川塵録

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政府/岸田首相のジレンマ  ー家庭連合の解散請求を判断できない

2023年08月21日 | 政治
政府/岸田首相が、家庭連合に解散命令請求をするのか。つまり、解散命令の裁判を開始するのか。

岸田首相は、今年になってから、8か月近く、一度も、一言も、「統一教会/家庭連合」の言葉を発していない。

今年に入ってから、岸田首相は、年頭所感その他記者会見で、一度も、統一教会のことについて触れていない。つまり、岸田首相的には、12月に寄付不当勧誘防止法を制定して、もう「国民に対する政治的義務は果たした」とお考え。

家庭連合の解散は、政府マターではあっても、首相マターではない。所轄の文科省の、永岡大臣マター。

それが岸田首相のお考え。

とはいえ。

解散命令をしない場合、マスメディアからの攻撃に晒される。政府も、岸田首相も。その意味っで、政府マター。首相マター。

だから、今は、岸田首相も、解散命令請求の裁判をするべきかどうか、迷っている。

その岸田首相の心理を分析すると、以下の「板挟み」にある。

A 解散命令請求をする →首を絞める

 そもそも、解散命令の要件を満たさないので、解散命令請求するな、というプレッシャーは、法務省その他いろんなところから首相筋に寄せられている。
 だから岸田首相も、解散命令裁判で、勝つ自信がない。
 国が原告となる裁判で、国が負けることは、許されない。
 歴史に残る赤っ恥だ。
 
 また、解散命令請求をするってことは、「家庭連合が、解散命令に値する悪い団体だ」という政治判断。
 それは、安倍元首相を始めとする、多くの自民党員が、解散命令に値する悪い団体と付き合っていた」ことを認めることになる。
 つまり、「自分たちの組織が、<著しく公共の福祉に反することが明らかな行為>をした団体と付き合っていた」ことを認める行為。
 いわば、自分たちの政党の、首を絞める行為。
 だから、なかなか解散命令請求はできない。

B 解散命令請求をしない →断絶宣言が浮いちゃう…    

   一方、解散命令請求をしないということはは、家庭連合が、解散命令に値しない、さほど悪くない団体だ、という政治判断。
 これは、安倍元首相や自民党員が、家庭連合(や関連団体)と付き合いがあったことに、お墨付きを与える行為。
 たいして悪くない宗教団体とお付き合いして、何が悪い、と。

  しかし、この「解散命令請求をしない」という判断は、昨年8月31日の、岸田首相による家庭連合との「断絶宣言」とやや齟齬を生じる(「やや」といえるか、という程度の齟齬。大きな論理的齟齬ではないけど)。
   
 え。昨夏に断絶宣言をしたのに、解散命令請求しないんだ。
 逆に言えば、解散命令請求をしない団体に対して、断絶宣言しちゃったんだ。
 だったら、そんな強い口調で「断絶」する必要があったのかいな。

  今、地方では、家庭連合を排除する地方議会決議に対して、憲法訴訟があちこちで提起されている。おそらく地方議会は裁判で負けるであろう。

 自民党も、政党として、大して悪いことない団体に対して「断絶宣言」しちゃったのかい。それって差別的じゃなかったのかな、、 この宣言は維持するのかい? いつまで維持するの? 的に。

____________

以上のとおり、
A 解散命令請求をする と、自らの首を締めちゃう。
 自民党のこれまでの家庭連合との付き合いを非難することだから。
 
 一方、

B 解散命令請求をしない ってのも、昨夏の排除決議との関係が微妙になる。
 排除決議をしちゃった手前、それを「解散命令請求をしない」(それほど悪い団体ではない)ってお墨付きを与えるのも… って躊躇している。

このように、AでもBでもデメリットがある。だから岸田首相は逡巡している。

____________

しかし、こう書き出して、改めて分析してみると、やっぱり、B(解散命令請求をしない)を岸田首相は取るはずだ。

なぜなら、AのデメリットとBのデメリットを比べると、A(解散命令請求をする)のデメリットの方が大きいから。

A(解散命令請求をする)の場合、過去の自民党を非難することだから、また、マスメディアからの非難にさらされ続ける。

・過去の清算はしたんですか。
・今後家庭連合みたいな邪悪な団体と付き合わない仕組みは構築したんですか。
・反社会的な団体と「ズブズブ」だったんですよね?

的に。エンドレスに。

一方、B(解散命令請求をしない)の場合、昨夏の断絶宣言との齟齬については、一応論理的な説明(言い訳)ができる。
 
  • たしかに、昨夏に断絶宣言はしました。
  • しかし、今夏までに7回質問権を行使して、慎重に検討した結果、解散命令請求に値するほどの悪い団体ではなかったと考えています。
  • つまり、<断絶宣言するほど悪いと思ったけど、でも解散命令になるほど悪いとは今は思っていない>のです。

と。これは全く論理的。堂々と説明できる。

このように、A(解散命令請求をする)の言い訳より、B(解散命令請求をしない)の言い訳の方が、簡単。逃げ切れる。

____________

家庭連合に解散命令請求をする法律的な要件がないことは、私が この本 で書いたとおり。

仮に、家庭連合の解散を、法的ではなく、政治的な側面から考えるとしても、上記のとおり、<解散命令請求をしない>という結論になるはずだ。

岸田首相におかれましては、以上の見解をお踏まえいただき、解散命令請求をしない、ないしは、当面は家庭連合の経過を見守る(当面は解散命令請求の判断を保留する)、との判断をしていただきたい。

世間体、世論の風当たりを考えると、

 解散命令請求をしない

という判断はできなくても、

 今の時点で解散命令請求をしない、今後の経過を見守って改めて判断する

という判断はできるはずです。

岸田文雄首相の、ご英断を信じています。


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1 コメント

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アメリカ合衆国の目 (ヤタベタキオ)
2023-08-21 22:19:30
中山先生、ありがとうございます、
先生のご推察は至極ありきに私も思います、
米国現政権は従来とまったく異なる政治運営です、ごり押しと言いますか、目的の為なら何でもあり、と言いますか、ステージでこける大国の大統領の姿は芝居なのでしょうか、
それと同じことをなっさているのが日本国首相です、一晩で答弁したことを覆す、本来ならばマスコミはこのような為政者を叱責していたはずですが、それもありません、何がこうさせているのでしょうか?分かりません、
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