ケルベロスの基地

三本脚で立つ~思考の経路

BABYMETAL探究(「バトル」考2~イジメ、ダメ、ゼッタイ7)

2015-06-11 09:40:58 | babymetal
最近読んだ、河出夢ムック『メタリカ』に、伊藤政則氏への次のような興味深いインタヴューがあった。

伊藤 業界の大先輩のある方が、ブリティッシュ・ハードロックとアメリカン・ハードロックの違いを、実にわかりやすい言葉で表していた。「アメリカン・ハードロックはスポーツだ、ブリティッシュ・ハードロックは劇場だ」と。
(編集部 なるほど。スポーツ観戦と劇場鑑賞。)
伊藤 うん、ブリティッシュ・ロックというのは芝居を鑑賞しているような、舞台芸術に近いものがあるかもしれない。ステージの要のものが動いたり崩れたりする。イギリスで言えばシェイクスピアの演劇。アメリカは違う、グランド・ファンク・レイルロードとか、音もでかいし……。
(編集部 まさに「ホームラン!」って感じですね(笑)。
伊藤 そう考えれば、「スラッシュ四天王」の中でも、メタリカの意識と他3バンドの意識の違いが見えてくる。メタリカは劇場だし、他の3バンド、スレイヤー、メガデス、アンスラックスはスポーツなんだよね。


単なるステージ上の演出ではなく、楽曲の音像や構造にも関わる「なるほど」という話だが、では、BABYMETALはどうか?と問われたらどう答えるべきだろうか。

答えの一つ(そしておそらく標準的な「正解」)は、劇場でもありスポーツでもある、というものだろう。単に融合というのではなく、「止揚(しよう)」とでもいうべき、両方の性質が保たれたまま高い次元で融合し全く新たな何かになっている、という考え方だ。おそらく、BABYMETALのありようの全体像とは、このように答えるべきものなのだろう。

しかし、もう一つの答えもありうる。それは、どちらでもない、というものだ。こう答えたくなる典型例のひとつが、ここで考えている、YUI・MOAの「バトル」である。
「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の間奏で見せる、YUI・MOAの「バトル」とは、スポーツでも演劇でもなく、(以前にも書いたが)いわば武道の「演武」であり、つまり抑制されたかたちで表出されてはいるが、そこにあるのは「ほんものの闘い」であるように(僕には)思われてならないのだ。そして、その「ほんものの闘い」のオーラがライヴ全体に満ちているからこそ、少女3人が歌い踊るという異形のすがたかたちを目にして、僕(たち)は、これが本物のヘヴィ・メタルだ、と感じているのではないか。

彼女たちは(ごく一部の原案は除いて)楽曲も作らないし、楽器の演奏もしない。

しかし、曲を作って楽器を演奏する大人たちのように、傲慢だったり、ライヴでは手ぐせで適当なフレーズを弾いたり、歌をフェイクでごまかしたり、ニヤニヤ意味もなく笑ったり、酔っぱらっていたりクスリに溺れたり、楽器を叩き壊すことで観客を煽ったり、そんなことは全くしない。

ただただストイックに、自らの身体を全身全霊かけて動かしながら、ひたすら、楽曲とそして観客と、切り結んでいるのである。
(精緻な舞踊を踊り続ける、とは、ライヴ中、一瞬たりとも気を抜くことがない、ということであり、それは改めて考えて見れば、とんでもなく過酷で壮絶なことだ。)
演劇とかスポーツとかではなく、もっと切迫したそれこそ「命懸け」の「演」奏を僕たちは目にし、それに、胸を熱くし涙を滲ませている、のではないのだろうか。

そうしたBABYMETALの本質が凝縮して表現されているのが、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」での、YUI・MOAの「バトル」なのだと僕は考える。
その、YUI・MOAの「バトル」(16小節)の変遷を、
a①での、MOAの攻撃の仕方、それのYUIの受け方(尻餅をつくか?)
a②での、YUIの攻撃の仕方、それのMOAの受け方(尻餅をつくか?)
b①での、MOAの攻撃の仕方、それのYUIの受け方(尻餅をつくか?)
b②での、YUIの攻撃の仕方、それのMOAの受け方(尻餅をつくか?)
という目で古いヴァージョンから順を追って眺めてみよう。

