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22054、電通、英、イージス買収の問題点、WPP、電通買収のシュミ、シナジーMAX?

2013年07月31日 15時51分57秒 | thinklive

*世界クラスの企業分析に出会った感じ、脱帽、最敬礼!日本郵政とアフラックの関係がなんとなくWPPと電通関係のシュミの相似性を感じる、世界化とはある意味で奪われることでもある?

外国法事務弁護士・米NY州弁護士スティーブン・ギブンズ(Stephen Givens)の電通、イージス買収の疑問点*朝日新聞提供の記事参照

 *ギブンズ外国法事務弁護士事務所(東京都港区赤坂)所属。

 東京育ちで、1987年以降は東京を拠点として活動している。京都大学法学部大学院留学後、ハーバード・ロースクール修了。日本企業に関わる国際間取引の組成や交渉に長年従事している。


 電通が英国の広告代理店イージスを約4千億円で買収するという。残念ながら、この事例は、ここ数年間の日本企業の海外M&A(企業の合併や買収)に共通する悪いパターンにぴたりと当てはまる。日本企業と海外企業を合体させただけでは、グローバルな大手ライバルと対等には競争できない、というのが第一点。第二点として、日本企業側の海外企業に対する経営能力と、両社の組み合わせのシナジー効果が疑わしい。そして、最後の第三点は、買収価格が高すぎるという問題だ。

 *ボクはこの分析を読みながら、野村證券の、リーマン買収の失敗事例をマザマザ追体験、スティーブンス氏はその件についても失敗の原因を的確に解析している、企業高値買いは日本だけではないが、最近はイイケースも生まれている、

 市場、競争のグローバル化、地域のGDPに均衡する世界シェア、その内容も問われるところ!

バドワイザーで有名な世界のビール最大手アンハイザー・ブッシュ・インベブは、市場のグローバル化への対処に成功した企業と言えよう。10年前世界のビール会社の上位10社は全世界の34%のシェアを占めていたが、現在その比率は74%に拡大した。インベブは全世界のシェアの20%以上を持ち、北米32%、南米40%、アジア20%、欧州8%、そして各地域でナンバー1かナンバー2のシェアを持っている。

*欧州出身企業ナノニ、インペブの欧州シェアの低さはwhy!

 電通はイージスと組んでも世界No.5にとどまり、売上総利益の58%は日本国内が対象である。電通の売上総利益の84%は日本国内で、残りの16%の大部分は日本企業の海外広報活動のお手伝いだ。海外広告に関してほとんどの日本企業の大手は電通を相手にしていない。日本の証券会社、銀行、保険会社、渉外法律事務所、その他のサービス業も困っている。サービス業の場合、日本人同士の国内マーケットで通用する価値観、スキル、人脈、言語は、それをそのまま海外に持っていっても使い物にならないことが多い。

*電通の広告売り上には、海外広告は殆どナイ、ということだ、日本の大手企業が海外で電通を相手にしない、というのは苦い現実!

 では、電通とイージスを合体させると、この問題は解決されるか? 電通の売上総利益は3328億円である。一方、イージスの売上総利益1418億円は西ヨーロッパ(47%)、日本を除くアジア(25%)、北米・南米(19%)など、電通があまり活躍していない区域での売上総利益を含んでいる。この結果、統合会社の売上総利益の日本国内の割合は84%から58%に減り、日本以外の割合は16%から42%に増える。世界のGDPの8%しか占めない日本が売上総利益の58%を占めているということはバランスがまだ大きく偏っているということだ。しかも、2社を合体しても、グローバルな土俵で成功するための規模としてはまだ小さすぎる。電通とイージスの売上総利益を足した4700億円では、世界大手のWPP(1.3兆円)、オムニコムグループ(1兆円)、ピュブリシス(6,122億円)、IPG(5,460億円)より少ない。日本以外でのスケールは世界No.1のWPPの8分の1にすぎない。WPPのスケールと売上配分のバランス(北アメリカ 35%、イギリス12%、ヨーロッパ25%、その他の地域 28%)に比べて電通・イージスの存在感は薄い。*電通イージスは日本と欧州に偏在!

 シナジーのなさ、*両社の経営幹部の徹底した話し合いが必要?製造業とのチガイも大きい?

シナジー効果のなさも弱点の一つとして指摘せざるを得ない。ソニーを具体例として考えよう。ソニーは電通を日本国内の広告代理店として使っているが、海外では商品と地域によって複数のグローバル大手代理店のサービスをつまみ食いしているようだ。電通がイージスと一緒になったことを理由に、ソニーがいきなり海外広告ビジネスをイージスに変えるはずはない。ソニーにとって、イージスがたまたま電通の子会社であることは、客観的なサービス内容や品質と関係ない要素だ。同様にイージスのクライアントの紹介で電通の日本国内のビジネスが大きく増えることはないだろう。半年前まで、電通は、イージスより4倍大きいピュブリシスとの間で、相互的なシナジーを狙った独占的提携関係にあったが、ピュブリシスが十分電通に仕事を回してくれなかった不満が提携関係の解消の重要な原因となった。イージスが電通の子会社となれば、ピュブリシスと違って、イージスの経営陣は電通の指示に従わなければならない立場になるが、電通を使うかどうかは最終的にイージスが決めることではなく、クライアントが自由に判断することだ。クライアントにとって電通とイージスの統合の魅力はどこにあるのか?

