THINKING LIVE シンキングライブ

シンキングライブは経済情報サイト
矢野雅雄が運営しています。

0106、中国原発戦略変化、WHのAP1000に統一の可能性!

2011年08月05日 15時18分35秒 | thinklive

福島第一原子力発電所の事故によって、中国の炉型戦略が大幅な見直しを迫られている。複数の中国メディアが報じたところによると、原子力発電開発の最高意思決定機関である国務院と専門家グループは、まだコンクリートを注入していない建設初期段階の原子力発電所についてはただちに建設を中止し、これから建設されるものも含めて、第3世代炉であるウェスチングハウス社のAP1000に一本化することで基本的に合意したという。

 温家宝首相が3月16日に召集した国務院常務会議では、福島第一原子力発電所の事故を受け、運転中と建設中の原子力発電所の安全検査を行うとともに、現在策定中の「原子力安全規画」が承認されるまでは、(実行可能性調査を含めた)前期作業の実施を含めた原子力発電プロジェクトの審査・許可を一時中止すると決定した。

 運転中と建設中の原子力発電所に対する安全検査はこのほど終了し、検査チームは安全検査報告のとりまとめに着手した。こうした検査から重大な問題は発見されていない。また、安全基準に適合しないプロジェクトも今のところないという。

 それでは、なぜAP1000に炉型戦略を一本化する話が出てきたのか。福島第一原子力発電所で採用されていたゼネラル・エレクトリック(GE)社製の沸騰水型炉(BWR)は第2世代に属する。これに対して、AP1000は第3世代に属する。同型炉の特徴は、AP(Advanced Passive)が示すように、「先進的な受動的安全性」にある。改良型も含めて、第2世代が人工的、能動的な安全システムに依存しているのに対して、AP1000は重力など自然の力を利用して、いざという時に炉心を冷却するという点が大きな違いだ。

 国務院と専門家グループは、福島事故後、議論を交わし、第2世代炉には安全面で隠れた弊害があるため、シビアアクシデントの発生確率がはるかに低い第3世代炉であるAP1000を優先的に採用することに合意したと伝えられている。

 ちなみに、AP1000が優位に立つきっかけになった重要な会議が2006年9月に開かれている。第3世代炉として、AP1000と仏AREVA社のEPRのどちらを選ぶかという専門家による会議で、24名がAP1000を支持したのに対して、10名が二つの炉型で進めるという路線を支持した。

 中国では、この会議の決定通りに炉型が選定され、浙江省の三門と山東省の海陽では合計4基のAP1000の建設が行われている。また、広東省の台山では、2基のEPRが建設されている。なお、国務院は内陸部に建設される原子力発電所ではAP1000を採用することを決めており、計画中の原子力発電所で採用が予定されている炉もAP1000が圧倒的に多くなっている。EPRは、広東核電集団しか採用の予定がないといった言った方が良いかもしれない。もちろん広東核電集団も、国務院決定に従い内陸部ではAP1000を採用しなければならない。

 仮に今後建設される原子力発電所ではAP1000を採用しなければならないということになると、建設中の原子力発電所で多数採用されている第2世代改良型炉はもう採用されなくなる。その場合、とくに問題点として指摘されているのが、国産化を含めた国内のプラントメーカーに対する扱いだ。

仏、アレバの第三世代原発、建設大幅に遅延、予算も膨張、以下の中国の記事は誤っているとボクは思う、アレバの第三世代原発を中国で完成出来ルとは思えないからだ、

*2011年6月29日 ... フィンランドでは、建設中の新型炉の工事が予定より4年も遅れ、建設コストが予定金額 の9割り増しになる事態が発生した。発注元の電力会社TVOとの契約では、追加請求は 無い、操業開始までアレバ社がコストをもつ、というフル納入が ...

 アレバ、「仏フラマンヴィル原発の竣工、事故や技術問題で再度延期—他方、建設費用は当初の1.5倍に」ルモンド紙(11/7月22日)

 第2世代改良型炉は、フランスの技術をベースに中国が改良を加えたもので、その代表的な炉であるCPR1000の国産化率は、広東核電集団の陽江原子力発電所では85%に達するとみられている。中国のプラントメーカーは、第2世代炉については技術を習得し一部機器を除いて供給できる体制が整ったが、AP1000では国産化率が大幅に下がってしまい、日本や韓国、米国等のメーカーの後塵を拝し出番がなくなるのではないかという声もあがっている。

 中国では、AP1000をベースにした140万kW級の第3世代加圧水型炉(PWR)であるCAP1400の開発が行われている。CAP1400は、国家科学技術重大プロジェクトに盛り込まれている。先ごろ公表された「国家『第12次5カ年』科学技術発展規画」では、「第12次5カ年」期間中(2011〜2015年)に、標準システム設計を完成するとともに実証炉を建設するという目標が示された。

 そうしたなかで最近、興味深い通知が出された。財政部、工業情報化部、海関総署、国家税務総局は7月5日付で、「第3世代原子力発電ユニット等重大技術設備の輸入税収政策の調整に関する通知」を関係機関に伝えた。

 第3世代原子力発電所や石油精製設備、天然ガスパイプライン設備、大型船舶設備など、国が発展を支持する技術向けのコンポーネントや部品等を国内企業が輸入するにあたって関税と輸入段階での増値税を免除するというものだ。第3世代原子力発電所はAP1000とEPRが対象で、2010年1月に遡って発効した。先に、AP1000に一本化することで合意したと書いたが、この通知を見る限り第3世代炉としてEPRが外されたということではなさそうだ。

 公表されたリストでは、原子炉圧力容器や蒸気発生器、加圧器、炉内構造物、制御棒駆動機構、一次系配管、安全注入設備、格納容器、核燃料、二次系設備まで詳細にリストアップされている。第2世代改良型炉の場合と同じく、まずは先進国からの技術導入にあたって優遇策を提供し国産化を加速させるというねらいだ。

 この通知が、EPRも含めて、今後建設される原子力発電所では第3世代炉を採用するという決定の前触れとなるのか。いずれにしても、中国政府が安全に軸足を移したことは間違いない。7月23日に浙江省の温州市で起きた高速鉄道事故は、炉型戦略に微妙な影響を及ぼすかもしれない。(執筆者:窪田秀雄 日本テピア・テピア総合研究所副所長 編集担当:サーチナ・メディア事業部)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