いわば、YUI・MOAの「バトル」史、である。

ヴァージョン1 LEGEND I 版(2012・10・06)
<武器なしの素手の闘い>

a① MOAが両手を×にして突進 → YUI 尻餅(MOAもつんのめる)
a② YUIがフォース攻撃の突進 → MOA 尻餅
b① MOAがフォックスサインの両腕を交互に突き出しながら突進 → YUI 全身を撃たれながらこらえる
b② YUIがフォックスサイン両腕を交互に突き出し突進 → MOAが撃たれて尻餅


以前にも書いたが、(意外にも)最初期のこのヴァージョンは神バンド版であり、とりわけドラムス(SHIN氏、のようだ)の金属的な音色の、ヘヴィメタルとしての凶暴さを帯びた生々しさが印象的だ。

ここでのYUI・MOAの「バトル」は、武器なしの素朴な突進を繰り返すものだ。
2人とも、両手を突き出しながら、がむしゃらに相手に向って突進していく、という動きだ。ひょっとして、手から光線・フォースを発している、という設定なのかもしれないと思い、a②には「フォース攻撃」と書いたが、これは単なる個人的な印象である。

はっきりと攻撃の動きや武器を扱うしぐさをみせない点において、YUI・MOAの「バトル」史において、「なんじゃ、こりゃ」をもっとも感じさせるヴァージョン、といえるかもしれない。「闘っている」のかどうかも定かではない原型的なバトル、ともいえる(2人の距離も離れているし)。

攻撃へのリアクションとして、MOAは2回とも尻餅をつくが、YUIは2回目はまるで全身に銃弾を受けているかのような仕種をしながらも、倒れるのはこらえる。
このヴァージョンでの尻餅は、全身で「バトル」を「演」奏している結果だろうが、また、当時のYUI・MOAの体力・筋力から、コンサートラストでのこの曲のこの動きでは、尻餅をついてしまうのも必然、だったのかもしれない。

この後、2人の「バトル」はこのヴァージョン1をいわば骨組みにしつつ、その上にさまざまな武器や攻撃法をまとったものへと変わってゆく。


ヴァージョン2 LEGEND D 版(2012・12・20)
<荒ぶる少女たちの「バトル」はじまる>

a① MOA 突進→飛び蹴り → YUI 尻餅
a② YUI 顔の前でフォースの球をつくり突進し、ぶつける → MOA 尻餅
b① MOA フォックスサインを交互に打ち込みながら起き上り、キック、突進 → YUI撃たれながらもこらえる
b② YUI フォックスサイン交互に突進 → MOA 尻餅 → YUI右手でパンチ右足キック


ヴァージョン1から2カ月半後の「バトル」だが、印象が全く刷新されている。少女2人による激しい闘いが、本格的にはじまった、と感じさせるヴァージョンだ。

骨バンドの演奏だが、映像作品としては、これはこれで疾走感に満ちた、観応え聴きごたえあるものになっている(何といっても、曲が素晴らしいのだ。この曲を生みだしたのが、BABYMETALの成功の大きな鍵であることは言うまでもない。…と、これは、他の全ての曲に言えることだが。)

いきなり、a①でMOAが飛び蹴りをくらわす。当ろうかというところを、YUIが尻餅ですべって後退し、よける。(MOAは飛び蹴りの後、着地してもこけずにこらえる)ヴァージョン1にはなかった、接近戦、衝突である。
YUIの反撃は、突進していき、フォースの球(個人的印象です)をMOAに向かって投げ下ろす。動きだけ観れば、刀を振り下ろす動きにも見える。
次の、MOAの反撃が、荒ぶっている。
両手でフォースをぶつけながら起きあがり、首を振りながら突進、飛び蹴りをし、さらに突進する。
b②では、YUIが反撃の突進、尻餅をついて倒れたMOAに、”とどめだっ”といわんばかりのダメ押しのパンチとキックを浴びせる。

