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羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

俺物語!! 6

2015-05-28 21:48:27 | 日記
お前も書いてたな。そんなとこじゃない?」「プラネタリウムかぁ、小学校で行ったなぁ」猛男が懐かしむと、砂川がまた笑い出した。「くくくッ、あん時、お前、修理中の穴にハマッて、自力で抜け出して、地底人って騒がれて、くく、ははッ!」ウケる砂川。「お前本当によく覚えているなぁ。頭いい。よし! プラネタリウムだ! 大和、星好きだしなぁ。喜ぶぞ、楽しみだ!!」ウキウキと書き込む猛男。「張り切ってるな」微笑む砂川。「ああ、楽しいからな! 好きな人の誕生日を祝えるというのは、こんなにも幸せなことなんだなぁ!」「よかったな、おめでとう」「おう、ありがとう! お前と一緒に行った所ばっかだ」「まぁ、10年も一緒に居ればね」(そうかぁ、長い付き合いだぁ)「所でプレゼントは? 決めたの?」砂川はふいに切り出してきた!
「のおおおぉぉッ!!」衝撃を受けた猛男!「忘れていた! 誕生日つったら、プレゼントじゃねーか!」「普通はね。金あるの?」「無い!」速答の猛男。平時、買い食い等しているらしい。「貸そうか?」「人の金で大和を祝ってどうするッ?!!」凄い剣幕の猛男。「じゃあ、バイト?」「それだ砂! 俺はバイトをするぞぉ!!!」「探してみるかぁ」砂川はスマホで検索し出した。
翌朝、朝日がうっすら差し込む電灯の消えた砂川の部屋で、高性能らしい体内時計で目覚める猛男。昨夜はそのまま寝落ちしたらしい。「朝だ!」シユッパッ! っと起き上がる猛男。テーブルの上の予定表を取る猛男。「仕上げてある」見出しの周りに、地図や段取り等、細かく書き込まれている。ベッドで砂川は眠っていた。(砂、ありがとう。俺は幸せだぁ、大和の誕生日を、最高の1日にしてみせるぞ!)
その日の? 終業後、「先帰るわ」砂川はさっさと帰ろうとした。「今日もどっか行くのか?」
     7に続く

俺物語!! 7

2015-05-28 21:48:16 | 日記
「ちょっと、よるとこあるから。あと、帰って寝るわ」「ああ、ありがとな!」砂川は片手を上げて教室を出て行こうとした。「砂!」呼び止められ、振り返るただ事ではない砂川の横顔。「お前、大丈夫か?」思わず立ち上がる猛男。「何が?」「何となくだ」「別に、大丈夫だけど?」砂川は帰って行った。(大丈夫なら、いい)
「そっかぁ、砂川君、寂しい訳じゃなかったんだぁ」いつもの公園で、猛男は大和と並んでベンチに座っていた。「誕生日は二人でしよう」「うん! うふっ、後一週間、いいのかなぁ、こんなに幸せで」「俺もだ」ニッコリする猛男。(幸せだ)「おっと! これからバイトの面接だぁ」「え、バイト?」「誕生日、期待してくれぇ!」親指を立てウィンクする猛男。「えーッ?! 何もいらないよ、ウチ、本当に一緒にいてくれるだけで嬉しいんだよ? 嘘じゃないよ! 本当だよ!」「わかってるぞ。やらせてくれ! 楽しいんだ!!」笑顔の猛男に見とれた大和は笑顔になった。(大和、ありがとう。俺は幸せだ)
面接の事務室に来た猛男。なぜかプロテインのボトルがやたら置いてある。名札の貼ったプロテインのシェイクカップも置いてある。ラバーのトレーニング用品もある。「じゃあ取り敢えず、短期でお願いします!」「いやー、君のような人材は貴重だから、もしよかったら、そのまま長期で是非!」細身の面接担当者を前に緊張している猛男。「あざーすッ! よろしあっすぅッ!!(ありがとうございます。よろしくお願いします)」「いい返事だねぇ」このタイプ、扱い慣れてるらしい細身の担当者!
「砂ぁ! バイト決まったぞぉ!!」帰ると早速砂川の部屋に来た猛男。「おめでとう、どこ?」猛男はスージー骨山という男からもらった名刺を差し出した。『兄貴喫茶マッチョーズ』と書かれた薔薇だらけの名刺!「ここだ!」「大丈夫?」
     8に続く

