はさみ屋のブログ

理・美容師の使うカットシザーのメンテナンス・アドバイザー(研ぎ・調整・販売)

動刃と静刃②

2005年02月07日 | セニング

 ハサミには動刃と呼ばれる刃と、静刃と呼ばれる刃が有ります。
混乱を招かない為に、理美容のカット・シザーを例にとって説明してみましょう。
裁断バサミだと刃の形状が、目的別に変えてあるから、理解し易いんだけど・・・

まずハサミは手で持つ部分をハンドルと呼びます。 
そのハンドルの部分で、親指が入る場所の先に付いている刃を動刃と呼び
その他の指が支える方の先に付いている刃を静刃と呼びます。

さて 案外知られていない事として・・・
一見すると両方の刃が、対象物を切っていると思われているが・・・
必ずしもそうとは限らず、場合によっては違う事が有ります。

まず動刃が切る目的の刃で、静刃は髪の毛を受け止める刃と覚えましょうね。
(重要だよ)
つまり動刃が包丁だとしたら・・・ 静刃はマナ板の役割なんだよね。

確かに静刃にも切れる刃が付けて有るので、実際は両方で切っているけどね。
ハサミの物づくりの原点として、初期の目的は動刃が切れ刃で静刃が受け刃なんだよ。

これを正しく理解していない「研ぎ師」だの「ハサミ屋」が実に多いんだね。

この説明は、右利きの人の使う一般的なカット・シザーを対象にした説明で
作りが特殊な梳き鋏(セニング)などは別だよ。 動刃側に櫛刃の付いているものや
正刃と逆刃や棒刃と櫛刃が有り、混乱するからなんだけどね。

まず切れ刃(動刃)に当たった髪の毛は、受け刃(静刃)がつかまえて始めて切れる。
同じく受け刃が掴まえた髪の毛は、切れ刃が挟んで始めて切れるんだよね。
だから日本語の呼び名が「鋏」ね。(切れなくなってもピンセットとは呼ばない)

この理論を踏まえてセニングが作られているんだよね。
だって切る刃は片方でしょう・・・ 櫛刃には切れる刃なんて付いていないもの(普通の場合は)

俗にセニングの櫛刃は研ぐな・・・ と云われるのも、この理論が判らないと
受け刃の役割を壊してしまうからなんだよね。
案外多いんだね・・・ 櫛刃を正しく研げない「なんちゃって研ぎ師」が・・・ ちと怖いよね。

さて、これが理解出来てなくてもハサミは使えるから気にしないでも良いけど
「研ぎ師」だの「ハサミ屋」は、知らない訳には行かないんだよね。

知らないで商売している同業者達への参考になれば幸いだね。
目から鱗だと良いけど。(この書き込みがキッカケで正しく理解出来たらの話)

この理論は、ハサミを作る場合にはとても重要で、応用範囲が広くて奥が深いんだ。
販売専門のハサミ屋さんで無く、製造メーカーさん達・・・ ねぇそうでしょ?

興味が有るけど意味合いが理解できなくて、もっと詳しく知りたい人達や
刃物研ぎで飯を食べている、知的好奇心の多感な同業者はメールでも下さいな。
やさしく丁寧に教えてあげるからね。


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