神奈川県大磯町で小型のサバなどを使用した「漁師さんのつくった地魚の生ハム」が人気を呼んでいる。
サイズが小さいため市場で売りに出せなかったサバなどを有効活用した商品だが、魚本来のうまみを生かした商品に仕上がっている。漁獲高減少に悩む漁業関係者も「新たな名産として育てたい」と期待を寄せている。(川上朝栄)
大磯港は年間約350トンの漁獲量を誇り、その約半分をサバが占めている。ただ、サバは鮮度低下が著しい「足が早い」魚として知られ、出荷時間が過ぎた魚や市場流通が難しい小型サバは廃棄せざるを得ない。また漁獲量が多すぎると値崩れを起こすことから、これら余った魚の有効活用が課題になっていた。
そこで昨年6月、漁業関係者が中心となって水産加工会社「湘南定置水産加工」(同町、原大祐社長)を設立。昨秋、「地魚の生ハム」が完成し、11月から町内で売り出している。小型サバは脂肪分が少なく、食用に不向きとされてきたが、生ハム用に加工すると食感が良くなり、「風味が増す」(原社長)という。朝獲れたサバを、新鮮な状態で塩漬け加工して乾燥し、「添加物は一切使っていない」のも売りだ。
商品化に向けては、県水産技術センターと共同開発した。魚は季節によって脂肪分や水分量が異なるため、味付けに試行錯誤を重ねたという。出来上がった生ハムはサバの他、ブリの幼魚「ワラシ」、ボラなども活用している。今後は薫製の生産販売にも力を入れる考えだ。
同漁港でも近年、漁獲量が減り、価格低迷が続いている。生産者が加工や流通までを手がける「6次産業化」を通じて、「大磯町の漁業を活気づけたい」(原社長)という。
生ハムは630円(40グラム)。JR大磯駅前の「地場屋ほっこり」や小田原厚木道路大磯パーキングエリアなどで販売している。問い合わせは(電)0463・73・8383。