54のパラレルワールド

Photon's parallel world~光子の世界はパラレルだ。

イルカの絵

2005年11月07日 | クリエイティブな思考への挑戦
私は高層ビルの54階にいた。壁に飾ってある1枚の絵を見ていた。太陽の光でアクアブルーに輝く海の中を3匹のイルカが気持ちよさそうに泳いでいる絵。今にも動き出しそうな生き生きとした絵だった。
窓の外を見た。3匹のイルカが泳いでいた。さっきの絵そのままに。本当に絵が動き出したのか?再び絵を見てみると、絵はなくなっていて、壁1面すべてが窓になっていた。ビルの周りをたくさんのイルカが泳いでいて、まるで海の中にいるようだった。イルカの群れは空に浮かぶ太陽に向かって泳いでいった。太陽は空にあるように見えたし、水面に映っているようにも見えた。
これは新しい水族館か?それとも日本は水没してしまったのだろうか?いや、イルカが進化して空を飛べるようになったのかもしれない。

確かなことがあった。私は外に出ることができないだろう。なぜかそんな気がした。
ビルの外が海だからかもしれないし、イルカがサメのように襲ってくるからかもしれない。空に浮かぶ太陽に吸い込まれて焼かれてしまうからかもしれない。
そんな思考の末にたどり着いたのは、イルカは私よりもはるかに自由だということだった。外に出られない私を尻目に、イルカは自由に気持ちよさそうに泳いでいる。泳ぐイルカを見て新しい水族館かと思ったのだが、これは逆に、ビルという水槽の中で私がイルカに飼われているのかもしれない。

大陸のほとんどが水没してしまった未来世界では、イルカが人間を飼って暮らしている。
アクアブルーに輝くきれいな海を優雅に泳ぐイルカの美しい絵を見ながら、私はそんな残酷なことを考えていた。
いや、それこそが美しい世界なのかもしれない。。