ルイの家のサロンには、時々新聞社の人間や、著名な作家などが招かれていました。
アンジョルラスは、ルイに頼んでサロンで彼らと接触を計りましたが、思うような賛同は得られずにいました。
彼はサロンをあきらめ、労働者や、学生などに、声をかける仕事に戻りました。
これ、ロンドンかも・・・
ルイは以前から、裏通りを散歩するのが好きでしたが、あれを見て感じた衝撃は
序の口だったことに気付きます。
アンジョルラスは時々ルイを連れて最貧民窟をまわります。
ひとりの娘がルイの袖に手をかけました。こわごわと、しかし媚びるように笑っています。
小さな肩から服がずれ落ちています。いくつなのでしょう?
幼く汚れた、膨らみのない体でも、彼女には、これしか売るものが無いのです。
彼女は通りで男に声をかけます。
「どうぞ助けて下さい。寒くて、眠る所がないんです。
どこか休める場所を、教えてくれませんか?」
けれど男は、通りすぎて行き、振り向きもしません。
彼女の声が聞こえない振りをします。
口笛を吹きながら、通りを渡っていきます。
そこにいるのが、気まずい様子です。
でも、今、いちど考えてみて
あなたと私の楽園だって、こうなる日が来るかもしれないと
彼女は通りで男に声をかけています。
男は、彼女がずっと泣いているのを知っています。。
彼女の足の裏にはマメができていて、
歩けないのに、歩こうとしています。
でも、今、いちど考えてみて
あなたと私の楽園だって、こうなる日が来るかもしれないと
神よ、ここでは誰も何もできないのでしょうか?
おお、神よ、何かおっしゃりたいことが、あられるのではないですか?
彼女の涙の跡からわかるでしょう
ずっとそこに立っていたことが
たぶん、色々な場所を移り住んできたのでしょう
何故なら、どの場所でも、うまくいかなかったのだから
ルイは我慢できなくなって、娘に銀貨を渡しました。
「ルイ、やめろ!」
それを見たアンジョルラスが大声で止めます。
友情出演:トリップ アンジョルラスの画像を使い果たしたのでw しかし彼は見殺しにしそう。
銀貨をつかんだ娘は一目散に駆け出し、それを数人の男たちが追います。
アンジョルラスも身をひるがえして、娘の後を追っています。
しばらくして、娘を腕に抱えたアンジョルラスが帰ってきました。
「見ろ、ルイ」
「し・・・死んだんですか?」
「いや、銃を見せたらすぐ立ち去ったから、おそらく大した怪我もないだろう。」
「金は取られて、少し殴られていたかもしれないが」
結局、ルイは娘を危険にさらしただけだったのです。
アンジョルラスは、それ以上は言いませんでしたが、ルイには痛いほど彼の気持ちが
わかりました。たとえどんなに哀れでも、ひとりに施しをしても何もならない。
その金で銃を買い、火薬を揃え、戦って自由と平等を勝ち取るしかないのだと。
意識を取り戻した娘をそのまま置いて去るのをためらうルイに、アンジョルラスは
「全員助けるつもりか」というと、立ち去ってしまいました。
いつだったか、グランテールが言いました。
「あの男は、なんであんなに疑いもなく革命に突っ走れるんだろうな。」
「民衆のためを思ってるんではないんですか?」
「コンブフェールやプルーヴェールを見ていると、世の中には他人のために生きられる人間がいるんだと思えてくるんだが。」
「彼らはこの上なく暖かい。いつも貧民のことを思っている。」
だが、アンジョルラスは・・・とグランテールは続けました。「彼は貧民を思っているのか?」
ABCの友たちを見ていると、確かに、こんなに心優しい人間がいるのかと驚くことがあります。
革命で世の中を覆す(くつがえす)のがアンジョルラスだとしたら、覆され壊れた世の中を少しづつ再建するのが
コンブフェールやプルーヴェールなのかもしれません。
穏やかで粘り強い性格は、アンジョルラスとは別の意味での指導者にふさわしい男たちです。
明るく楽しいクールフェラック、繊細な医学生ジョリ、苦労して学問を身に付けた努力家のフィイ、物静かで賢いマリウス
