
もう1度あえた時、彼女にむかって若者は言った

ヴィリア おおヴィリア 森の妖精よ
私をつかまえ お前の恋人にしておくれ
ヴィリア おおヴィリア
どんな魔法をかけたのだ?
恋に悩む男は訴えたのです




 1801年のパリは市街地が城壁の中に縛られており、人口は54万6856人(←何月何日の何時何分のデータでしょうか)
広さは意外と狭くて34.5平方キロメートルでした。

 ということは、人口密度は15,851人/km2

 仮に正方形だとすると、√34.5=5.87キロ四方 いくらなんでも20日では・・・・・・

 日本でいうと、杉並区 面積・34.02平方キロ 人口・543,190人(H26.7.1)
そう考えると、コゼットをすぐにみつけたエポニーヌは神だな。

ご都合主義すぎてごめんなさい。
デパートではぐれても、携帯も館内放送も無ければ、めぐり合うことできないよね。
愛しあう二人の力ってすごいね(棒)