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12381、冷温停止状態とはなんだ、溶けた燃料棒がドウナッテルカわからないソレデ安全と思え?

2011年12月15日 20時59分03秒 | thinklive

 

まず、政府がしきりに使いたがる「冷温停止状態」。

 「冷温停止」の本来の意味は、定期検査などで原発の運転を止め、密閉された原子炉の中で冷却水が沸騰していない安全な状態のことだ。

 政府などは「状態」を加えた「冷温停止状態」という言葉をよく用いる。事故収束に向かっていることをアピールするためのようで、細野豪志原発事故担当相は「慎重な表現を使っている」と強調する。しかし、原子炉の密閉性が失われて高濃度汚染水が大量に建屋内に残っている現状は、「冷温停止」の状態とかけ離れている。

 原子力界では、言い換えや造語で、危ない印象を消し去ろうとの動きが続いてきた。 全国には、運転をはじめて三十年以上たつ原発が二十数基ある。記者会見で、「原発の老朽化」を問うと、担当者は必ずといっていいほど「高経年化につきましては…」と言い換えて答える。

 「古くなった部分は取り換えるから、(原発に)老朽化はあり得ない」のが原子力界の「常識」だという。しかし、圧力容器や格納容器など主要部分は交換できない。

 建屋にたまった放射能濃度の高い汚染水を「滞留水」と言い換えて呼ぶのもひっかかる。表面の放射線量は毎時二〇〇〇ミリシーベルト超もあり、汚染水の方が実情に合う。

 汚染水を浄化して出る高濃度の放射性汚泥は「廃スラッジ」と言い換えているが、同様に人が近づけるような放射線量ではない。言い換えは、問題を見えにくくする。

 片仮名、英字も多用される。ウランに毒性の強いプルトニウムを混合した核燃料は「MOX燃料」と呼ばれる。プルトニウムの使用が最大の特徴だが、「P」の字は含まれない。

 極めて高い放射線量のため、いまだに建屋内の様子がよく分からない福島第一3号機でもMOX燃料が使われている。

 学生に原子力の基礎知識を教える大阪大大学院の下田正教授(原子核物理学)は「都合の悪い単語を言い換えたり、記者会見を難しい用語で乗りきろうとするのは原子力界の常とう手段。福島の事故後にも使い続ける方も問題だが、メディアや市民も分かりやすい言葉を使わせるよう声を上げるべきだ」と話している。

原子力技術協会の石川迪夫最高顧問は「溶けた燃料棒は圧力容器の下部でラグビーボールのような形状に変形しているのではないか」 と言っていますが、「幸い」にも、ラグビーボール状にはなっていないでしょう。

なぜ「幸い」なのか… それを知るために、「燃料棒がなぜ棒なのか?」から考えていきましょう。
使用中の燃料棒には1%~4%のウラン235が含まれています。ウラン235が連鎖的核分裂反応(臨界反応)を起こすためには、ある程度の濃度で、ある量が一か所に集まることと、集まった時の形状が問題となります。球状に集まると臨界になりやすく、平らになったり、棒状になった場合は、臨界になりにくくなります。

炉心では、たくさんの燃料棒が狭い隙間を空けて束になった状態になっています。その隙間に中性子を吸い込みやすい物質でできた制御棒を入れるからこそ、臨界ギリギリで原子炉を運転したり、いざという時に短時間で臨界反応を止められるように設計されています。つまり、制御棒が入った時は、臨界が起きにくく、制御棒がない時は臨界が起きやすいと。このように、燃料棒と制御棒を綱渡りのようにコントロールしているのが、原子炉の炉心なのです(すべてが理想的に動くという想定の下に)。
さて、その燃料棒がすべて溶けてしまったら、隙間がなくなりますから、制御棒はまったく効果無しです。溶けた核燃料が圧力容器の底にラグビーボール状に集まったら… 恐ろしいことです。間違いなく臨界反応が起き、それも小規模なものでは済まないでしょう。日本の原発を推進してきた重鎮の一人である石川迪夫氏の頭の中に、その光景が浮かばないことが不思議でなりません。

原子炉はゆっくりとした臨界反応によって生じる熱を発電に使う装置です。原爆は瞬間的に起きる制御できない臨界反応によって生じる熱や放射性物質でたくさんの人を一瞬のうちに殺戮する兵器です。人間の制御下にない臨界反応は、絶対に起こしてはいけない恐ろしい事態なのです。

1999年、たった16㎏、バケツ一杯の核燃料(この時はウランを液体に溶かしていた)が起こしたJCOの再臨界事故ですら、2名の死者と667名の被曝者を出しています。

メルトダウンの第1の恐ろしさは、制御下にない臨界反応を引き起こして、巨大な熱エネルギーによって、圧力容器や格納容器を吹き飛ばし、放射性物質を広い範囲に撒き散らすことです。

今回は「幸い」にも、今までには大規模な再臨界は起きていません。では、いったい核燃料はどうなっているのでしょうか?