不運続きを笑い飛ばすレーグル、暴れ者に見えて本質は賢いバオレル。
気のいい、暖かい仲間たちです。
確かに、アンジョルラスは、彼らのように、貧しい者を思って嘆いたりはしません。
飢える者、病気の者、身寄りのない者、体を売る娘、路上に寝る子供、乞食をする老人、悪に手を染める若者
ひとりを助けたとしても、それはザルで水を汲むようなものだと言います。
けれど、アンジョルラスはどんな辛い厳しい現実からも逃げません。
ひとりを見殺しにすれば他が助けられるとしたら、彼は顔色も変えずに見殺しにするでしょう。
でも、それは彼が冷酷だからではない。
一番つらいことは、歯を食いしばってでも自分がやる、そんな男です。
責任者という立場から、決して逃げないのです。
彼はいつも矢表に立ってくれているではないか。
辛い決断を下すのは、必ず彼です。心に重荷を背負うのは、必ず彼なのです。
少しむきになって話すルイを、グランテールはこの上なく優しい目でみつめていました。
けれど、ふたりは思っていました。アンジョルラスには、なぜ革命以外入り込む余地が無いのだろうと。
取り付かれたように革命の話をするアンジョルラス。
コンブフェールは本当は戦いなど嫌いでしょう。平和裏に解決できるなら、それに越したことがないと思う人間です。
けれど、アンジョルラスはどうでしょうか。
彼は聖なる天使です、いつでも彼はダビデであり、敵はゴリアテに見えます。
彼は、堕天使サマエルを剣で貫く大天使ミカエル、彼は正義であり絶対です。
ABCの友は、互いに信頼しあって、心を許しています。
けれど、アンジョルラスには、畏敬を感じてるからか少し壁がありました。
アンジョルラスの方でも、誰にでも平等でしたが、感情を見せることはありませんでした。
そんな冷静な彼が唯一、理不尽な反応を示すのが、グランテールと対峙するときでした。
彼は、グランテールだけは、たまに無視しました。
女に対するときの、木でも眺めるような無関心さではありません。
変に避けるのです。不自然なほどに。
そして、時には、激しく激昂しました。グランテールの軽いからかいに。
みなは、アンジョルラスがグランテールを嫌っているのだと思っていました。
気のいい男だが、だらしない酒飲みであるグランテールを、潔癖な彼は許せないのだろうと。
ルイだけは、そんなふたりに妙な胸騒ぎを感じていました。
アンジョルラスは、ルイに頼んでサロンで彼らと接触を計りましたが、思うような賛同は得られずにいました。
彼はサロンをあきらめ、労働者や、学生などに、声をかける仕事に戻りました。
これ、ロンドンかも・・・
ルイは以前から、裏通りを散歩するのが好きでしたが、あれを見て感じた衝撃は
序の口だったことに気付きます。
アンジョルラスは時々ルイを連れて最貧民窟をまわります。
ひとりの娘がルイの袖に手をかけました。こわごわと、しかし媚びるように笑っています。
小さな肩から服がずれ落ちています。いくつなのでしょう?
幼く汚れた、膨らみのない体でも、彼女には、これしか売るものが無いのです。
彼女は通りで男に声をかけます。
「どうぞ助けて下さい。寒くて、眠る所がないんです。
どこか休める場所を、教えてくれませんか?」
けれど男は、通りすぎて行き、振り向きもしません。
彼女の声が聞こえない振りをします。
口笛を吹きながら、通りを渡っていきます。
そこにいるのが、気まずい様子です。
でも、今、いちど考えてみて
あなたと私の楽園だって、こうなる日が来るかもしれないと
彼女は通りで男に声をかけています。
男は、彼女がずっと泣いているのを知っています。。
彼女の足の裏にはマメができていて、
歩けないのに、歩こうとしています。
でも、今、いちど考えてみて
あなたと私の楽園だって、こうなる日が来るかもしれないと
神よ、ここでは誰も何もできないのでしょうか?
おお、神よ、何かおっしゃりたいことが、あられるのではないですか?
