「ありがとうナルサス! そうと決まれば早々に出立しよう。一刻も早く王都に、エクバターナに戻らねば!」「ええ、馬と荷の用意を致しましょう」ナルサスに促されるまでもなくエラムは支度を始めようとしたが、ナルサスはエラムを呼び止めた。「お前はギランの港町に住む知人に預かってもらうことにする」いざとなれば国外へ逃げろと言うナルサス。「嫌でございます!」恩が有り、一生仕えると食い下がるエラム。「お前はまだ子供だ」「ナルサス様より大人です。一人では何もできないではありませんか!」家事から画材の仕入れまで全てエラム任せだったナルサス。絵描き? だが、画材仕入れの愉しみは知らないらしいナルサス。「エラムが正しいなぁ」エラム同行を支持するダリューン、王子以外に関しては実務重視らしい。「ナルサス、私からも頼む」挙手してまで発言するアルスラーン。「エラムを置いていったとして、我らの中でこんなに美味な食事を作れる者が他にいるか?」ナルサスとダリューンはいつの間にか空になっていた朝食の皿を見詰めた。「決まりだな」「エラム、これからも供を頼む」「ありがとうございます」一行に従者兼料理人が加わった!!
王子達が出立してからしばらくしてカーラーンの配下達が落とし穴から脱出し、山荘から出てきた。水浸しだ。「俺達の馬がいないぞ!」「おのれ~、逃げられると思うなよ!」一しきり悪態をつき、配下達はくしゃみ等しつつ徒歩で山を降り始めた。その様子を山の高所から弓矢を身に付けたエラムが見ていた。エラムは身軽に山中を駆け、思いの外すぐ近くの洞穴に入っていった。火を灯し、馬を繋ぐ広さも十分に有る洞穴の中に王子達は居た。ナルサスは王子と何か盤上遊技の類を差していた。「徒歩で降りて行きました」「御苦労なことだ。今日中に麓まで着けんだろう」駒を差すナルサス。
2に続く
王子達が出立してからしばらくしてカーラーンの配下達が落とし穴から脱出し、山荘から出てきた。水浸しだ。「俺達の馬がいないぞ!」「おのれ~、逃げられると思うなよ!」一しきり悪態をつき、配下達はくしゃみ等しつつ徒歩で山を降り始めた。その様子を山の高所から弓矢を身に付けたエラムが見ていた。エラムは身軽に山中を駆け、思いの外すぐ近くの洞穴に入っていった。火を灯し、馬を繋ぐ広さも十分に有る洞穴の中に王子達は居た。ナルサスは王子と何か盤上遊技の類を差していた。「徒歩で降りて行きました」「御苦労なことだ。今日中に麓まで着けんだろう」駒を差すナルサス。
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