羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

俺物語!! 1

2015-05-28 21:49:13 | 日記
猛男が小学生の時の夏の真っ赤な夕暮れ。蝉がジー、ジー、と鳴く公園で小学生の砂川がブランコを小さく漕いでいた。網を手に虫取りをしていた猛男は俯きブランコに乗る砂川を見掛けた。猛男は網を置いて砂川の隣のブランコに乗り込み、勢いよく立ち漕ぎし始めた。「どぅおおぅッ!!」そのままポーズを決めてブランコから飛び上がり、落下する猛男。「どぅあッ」着地は失敗。でもすぐ立ち上がる猛男。「ブランコはこうだ!」「いや、違うと思う」笑い出す砂川。「ふふ、はははッ!」「あん?」頬を掻く子供の猛男、目覚まし時計の音が響く。ジリリリ! 起きると朝、夢だ。目覚まし時計を止めた。(懐かしい、だが、砂はブランコの乗り方もクールな奴だった)猛男はうつ伏せになっていた枕から顔を上げた。
「俺、今日は帰るわ」放課後、猛男が砂川と一緒に帰っていると、不意に言った。「なんだぁ、遠慮すんな。大和、お前の分もお菓子、作ってくれてるかもしれないぞお?」「用事あるから、じゃあ」砂川は去って行った。公園の噴水の所で大和は待っていた。「猛男くーん!」寄って来た大和は大きな猛男の背中の後ろを除き混んだ。「あれ? 砂川君は?」「用事だそうだ」「そうなんだぁ。いつも一緒だから」「そんなにいつも一緒か?」「うん! じゃあ、お菓子余ると思うから、後であげてね」大和は紙袋を差し出した。
ベンチに座り、紙袋を開けると星形に焼いたケークサレだった。「おおう! これは、覚えているぞ。これはケークザ・ケレだな!」「猛男君、惜しい! ケークサレだよ」星形のケークサレを摘まんで日にかざして見てみる猛男、食べてみた。「ねえ、猛男君。誕生日いつ?」「1月1日だ」「ええ、すごーい」(冬休み中なのに、昔から友達が玄関まで祝いにきてくれてたなぁ)子供の頃の賑やかな正月を思い出す猛男。
     2に続く

俺物語!! 2

2015-05-28 21:49:04 | 日記
「1月1日かぁ。ウチ、今から張り切っとく! お正月、餅、お餅のスイーツもあるよね! 何がいいかなぁ」あれこれ菓子のアイディアを膨らませる大和。「大和の誕生日はいつだ?」「え? えーと、6月、15日」照れる大和。「そっかぁ、6月15日かぁ。ん?」猛男は超視覚で公園の木立の向こうのマンションの一室の壁に張られた日捲りカレンダーの日付を認識した! 今日は6月5日!「おお?! もうすぐじゃないかぁ!!」「う、うん。そうなの、実は! ごめん、なんかお祝いしてほしいみたいだよね?」「当たり前だぁ! 祝うぞ!! 何がほしい!」「ウチ、いらないの、いらないの! ウチ、本当に何もいらないから。その日は、ずっと、ずっと一緒にいてもらっていいですか?!」大和の訴えに、猛男の心に猛男型の天使が舞い降りた!「ふうぅんッ!」猛男は大和の手を取った! 赤面して頷いて見せる猛男。「えへへ」大和は笑った。(大和、産まれて来てくれて、ありがとう! 人は、産まれる)
「砂! 誕生日だぁ!!」大和と別れた後で、マンションに帰って来た猛男は例によってノック無しで砂川の部屋に入った。砂川は自宅学習していた。「おめでとう。あれ? お前1月1日だよな」「よく覚えているな。俺もお前の誕生日を覚えてるぞぉ。9月13日だ。小学校の頃、毎年誕生会呼ばれてたからなぁ」「どーも。で、誰の誕生日?」「大和だぁ」「ああ、大和さん。いつ?」「6月15日だ」「15、ああ」少し表情を変えた砂川。「何かあるのか?」「いや、別に何も。誕生日、どうすんの?」ポケットに手を入れてみせる猛男。「大和は何もいらないそうだ。俺に、一緒にいてほしいそうだ。それだけでいいそうだ」「ああ、そ」「だが俺は!」猛男は突然接近した!「色々な所に連れて行ったりして祝いたい!!」「だね」「一緒に考えてくれ!」「うん」「砂ぁ!(ありがとう)」
     3に続く