俺物語!! 8

2015-05-28 21:48:08 | 日記
「メニューが少ない店だから、覚えられるだろう」「いや、そういうことじゃなくて」「今度、大和と来てくれ」「大和さんにバイトのこと言ったんだ」驚く砂川。「サプライズとかするんだと思ってた」「おお!」今気付いた猛男。誰かから、砂川にメールが来た。深刻な顔でメールを見る砂川。「どうした?」「いや、大丈夫」スマホの画面側を伏せてしまう砂川。「そうか、プレゼント選ぶの付き合ってくれるか?」「ああ、いいよ」砂川は快諾した。
そのまま出掛けた猛男と砂川。「今、お前のプレゼントのセンス思い出した」「お前に何やったっけ?」「虫とかだねぇ。あと、虫」虫ばっかりもらってた砂川! 小洒落た雑貨屋に入った猛男と砂川。慣れない猛男はキョロキョロした。「猛男、これは?」青い丸い模様のある丸い磁器を示す砂川。「なんだぁ? 茶碗か?」「この間大和さん、カフェオレボウル可愛いって言ってたろ?」『可愛い、ウチ、持ってないんだよぉ、これでカフェオレ飲んでみたいなぁ』と以前言っていた大和。「こ、これがカフェオレボウルというものなのか?」ちょこんと容器を摘まむ猛男。大きな容器も猛男の大きな手に掛かると小さく見える。「お前が持つと湯呑みだな」猛男はふと、雑貨を見て回る砂川を見た。(砂は人のことをよく見ているな。俺のこともよく見てくれている)猛男はカフェオレボウルを置き、目に付いた仔犬?等のアクセサリーを手に取った。「砂、これは大和にどうだろう? 大和がこれを付けたら、可愛いんじゃないかな? 俺はこれをあげたいなぁ」「いいんじゃない」「バイト代が入る前に売れてしまったら困るな」「取り置き頼んで見る」即、店員の元へ向かう砂川。砂川にときめいた女性店員はあっさり了承した。「OKだって」マネージャーみたいな砂川だった。「じゃ、俺行くわ」「おう、ありがとな!」砂川とは店の外で別れた。
     9に続く

俺物語!! 9

2015-05-28 21:47:59 | 日記
そして、猛男は兄貴喫茶に出勤した!(大和、楽しみにしていてくれ!)「いらっしゃいませーッ!!」タンクトップ! 短パン! 荒縄エプロン! ムキムキの猛男や他のマッチョ店員達がウェイターをしていた。「お、いいねぇ。君、理想的! 新入りさん?」一見普通っぽいが、二人連れの社会人風の客が入って来た。「そうッス!」接客する猛男に色めく「プロテインティー、お待ちどぅッス!」「ねぇねぇ、どこのジム入ってるのぉ?」(俺は幸せだぁ)すっかり馴染んでる猛男!!
「ただいまぁ!」夜、猛男は元気よく帰って来た。三和土で靴は放っぽり出す。「母ちゃん体は大丈夫かぁ?!」「大丈夫だよ、あんた父さんとおんなじこと言うねぇ。母ちゃんはいいけど、病院で誠君に会ったよ。お父さん入院したんだってねぇ」最近の様子の違う砂川の行動が脳裏に甦る猛男。「あんた知らなかったのぉ?」猛男は三和土の靴を踏み、裸足で走った!「ああ、あの子は言わないかぁ」母は呟いた。
砂川は玄関のドアを開けた。猛男は裸足で立っていた。「どうしたの? 入れば?」「お前、家の人は?」「ああ、母さんは姉さんと二人で海外旅行行ってて、留守。ケータイ繋がんなくて、連絡取れないんだよね」「他に人はいないのか? お父さんは?」「おばさんに何か聞いた? この間、倒れて、ちょっと、入院」(ちょっとじゃねーだろ?!)「手術することになったけど、立ち会いは親戚のおじさんに頼んだし」「いつだ? 手術」「6月15日」(砂よ、人は産まれる。人は死ぬ)下駄箱の上に敷物を敷いて置いた壺に活けた白い花が花弁を散らしていた。「偶然でな」「その手術、俺も立ち会うぞ!」「お前は大和さんの誕生日だろ?」「行かない! お前と居る! 大和に事情を言う! 大和はわかってくれる!」唖然と聞いていた砂川。
     10に続く

俺物語!! 10

2015-05-28 21:47:47 | 日記
「大和さんにうちの父さんの話すんなよ。言ったら、すげー気にするから」「大和はわかってくれる!」「あのな、猛男。俺は、友達が初めて彼女と過ごす誕生日、邪魔したくないんだ。お前あんなに楽しみにしてだろ?」「邪魔な訳あるかぁッ!!」「猛男!」砂川は声を荒げた。「なんでわかんねーの?」「お前が、楽しみにしていた予定台無しにして手術に来てくれても俺は全然嬉しくねーから。父さんのことは前こらなんだから、なんとなく、覚悟できてんだよ。だから、大丈夫だから」(砂の父さん、影の薄い優しい人で)猛男は子供のおぶってもらい、そのまま眠ってしまったことがあった。
それ以上は押せず、家に帰った猛男は母から話を聞いた。「面会謝絶なんだって。前から心臓が悪かったらしいけど、あんた、小学生の時かなぁ、1回倒れてるんだよねぇ。あん時はヤバかったらしいよぉ」食器を洗いながら母は答えた。(母ちゃん、知ってたのに言わなかったのか、大人だなぁ)夕焼けの公園でブランコに乗っていた砂川を思い出した猛男。(10年以上一緒にいても、知らないことはある。誕生日を知ってても、パンツの柄を知ってても、知らないことはたくさんある。たくさんあるが、砂、知っていることもたくさんある)
翌日か? 砂川は兄貴喫茶で働く猛男に外から手を振った。猛男は飛び出して来た!「砂、今から病院か!」「ああ、うん」「砂、俺はお前の気持ちに応えるぞ! だからお前は余計な心配すんな!!」目を見開く砂川。少し笑う砂川。「それ聞いてちょっと安心したわ」(砂、心配すんな! 大丈夫だ! 心配すんな!)
「ただいまぁ! 母ちゃん体は大丈夫かぁ?!」帰宅すると毎回聞く猛男。「大丈夫、大丈夫」ここで大和からメールが来た。『たけおくん明日ありがとう』と明日に迫っていた誕生日デートの礼いい、
     11に続く