喧嘩、ではなく、闘い、というべき、身振りの質・量である。

こうして文章にするために、何度も巻き戻ししながらスロー再生しているのだが、なんとも情報量が多い。
しかし、このa①a②b①b②は、わずか13秒ほどの間の動きなのだ。突進したり、飛び蹴りしたり、尻餅をついたり、また起きあがって突進したり、これを、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」という一曲の完成された「演」奏のなかで行うのである。
(次のパートのcでは、美しい舞踊に戻っている)
この集中力と瞬発力は、こうして改めて観ると驚嘆せざるをえない。
大人にはできない、YUI・MOAによる「速弾き」とでも言うべきなのかもしれない。


ヴァージョン3 LEGEND Z オープニング版(2013・02・01)
<くるくる回るMOAMETAL>

a① MOA 回転しながら突進、回し蹴り、回転パンチ → YUI 尻餅 → MOA とどめのパンチ
a② YUI 起きあがり、飛び蹴り → MOAつんのめって倒れる → YUI 両手で叩く  
b① MOA キツネサインを交互に出しながら突進 → YUIひたすら後退 
b② YUI キツネサインで反撃 → MOAくるくる回りながら逃げる → YUI飛び蹴り
 

15のヴァージョンの中での、唯一の、オープニングでの「イジメ、ダメ、ゼッタイ」である。
LEGEND D のラストで(生誕祭なのに!)十字架にかけられたSU-METALが、このLEGEND Zのオープニングでは、重厚な「ナウシカ・レクイエム」が流れるなか、紙芝居の「女神がⅡび蘇るのだ」というナレーションの後、十字架にかけられたまま壇上に登場し、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」のイントロに合わせてダメ・サインをして甦る。
劇的にカッコいい、破壊力抜群のヴァージョンのひとつだ。(これ、生で観てたら、悶絶しただろうな…)
(あと、今初めて気づいたけど、サーフ・クラウドが、この時にもう発生してたんですね!)

「バトル」の一小節目、ギターのピッキングハーモニクスに合わせて、SU-METALとYUIMETALがダメ・ポーズをユニゾンで決めるのが、はっきり確認できる。
SU-METALがこのタイミングでのこのポーズをキメるのは15のヴァージョン全てでずっと固定化されているようだが、YUIMETALがここでポーズを決めるのは、前の2つのヴァージョンにはなかった(以後、いくつかのヴァージョンで確認できる)ものだ。
このヴァージョンでは、MOAMETALが、a①で飛び蹴りではなく、回転パンチ・キックで攻撃し、b②でYUIMETALの攻撃をかわすときも回転しながら”必死に”逃げるのが特に印象的だ。
2人の間合いも、ヴァージョン2よりもさらに詰まっていて、LEGEND Z オープニングからの劇的な展開に乗り、それを加速する、熱い「演」奏である。
「バトル」にふさわしい熱「演」である。オープニングで、体力に余裕があるのだろう、YUI・MOAの動きのキレがとんでもない。尻餅も、a①のYUIのみである。


ヴァージョン4.LEGEND Z ラスト版(2013・02・01)
<WHITE BABYMETAL>

a① MOA 突進  → YUI尻餅 → MOA飛び蹴り(こけず着地)
a② YUI 突進パンチ → MOA尻餅(?) 
b① MOA 突進 大振りのパンチ → YUI こらえる 
b② YUI キツネサインの乱れ打ち、突進、飛び蹴り → MOA 尻餅
(衣装のふりふりで確認しにくいのだけれどほぼこのよう)


神バンド(ベースはBOH神ではないが、ドラムスは青山神のあの音だ)の演奏で、炎も上がる、今に連なる「新生BABYMETAL」の「演」奏だ。
いろいろと貴重なヴァージョンだ。
唯一の、ドレスのような巫女の衣装のような純白の衣装であり、
ナレーションも、このヴァージョン独自のものである。
「私たちは新たな命を手に入れた」「だけど、永遠には続かない命」「いまこの瞬間を忘れないため、私たちは歌い続ける」「悲しそうな君の泣き顔は、もう見たくないよ」「君の心のなかに私たちはいつもいるよ」「だから一緒に歌うんだ」「イジメ、ダメ、ゼッタイ」