俺物語!! 3

2015-05-28 21:48:55 | 日記
「はいはい」猛男が奇妙なポーズで両手を差し出してきたので、砂川は軽くハイタッチして応えた。
また別の日? 夕方、猛男がマンションのエントランスからエレベーターに乗り込もうとすると、「お帰り」背後から両手に買い物袋を提げたモジャモジャ頭の逞しい人影が出入り口の自動ドアを開けて中に入って来た。(人は産まれる)「猛、あんた1月にお兄ちゃんになるから」ずんずん歩いて来たのは母だった!「ちょっとボタン押してくれる?」ボタンを押した猛男、上階からエレベーターが段々に降りてくる。「母ちゃん何歳だ」「40だけど、内臓年齢は22歳だったねぇ」「若いな」サラッと超人ぶりを告白する身重の母!「若いな。は?!」気付いて自分の鞄を放って、買い物袋を引ったくる猛男。「重い物持つな!」「こんくらい大丈夫だよ」奪い返す母!「俺が持つ!」奪う猛男。「大丈夫」奪い返す母! ポーン。合図の音が鳴り、エレベーターが一階に降りて来た。「あんた産む時も陣痛中で、先に産気付いた妊婦さん分娩室まで運んだけど、なーんともなかった」エレベーターに乗り込む超人の母! 目で猛男にボタンを押すよう促す。「よくわからないが、凄いなぁ」感心した猛男はエレベーターに乗り込み、ボタンを押した。(そうか、俺に)ポーン、っと音が鳴り、7階に着いた。(弟か、妹か、何かができるのか?!)感動する猛男!『何か』ってなんだよ?(人は産まれる)感動して猛男がエレベーターのドアの前から動かない為、降りれない母が猛男の尻にキックをお見舞いしていた。
「えー?! 猛男君、お兄ちゃんになるのぉ!!」後日、いつもの公園で大和に報告すると、大和は感激した。この日は砂川もいた。「凄い! おめでとう! 弟? 妹?」「まだわからないそうだ」「お前の母ちゃんは?」「40だ!」
     4に続く

俺物語!! 4

2015-05-28 21:48:45 | 日記
「かっこいい!! 猛男君がお兄ちゃんかぁ、きっと凄いいいお兄ちゃんになるね! お父さんでもいいお父さんになるよね!」「大和も、いいお母さんになると思うぞ!」「へへへ」「ふふふ」デレデレする猛男と大和!「俺、そろそろ帰るわ」砂川はベンチから立った。「もう行くのか?」「ちょっとね」砂川は去って行った。「どうしたのぉ?」「砂、少しおかしいような気がするんだが」「ええ?」「いつも通りのような気もする」(砂はわからない。あいつは、自分のことをほとんど話さないからな)「あ、もしかして、砂川君、寂しいんじゃ? 今までずっと一緒だったのに、猛男君といる時間が減って、寂しいのかも? 砂川君って、猛男君のこと大好きだもん!」自分に無い、大和の思考に驚く猛男。「猛男君、ウチの誕生日、二人じゃなくてもいいからね! 砂川君も誘ってみよ!」「いいのか?」「うん!」(大和ぉ)「ありがとう!」大和の手を取る猛男。(好きだぁッ!)
翌日、か? 外は青空だが、教室のざわめきは耳に入らない様子の砂川。心ここに在らず。「砂!」猛男が来た。「15日! お前も一緒に、大和の誕生日をしないか?!」「え、なんで?」「大和がッ、お前が寂しいんじゃないかと!」そのまま言っちゃう猛男。「別に、全然」固まる猛男。「そうかぁ?」猛男はまじまじと砂川を見た。「それに15日は用事があるから」(寂しいんじゃないのか?)「なんでそんな話に?」「お前が少し、いつもと違うような気がしてなぁ。何かあるのかと思ってな」一瞬戸惑う砂川。「ああ、そう」(もし何か砂にあるのだとして、言いたくないなら、言わせる必要は無い)
夜、猛男は砂川の部屋に甚兵衛姿で現れた。(言ってくれるまで、待つぞ!!)「顔近いから」紙で近過ぎる顔をはたかれる猛男。「で、お前による大和さんの誕生日のタイムテーブルだけど」「なんだ?」
     5に続く

俺物語!! 5

2015-05-28 21:48:35 | 日記
「このアメリカ大統領の1日みたいなスケジュールだけど」「なんだ? どんどん言ってくれ!」紙には1日のスケジュールがみっちり書き込まれている。散々移動した後、午後からハイキング! また地味に海辺で貝など拾うを『捨う』と1度書き間違えていた。遊園地の『遊』の字も怪しく、喫茶室店の『喫茶』は書こうとしつ断念して『きっさ』と書かれていた。「まず朝6時は無いよね。後、このプラン完全に晴れ前提だけど雨降ったらどうすんの?」「そうかぁ」「休憩とか移動の時間無いんだけど、お前以外の大抵の人はこの予定、こなせないから」「やり直しだなぁ。雨でも行けるとこってどこだ?」「あそこは? 中学の時に、学祭の打ち上げで行った所。建物ん中にボーリングとかカラオケとかあったよな」「ああ、いいなぁ! そこにするぞ」「ぷ、くくッ」急に笑い出す砂川。
「あんときのお前、ボーリングのボールに指入んなくて、掴んで投げて」「そんなことあったかなぁ?」「あんなの初めて見たって、お前投げる度に店中どよめいて、最後ちょっと人寄って来てた。くくくッ」ウケる砂川。「よく覚えてるな忘れないから」新しい予定表の朝6時の所にボーリングと書き込む猛男。「朝6時、開いてないよ、10時だって」スマホで調べる砂川。朝一ボーリングデート!「そうか、10時な!」書き直す猛男。「昼飯はどうする? 牛丼、ラーメン」「デザート充実している所がいいんじゃない? 大和さん、お菓子作るの好きだし、見たり食べたりするのも好きなんじゃない?」またスマホで調べる砂川。「そうかぁ、誕生日だから、物凄いものを食べさせてやりたいなぁ!」「ここは?」スマホの画面を見せる砂川。「予約できるみたい。食事のメニューも色々あるっぽい」指を鳴らす猛男。「それだ砂! 予約するぞ! 後他に行くとこないかぁ?」「水族館、プラネタリウム、映画、
     6に続く