*電通の経営幹部が世界企業の経営幹部と歓談できる環境が醸成できなければ、「電通」は日本以外に存在価値はない?

 クライアントが野村証券とリーマンの統合による付加価値を感じなかったことは、まさしくその失敗の重大な原因だった。例えば、破たん前のリーマンのクライアントが複数の市場で証券を発行する案件の場合、リーマンは組織的に、ニューヨークをはじめ、それぞれの主要市場でアンダーライターとして証券を投資家に売り込み、アフターマーケットでサポートする能力を持っていた。しかし、野村証券がリーマンから引き継いだ組織は、アメリカを除くリーマンのヨーロッパとアジアにおける雇用関係に過ぎなかった。ヨーロッパとアジアに居住するリーマンの人材がいくら優秀であっても、ニューヨークにベースのないアンダーライターはグローバルプレースメントのマンデートは取れない。その人材の雇用主が日本の業界の一番手であることはクライアントにとって無意味な要素だその人材がリーマン破たん後、高収入を得続けるために転勤した、ただの傭兵に見られたことは逆にクライアントにとってマイナスだった。同じように、電通による買収のニュースを聞いて、「よかった、これで、より頼もしい相手になった」と思うイージスのクライアントがいるとは思えない。逆にイージスが電通に圧迫され、元来のイージスのスタイルやサービス内容が失われて、日本的なものに変わってしまうのではないかと心配するクライアントは大勢いるだろう。本当の意味のシナジーをもたらすために、電通とイージスのそれぞれの経営幹部、クリエーティブ(広告コンテンツの制作部門)、営業スタッフが全世界をスムーズにカバーできる一つのチームにならなければならない。しかし、野村証券社員となった元リーマンのインベストメント・バンカーと野村証券とのこじれた関係でわかるように、日本人経営陣は、クリエーティブかつ高収入のプロフェッショナルな人々をうまく使いこなせないだろう。イージスの一番優秀なスタッフがもっと自由な空気を吸える職場に脱走することが予想できる。少なくとも電通がオーナー・親分的な態度でイージスを仕切ろうとすれば、イージスの一番大切な資産である才能ある人々はきっとすぐに会社を離れる。

 最終的に日本企業、特にサービス業のグローバル化の勝敗は人事問題で決まる。新発売商品の広告のグローバルキャンペーンを遂行するためにはその企業が有する複数の拠点、異文化の人間から一つのチームをまとめることは不可欠だ。複数のタイムゾーンをつなぐビデオカンファランス(テレビ会議)は現在のグローバルビジネスの基本になっている。事実として、日本人はこのようなカンファレンスコール(電話会議)は苦手。英語でブレーンストーミングできる日本人はあまりにも少ない。

 莫大な買収価格、借金

  3955億円の買収価格がイージスの過去5年の平均営業利益!110億円の36倍で、買収発表直前の市場株価の45%プレミアム乗せであることも気になる。これだけ高い買収価格であれば、ROI(投資収益率)はたった2.25%になり、電通の極めて低い6.6%のROE(自己資本利益率)を下回り、電通と他の広告代理店大手のROEの格差をさらに広げることになる(ちなみにWPPのROEは12.82%、オムニコム 27.73%、IPG 23.41%、ピュブリシス 18.55%)。電通が全額を銀行から借りるイージスの買収代金は電通の現在の5,600億円の時価総額とほぼ同額だ。イギリス・欧州の不安定な経済ベースのイージスが売り上げと収益性を将来にわたって伸ばせるという保証も、ゼロ金利が永遠に続く保証もない中で、電通の経営陣の株主に対する説明責任は重大だ。どう見てもリスクとリターンが見合わず、正当化ができない。グローバル経済についてこれから悪化する色々な消極的な可能性を考慮すると、イージス買収のための莫大な借金で電通は次の危機を乗り越える余裕を無くしたかもしれない。

  世界トップのWPPの子会社になったら?興味深いことに、電通の経営陣は、国内マーケットの縮小、市場のグローバル化という深刻な問題に対して、海外企業を買う方向の対策しか考えていないようだ。しかし、逆方向、つまり外国の企業に「買われる」対策もありうるはずだ。大手4社のWPP, オムニコム、 IPG、 ピュブリシスはまだ日本マーケットでは弱く、進出後も長年にわたって苦労している。仮にWPPと電通が合体したら、総売り上げが1.5兆円となり、地域別売り上げ配分も理想に近い値(北米29%、イギリスを含むヨーロッパ31%、日本19%、その他22%)を確保することができる。WPPのクライアントベースはイージスの8倍であることから、電通とのシナジーも、それだけ効果的に働くはずだ。

 電通だけでなく、他のグローバル化に苦労する日本企業はなぜ外資企業に買われることを一つの選択肢として考えないのだろうか? それに答えるためには、日本型資本主義の中核的な価値観に触れなければならないので、別の機会に譲ることにする。

*依存性から出発した明治維新、アレは革命ではなく、欧米資本に依存した権力の移転に過ぎなかった、本当の意味での独立心がない?

 

 


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