寺さんの【伝えたい話・残したい話】

新聞記事、出来事などから伝えたい話、残したい話を綴っていきます。
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(第2511話) 30年ぶりの電話

2017年10月03日 | 出来事

 “「Kです。わかる?」「もしもし?」「忘れた?Kだけど」「もしもし、うーん、はい・・・」。Kさんと同姓の名前は、他に心当たりはない。なぜ?突然の電話に言葉が出ない。Kさんはひとしきり、私の家族のことを尋ね、自分にひ孫が生まれたと語った。そして、「もう30年ぐらい経つ?」
 そう、30年前のことがよみがえる。あの日、彼女が姶めた店の流し台が詰まって大騒ぎになり、それが原因で疎遠になった。20年来の友人だった彼女から理不尽な誤解をされ、友情のもろさを痛感した。とても親しくお付き合いしていたが、互いに連絡をしなくなって30年の歳月が過ぎた。
 その彼女からの電話に本当に驚き、その勇気に感激した。衰えのない、懐かしい声が聞けて幸せな気分になった。30年の月日は、あの時の悲しかったこと、人間不信に陥ったこと、すべてを忘れさせてくれた。昔聞いた、月日が全て解決してくれるという言葉を実感している。お互い人生も終わりに近づき、和解の電話だったのかもしれない。最後は「健康で過ごしましょうね。ご主人ともどもよろしくね」と終えた。”(9月14日付け朝日新聞)

 東京都の主婦・肩村さん(82)の投稿文です。これはまた勇気の要る話である。でもしてしまえば何と言うこともない。こんなこと、なぜもっと早くしなかったろうかと、悔やむことであろう。このKさんは肩村さんと同年代であろう。Kさんにはこのままでは死ねない、と言う気持ちがあったのではなかろうか。もう何十年も前のことである。今更謝罪の言葉など要らない。安否を尋ねるだけでいい。それですべて解決である。この話はこんなことを伝えているのではなかろうか。
 さて、ボクにこんな知人はいなかったろうか。今は誰も思いつかない。この先こんな知人があることに気づいた時、この話を思い出したいものだ。


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