彼女の涙の跡からわかるでしょう
ずっとそこに立っていたことが
たぶん、色々な場所を移り住んできたのでしょう
何故なら、どの場所でも、うまくいかなかったのだから
ルイは我慢できなくなって、娘に銀貨を渡しました。
「ルイ、やめろ!」
それを見たアンジョルラスが大声で止めます。
友情出演:トリップ アンジョルラスの画像を使い果たしたのでw しかし彼は見殺しにしそう。
銀貨をつかんだ娘は一目散に駆け出し、それを数人の男たちが追います。
アンジョルラスも身をひるがえして、娘の後を追っています。
しばらくして、娘を腕に抱えたアンジョルラスが帰ってきました。
「見ろ、ルイ」
「し・・・死んだんですか?」
「いや、銃を見せたらすぐ立ち去ったから、おそらく大した怪我もないだろう。」
「金は取られて、少し殴られていたかもしれないが」
結局、ルイは娘を危険にさらしただけだったのです。
アンジョルラスは、それ以上は言いませんでしたが、ルイには痛いほど彼の気持ちが
わかりました。たとえどんなに哀れでも、ひとりに施しをしても何もならない。
その金で銃を買い、火薬を揃え、戦って自由と平等を勝ち取るしかないのだと。
意識を取り戻した娘をそのまま置いて去るのをためらうルイに、アンジョルラスは
「全員助けるつもりか」というと、立ち去ってしまいました。
いつだったか、グランテールが言いました。
「あの男は、なんであんなに疑いもなく革命に突っ走れるんだろうな。」
「民衆のためを思ってるんではないんですか?」
「コンブフェールやプルーヴェールを見ていると、世の中には他人のために生きられる人間がいるんだと思えてくるんだが。」
「彼らはこの上なく暖かい。いつも貧民のことを思っている。」
だが、アンジョルラスは・・・とグランテールは続けました。「彼は貧民を思っているのか?」
ABCの友たちを見ていると、確かに、こんなに心優しい人間がいるのかと驚くことがあります。
革命で世の中を覆す(くつがえす)のがアンジョルラスだとしたら、覆され壊れた世の中を少しづつ再建するのが
コンブフェールやプルーヴェールなのかもしれません。
穏やかで粘り強い性格は、アンジョルラスとは別の意味での指導者にふさわしい男たちです。
明るく楽しいクールフェラック、繊細な医学生ジョリ、苦労して学問を身に付けた努力家のフィイ、物静かで賢いマリウス
不運続きを笑い飛ばすレーグル、暴れ者に見えて本質は賢いバオレル。
気のいい、暖かい仲間たちです。
確かに、アンジョルラスは、彼らのように、貧しい者を思って嘆いたりはしません。
飢える者、病気の者、身寄りのない者、体を売る娘、路上に寝る子供、乞食をする老人、悪に手を染める若者
ひとりを助けたとしても、それはザルで水を汲むようなものだと言います。
けれど、アンジョルラスはどんな辛い厳しい現実からも逃げません。
ひとりを見殺しにすれば他が助けられるとしたら、彼は顔色も変えずに見殺しにするでしょう。
でも、それは彼が冷酷だからではない。
一番つらいことは、歯を食いしばってでも自分がやる、そんな男です。
責任者という立場から、決して逃げないのです。
彼はいつも矢表に立ってくれているではないか。
辛い決断を下すのは、必ず彼です。心に重荷を背負うのは、必ず彼なのです。
少しむきになって話すルイを、グランテールはこの上なく優しい目でみつめていました。
けれど、ふたりは思っていました。アンジョルラスには、なぜ革命以外入り込む余地が無いのだろうと。
取り付かれたように革命の話をするアンジョルラス。
コンブフェールは本当は戦いなど嫌いでしょう。平和裏に解決できるなら、それに越したことがないと思う人間です。
けれど、アンジョルラスはどうでしょうか。
彼は聖なる天使です、いつでも彼はダビデであり、敵はゴリアテに見えます。
彼は、堕天使サマエルを剣で貫く大天使ミカエル、彼は正義であり絶対です。
ABCの友は、互いに信頼しあって、心を許しています。
けれど、アンジョルラスには、畏敬を感じてるからか少し壁がありました。
アンジョルラスの方でも、誰にでも平等でしたが、感情を見せることはありませんでした。
そんな冷静な彼が唯一、理不尽な反応を示すのが、グランテールと対峙するときでした。
彼は、グランテールだけは、たまに無視しました。
女に対するときの、木でも眺めるような無関心さではありません。
変に避けるのです。不自然なほどに。
そして、時には、激しく激昂しました。グランテールの軽いからかいに。
みなは、アンジョルラスがグランテールを嫌っているのだと思っていました。
気のいい男だが、だらしない酒飲みであるグランテールを、潔癖な彼は許せないのだろうと。
ルイだけは、そんなふたりに妙な胸騒ぎを感じていました。