維新の党の分裂劇で、松野頼久代表ら、民主党出身者が崖っぷちに立たされている。維新を離党した橋下徹大阪市長(大阪維新の会代表)が10月にも発足させる新党が、民主党出身者の参加を原則認めない方針を打ち出した一方、民主党内にも、党を見捨てて出ていった面々が復党することへの抵抗感が根強いからだ。松野氏の思惑通りに進むかは微妙な情勢だ。
「自民党と対抗する野党勢力を結集するために、今後あらゆる分野で連携を強化していくことを確認した」
松野氏は8月31日午後、民主党の岡田克也代表との会談後、国会内で記者団にこう語った。
民主党との合流を猛烈に渇望している様子が感じられた。無理はない。維新の民主党出身議員(衆院11人、参院1人)のうち、松野氏ら衆院10人は比例復活当選であり、惜敗率(当選者の得票数に対する落選者の得票数の比率)も総じて低い=別表。まさに、「橋下・維新人気に救われ、かろうじてバッジをつけている」(橋下氏周辺)状態なのだ。
ちなみに大阪系(衆院11人)は5人が選挙区で勝利しており、比例復活の6人も惜敗率はおおむね80~90%台だ。旧結いの党系も、江田憲司前代表をはじめ多くが選挙区を制しており、民主党出身議員の「選挙の弱さ」が際立っている。
橋下氏は「比例復活の民主党出身議員は(新党に)受け入れない」「次の衆院選で落選してもらう」と周辺に語っているが、真意は何なのか。
党関係者は「発言の念頭にあるのは、代議士会で公然と大阪系を批判した初鹿明博氏、太田和美氏らだ。党の看板に救われて当選していながら、『維新スピリッツ』に唾する議員たちが許せなかったのだろう」と、橋下氏の心中を読み解く。
いずれにしても、松野氏らは古巣に逃げ込む以外に生き残る道はないが、民主党内にも「彼らは裏切り者」(ベテラン議員)という意識が強く、党を捨てて出ていった面々を、すんなり受け入れる保証はない。
そもそも、松野氏は、民主党の凋落を決定付けた、鳩山由紀夫元首相の「側近中の側近」と呼ばれた人物でもある。
政治評論家の浅川博忠氏は「民主党内には『党が苦境に立っているとき、松野氏らは後ろ足で砂をかけるように逃げていった』という見方が強い。(維新で労組を徹底批判しながら)連合の組織票をあてにして近寄っていることへの抵抗感もある。岡田氏も二つ返事で合流に同意するわけにはいかないだろう」と分析する。
合流が不調に終わった場合、組織票も「風」も期待できない松野氏らには、哀れな末路が待ち受けている。