「バトル」は、同じコンサートのオープニングであるヴァージョン3とは大きく異なる。
この衣装では戦いにくそうだが、a①のMOAの飛び蹴りの高さ、b②のYUIの突進してからの飛び蹴りのキレ、どちらもさすが、だ。


ヴァージョン5.LEGEND 1999版 (2013・06・30)
<粘り強い受け合い>

a① MOA 突進し飛び蹴り → YUI 飛びながら一回転して耐える
a② YUI フォースを持ち突進、ぶつけ、飛び蹴り → MOA 前のめりでしゃがむ 
b① MOA キツネサインを交互に出しながら突進  → YUI 撃たれながらも耐える 
b② YUI キツネサインの連射・突進で反撃 → MOA (尻餅?)


映像も音質も、最上とはいえない収録状況だが、神バンドヴァージョンである。重低音のぶ厚い爆音がドコドコドコドコと疾走する演奏は、この曲に「魂」を与えたのだな、ということが、こうして時系列に沿って聴き並べてみると、よくわかる。
SU-METALの汗だくの顔が、とりわけ印象的なヴァージョンだ。
「バトル」の特徴は、攻撃を受ける側の粘り、である。
b④のMOAのリアクションをカメラがとらえていないので、そこは確認できないのだが、a①a②b①において、攻撃を受ける側が、勢いにおされて簡単に尻餅をつくのではなく、次の攻撃をするために相手の攻撃を受けとめこらえる、という動きが見える。
(これも、「五月革命」の成果、といえようか?)
「バトル」のはじめのキメ、は、ヴァージョン3同様、SU-とYUIのユニゾンになっている。


ヴァージョン6.サマソニ13版(アルバム初回特典映像) (2013・08・10)
<真夏の夜の赤い剣士登場!>

a① MOA 突進し飛び蹴り → YUI 後退ジャンプ。
a② YUI 腰から剣を抜き、突進しながら二太刀あびせる → MOA のけぞりながら後退しつつよけ、前につんのめる 
b① MOA キツネサインを交互に出しながら突進  → YUI 撃たれながらも耐える 
b② YUI キツネサインの連射・突進で反撃(たぶん) → MOA つんのめる


所有している中では、初の野外フェス版になるが、汗だくの三姫の熱演を見ることができる。まるで夕立にうたれたかのような三姫の髪や首までずぶ濡れの姿は、ステージ上のスモークと赤いライティングの効果もあり、映画の1シーンのようだ。
これも、初めのキメは、SU-とYUIのユニゾン。
a①の、MOAの飛び蹴りの飛距離もすごいが、何と言っても、a②で剣士YUIが初登場!片手で剣先をくるくる回しながら下から切り上げる動きは、日本刀ではなく、フェンシングの剣さばきだ。
b①、b②は、どちらもキツネサインを連射しながら、突進するようだ。b②は途中からSU-METALの顔のアップになり、YUIMETALの動きが確認できない。
今回は、尻餅はない。

それと、バトルと関係ない小ネタだが、青山神の髪がたいへんなことになっているようで、背後から髪を束ねるための手が何度か出てきているのに、繰り返し観ているうちに気づいた。


7.ラウドパーク13版(WOWOW放映)(2013・10・20)
<幻の空中戦(?)>

a① MOA 手裏剣しながら突進し、飛び蹴り → YUI 後退する。
a② YUI フォースの球を抱えて突進、飛び蹴り → MOA 「く」の字後退ジャンプで、みごとに着地。 
b① MOA ?(おそらくキツネサインの突進)  → YUI ?(おそらく後退しながら耐える)
b② YUI キツネサインの連射で反撃、突進、飛び蹴り(たぶん) → MOA ?