メルトダウンしましたから、一旦は間違いなく溶岩のようなドロドロの状態になっています。ここで思い出したいのは、圧力容器が鋼鉄でできていること。鋼鉄の融点は1600℃。2800℃で溶けている核燃料を支えることはできません。ヤカンの底に穴が開くように、圧力容器に穴が開き、溶けた核燃料が格納容器へと落ちていく様が目に浮かびます。

格納容器の底には水がありますから、そこで小規模な水蒸気爆発を起こしながら、固体に固まっていったはずです(ここで、もし溶融した核燃料が一気に格納容器に落ちていたら、チェルノブイリのような大規模な水素爆発が起き、今よりもっともっと深刻な事態になっていたでしょう)。火山の溶岩が海岸で水に触れて固まるのと同じようなイメージです。途中で水飴のように延びたりしたので、最終的に固まっている核燃料は、複雑な形をしているでしょう。急に冷やされたので、小さく割れている部分もあるはずです。これが、今まで「幸い」にも大規模な再臨界が起きなかった理由です。

しかし、「幸い」とは言え、そこにメルトダウンが引き起こす第2の恐怖があります。核燃料が、圧力容器や格納容器を溶かして、環境の中にむき出しになっているのです。放射性物質が、どんどん漏出していくのは言うまでもないことです。

そして、とりあえず固まっている核燃料によって、今後、再臨界が起きる可能性がないかというと、そうは言えません。理解すべきなのは、再臨界が起きるために温度は関係ないということです。ある濃度のウラン235が、ある分量、ある形で集まったら、再臨界は起きます。
圧力容器や格納容器の底で、一部、バラバラになって固まっている核燃料が、余震や、あるいは冷却するための水の流れなどで、どこかに集まった瞬間、再臨界が起きる可能性は十分にあるのです。
それを避けるために、3号炉からホウ酸の投入始まりました。
ホウ酸(ホウ素)は、中性子を吸収するので、始まってしまった臨界反応を止めたり、臨界反応が起きるのを予防します。東電も政府も、再臨界を恐れざるを得ない状況は続いているのです。

追記:
3月11日からこれまでに、再臨界が起きていなかったのか?
結局、データは東電と国に握られていますので、どうにも判断しようのない部分はあります。ただ、爆発的な中性子線量が確認されていませんので、少なくとも、格納容器の外で再臨界が起きた可能性は低いと思われます。
ただ、2か月を経て、どうにも圧力容器の内部の温度が下がってこないのは、再臨界を疑わせます。溶けた核燃料は、全体で臨界状態に達するわけではありません。部分的にコブのように出っ張ったところ(球に近い形状になったところ)で再臨界に達する恐れもあります。

そして、事実を掌握するためには、情報管理を東電と安全・保安庁から切り離し、原子力発電に利害関係のない第三者機関に委ねるべきです。
現状は、脇見運転で大事故を起こした容疑者とその同乗者が、自分たちで現場検証をしている状態なのです。普通は許されない話です。スリーマイルアイランド事故でも、直ちに第三者機関が立ち上がり、当事者からは、すべての権限を取り上げたそうです。


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2 コメント

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ジャーナリストたち怒れ (夏色ひまわり)
2011-12-15 23:51:09
いつまで東電の嘘を垂れ流すのでしょう。
ジャーナリストとしての良心はないのでしょうか。
いくら広告費をもらっているからと言って、後に多くの健康被害が出てきたら、真実を報道していなかった大罪にどう責任を取るのでしょう。
お金にジャーナリスト魂を売ったことになります。
多くの人の命を犠牲にして、東電の嘘に荷担したことになります。
新聞社、雑誌社、テレビ局・・どうか目覚めて欲しいです。
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Unknown (高橋)
2011-12-16 19:41:15
分かりやすい解説と、ご提言、ありがとうございます。
あらためて潜在する危険性を認識いたしました。
国民一人一人が危険意識を高めて、知るべき情報や、やるべき行動の妨げを排除するように、至急行動を起こすべきですね。
子孫のために。
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