何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

旅ワンコレポート

2017-06-20 09:51:25 | ひとりごと
    
今年の六月 数年前の六月

ワンコは時々、お勧めの本をお告げで教えてくれるだろう?
20日には、その感想を書くことが多かったけれど、今日の本もやはりワンコのお告げだよね ワンコ
だって、ワンコのお告げがなければ、
ワンコとブログのおかげで小豆ちゃん達に出会えてなければ、きっと この本は手に取らなかったと思うのだよ

「旅猫レポート」(有川浩) 
本書はね、出版社による特設サイトがあり、そこにあらすじが紹介されているんだよ
http://www.bunshun.co.jp/pick-up/tabineko/ あらすじより
『子供の頃から日本各地に引越しを繰り返していたサトルは、相棒猫ナナを連れて、懐かしい人々を訪ねる旅に出る。家業を継いだものの妻が家出中の幼馴染、今や立派な農業家となった中学校時代の親友、高校・大学の同級生どうして結婚してペンションを営む友人カップル・・・・・
行く先々で思い出を語る時間は、サトルとナナを迎える人々の胸の内にも ささやかだが大切な変化を芽吹かせてゆく。
そして、旅の果てに一人と一匹が見る風景とは。』

ワンコ 本書に出会えて良かったよ ワンコ

本書は、事故に遭い瀕死の重傷を負った野良ネコを、主人公サトルが救い一緒に暮らし始めるところから物語がはじまるんだよ
サトルは子供の頃にも猫(ハチ)を飼ってたのだけれど、
そのハチにそっくりなのが、大人になったサトルと五年一緒に暮らすナナという猫で、本書のレポートの主なんだよ

本書は近々映画化されるというので、詳細に書くことは控えるけれど、
サトルの育った環境を考えると、サトルの優しさと繊細な感性には、猫が大きな影響を与えていると思うんだよ
サトルにとって猫は、それほど大きな存在なのだけど、
その猫と暮らしていけなくなったサトルが、猫の引き取り手を探す旅に出た、
本書はそんな旅の物語なのだよ

本書には、猫の賢さと優しさが随所に書かれているんだよ
サトルは、ハチとナナと暮らした日々を思い返し、猫の習性を述懐するんだよ
ハチとナナは頭がよくて、人間の言葉だけでなく気持ちも完璧に分かっている・・と
ハチとナナは優しくて、人が落ち込んでたり元気がなかったりすると、近くでずっと寄り添ってくれる・・と
そんな賢いナナだから、
サトルが隠す旅の目的と、サトル自身も気付いていないサトルの本心も理解し、
旅の最後までサトルの側にいるべく様々な手段を講じるのだよ
もう、なみだ涙だよ ワンコ

自らの身を危険に晒してまでも、最後までサトルの側にいようとするナナが、
サトルと旅して一緒に見た美しい景色を胸に最期の時を迎えて思うことは (『 』「旅猫レポート」より)
『僕のレポートはもうすぐ終わる。
それは決して悲しいことじゃない。
僕らは旅の思い出を数えながら、次の旅へと向かうんだ 。
先に行ったひとを思いながら。後から来るひとを思いながら。
そうして僕らはいつか また、愛しいすべてのひとびとと地平線の向こうで出会うだろう。』

ねぇワンコ
ワンコが天上界の住犬になってしまい、私の落ち込みが激しかった頃、
「辛いだろうけれど、人に頼って生きるペットを残して飼い主が先に逝かねならぬ悲劇を思えば、ペットをきちんと見送ってあげられることは、飼い主にもペットにも幸せなことだ」と話して下さる人がいたんだよ ワンコ
それは頭では理解できたけれど、心情ではとても受け入れられないことだったんだよ ワンコ
でも本書を読み、その言葉の意味がよくよく分かったんだよ
ただね、サトルの両親のお墓参りをしたナナは、ちょっと違う感覚をもっているんだよ ワンコ