ネット上では、サムアップして三姫が歩み寄るところで、MOAMETALが泣いている、なんて書き込みがあるヴァージョンだが、何度見直しても、汗であろう、と思う。
それよりも、b①はほとんど見えず、b②もYUIがおそらく飛び蹴りをしたであろうところで画面は切り替わる。

神バンド(ギター)のアップになるのだ。
WOWOWの、ラウドパークの映像だから、仕方がないのだが。

ひょっとしたら、b①でもMOAが飛び蹴りをしていたら、飛び蹴り4回の応酬という、空前絶後のヴァージョン(ラウドパーク仕様?)だったのかもしれない。
ステージの幅はずいぶんあったようで、a①ではMOAMETALがすいぶん後ろまで下がって助走距離をとってから、突進している。
a①でのMOAMETALの手裏剣も、初登場だ。

ここでの、キメは、最新ヴァージョンに近い、a①に入る前の、ギターのチャチャッチャ、チャチャのキメに合わせてYUIがダメポーズをし、その後のa①の1小節目で、SU-が決める、というかたちのように見える。

ヴァージョン6もヴァージョン7も、尻餅はない。
野外フェスだから、というよりも、「バトル」としての成熟を示すものだろう。
何となく、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の「バトル」では、YUI・MOAがよく尻餅をつく、という印象があったので、(尻餅をつくか?)というチェックポイントを設けたのだが、神バンド帯同が基本になってから(つまり五月革命以降)、「バトル」での尻餅は基本的になくなったのだ、ということが、こうして観並べてみて確認できた。


ヴァージョン8.LEGEND 1997版(2013・12・21)
<空中戦 → ラ・セーヌのYUI → 殺陣>

a① MOA 突進し飛び蹴り → YUI 後退しつつ飛んでよける。
a② YUI キツネサインで突進、飛び蹴り → MOA 後ろに飛びつつ「く」の字になるが着地。 
b① MOA キツネサインを交互に出しながら突進、回し打ち  → YUI 打たれながらも耐え 
b② YUI 走りながら右腰から剣を抜き、右に払う → MOA 頭を下げてよける → YUI 下から切り上げる → MOA 膝を地べたにつけ、海老反りになってよける


楽器隊の音に埋もれてほとんどSU-METALの歌声が聴こえない(YUI・MOAの合いの手(SE)の方がはっきり聴こえる)という、とんでもないダメダメなミックスのヴァージョンだが、絵は、白いマリア像の前で、黒光りする3姫、という、崇高な美しさである。
このヴァージョンでは、SU-がキメのポーズをとるところは、YUIはすでに肩の上にフォースをためて戦闘に入っている姿勢をとっている。

「バトル」の激しさ美しさでは、ベストに近いヴァージョンではないか。

とりわけb②の、駆けながら腰から剣を抜くYUIMETALと、その2太刀を、頭をかかげ、海老反りになってよけるMOAMETALとの、殺陣、のスピード・キレは素晴らしい。
見出しの「ラ・セーヌの」とは、YUIMETALのb②での剣さばきは、日本刀のそれではなく、フェンシングのそれのように見えるからだ。さながら「ラ・セーヌの星」だ、と。駆けながら剣を抜きさばく、という動きがそう思わせるのかもしれない。

それにしても(繰り返しになるが)コンサートのなかの一曲の舞踊のなかの、ごく一部(b②はわずか4秒ほどのなかの動きだ)において、この複雑な動きをこれだけのスピードにのせて、これだけ切れ味鋭い「演」奏を2人は見せているのだ。
楽器を弾かない、なんてディスってる場合じゃないだろ。他にこんなことのできる人間を連れて来てみろよ!と言いたい。

ほんとうに、ほんとうに、驚愕である。

BABYMETALが国内で大衆的な圧倒的な人気を得なくても(僕は個人的に)構わない。でも、この、「YUI・MOAの凄さ」は、日本じゅうの人たちに知ってもらいたい、と切に願う。それだけの価値がある、とんでもない本物なのだから。

ヴァージョン1から、ここまで、14カ月。
このヴァージョン8では、YUI・MOAは、単に一度も尻餅をつかないだけでなく、よけ方の身のこなしだけでも唖然とするしかない動きを見せている。
圧倒的な、「バトル」の進化だ。
(当たり前だが、コンサートの本番でこれだけ完成された動きを見せるということは、それまでに、とてつもない鍛錬と努力の日々があったのだ。それは、人生経験を重ねたおやじ達にはよくわかる。だからこの「バトル」を観るだけでも感涙してしまうのだ。)


今回はここまで。
次回は、2014年度以降のヴァージョンだ。