3000円の本。とてもレベルが高かったし、参考文献も多く、著者の費用対効果はとても低い(執筆に膨大な時間を掛けている)。
いくつか抜粋:
■ 積極的道徳はパーパスやミッションに関わる。
■ 渋沢は、「博施済衆」(博く施し、民衆を救う)が論語の中で最も大事だと考えていた
まさに積極的道徳ですね。治国平天下というか。
「博施於民而能済衆」(広く民に施してよく衆を救う)の扁額は こちら
■ 渋沢の先義後利は、マイケル・ポーターのCSVやアダム・スミス『道徳感情論』の先を行っている。
渋沢はアダム・スミスを認識して、以下のように言っていた。
「利義合一は東西両洋に通ずる不易の原理であると信じます」
■ 先義後利は論語にはなく、荀子と孟子にある
■ 武士道の敵は、「功利主義者及び唯物主義者の損得哲学」(新渡戸稲造・菅野覚明)
■ 先義後利を貫くには強烈な「痩せ我慢」が要る。
士道とは痩せ我慢のこと(小林秀雄)
■ 「義」とは、
- 公への奉仕
- 誠実
- 勇気
…この3要素はいい。セミナーでも使わせていただこう。
■ アリストテレスは、勇気を「臆病と向こう見ずの間にある中庸の徳」と位置づけた
■ 「100年前渋沢栄一が我々に教えたことがあるとすれば、それは『経営者には責任がある』という一つのことである」
ドラッカー『マネジメント』(旧版、12頁)
■ ヘンリー・フォードも、キリスト教を経営に持ち込んでいた。
「まづ神の国と神の義を求めよ。さらば凡てこれらの物は汝らに加へらるべし」という山上の垂訓など。
■ ヘンリー・フォードが掲げる奉仕の原則の第三条
奉仕を利潤よりも優先させるべし
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渋沢栄一が、儒教的な「消極的」な道徳ではなく、キリスト教的な「積極的」な道徳まで掲げていたことがよく分かる本でした。
渋沢栄一、偉大なり!