『動物は命が尽きて斃(たお)れたところでそのまま眠るが、死んだ後の寝場所を用意しておくなんて、人間はとても心配性で不自由な生き物だね。
死んだ後のことまで考えていたら、どこでも自由に斃れることができないじゃないか。』

ナナが人間のお墓を見て、こんな風に思うのは、ナナが野良ネコの経験があるからかもしれないけれど、
それだけではないと思うんだよ ワンコ

サトルは、ナナを残していくことが何よりも辛いのだけど、そんなサトルにナナは語りかけるんだよ
『野良なんて捨て置かれて当たり前なのに、サトルは足を折った僕を助けてくれた。それだけで奇跡的だったのに、サトルの猫になれるなんて、僕は世界中で一番幸せな猫だったんだよ。
だから、サトルが僕を飼えなくなっても、僕は何も失わないんだ。
ナナって名前と、サトルと暮らした五年を得ただけなんだ。』

ナナのこの言葉は、レポートの冒頭にも出てくるんだよ
『僕は何も失ってない。ナナって名前と、サトルと暮らした五年を得ただけだ。
だからそんな困った顔すんなよ。
猫は我が身に降りかかった出来事は何もかも粛々と受け入れるんだ』

ねぇ ワンコ
ワンコがお空組に引っ越してから、「ワンコがいない」ことばかり寂しがっていたけれど、
私達はワンコを失ったんじゃないんだな ワンコ
ワンコと暮らした17年と二ヶ月という素晴らしい時間を得たんだな
それはワンコがお空組に引っ越したとしても、変わることはないし色褪せることもないんだな 
何も失ってないんだな
ワンコと暮らした時間を得ただけなんだよ ワンコ

そしてさ、ワンコ
お空に向かって、約束の星に向かって度々しょっちゅう頻繁に「帰っておいで」と呼びかけるけれど、
そして、それは本書を読んでも止めることはできないけれど、
それでも気付いたことがあるんだよ ワンコ
ワンコは、そっちで私達と一緒に過ごす準備をしてくれているのかもしれないって

たぶん私には、まだ下界ですべき修行があると思うから、今はワンコのいるお空には行けないけれど、
ワンコが向こうで次の旅の準備をして待ってくれていると想像すると、
それも悪くないな、と思えるんだよ ワンコ

ワンコがお空組に引っ越しして、ちょうど一年と5か月、
ワンコを想わない日は一日としてないけれど、
今この本に出会い、大切なことに気付くことができたのは本当に感謝だよ ワンコ
ありがとうね ワンコ

・・・と聞き分けのいいことを書いたけれど、やっぱりワンコに会いたいから、
ワンコ 帰っておいでよ ワンコ
  
水やりを手伝っているつもりのチッチ?

追記
有川浩氏の作品というと、私は「阪急電車」「三匹のおっさん」シリーズを読んだことがあり、ありふれた日常にある面白味と哀しみが上手く書かれていると思っていたが、本書を読むと、私が共感する理由となっているであろう設定や視点が、そこはかとなく散りばめられていた。
そこはかとなく感じられる作者の思いは、’’そこはか’’だけに記しがたいのだが、一つだけ。

サトルが中学生のとき、サトルのクラスに、サトルと同様に複雑な家庭の事情を抱えた生徒が転校してくる。
可哀想な子に やたらと親切にしたがる担任に、転入生は鬱陶しいものを感じるのだが、そんな転入生に『あの先生はさ、家の事情がある生徒にやたら優しくしたがるんだよ。悪気はないんだけどさ』『でも、いちいち文句言ってもさ。受け流しとけばいいんだよ』とサトルは話しかけるのだ。

ねぇワンコ
悪気のない(無神経な)親切ってやつは、ホント質が悪いって、私はよく愚痴っていただろう?
それに通じることが書いてあったことも、共感のツボの一つではあるんだよ
もっと大きなツボもあったけどね、それはワンコと私の秘密だね ワンコ
また来月も、ワンコのお告げの本を楽しみにしているよ ワンコ
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