寺さんの【伝えたい話・残したい話】

新聞記事、出来事などから伝えたい話、残したい話を綴っていきます。
(過去掲載分は「付録」の「話・話」を開いて下さい)

(第3386話) もらいすぎたパン

2022年10月01日 | 出来事

 “現愛知県設楽町で暮らした戦時中の一九四四(昭和十九)年春、今でいう小学校二年生だった私が学校から帰宅するや祖父は激怒して拳を振り上げてきた。しぱらくして家に戻ると、祖父から「戦争でお国のためにお父さんが戦地に出向いている子どもの食べ物を取るとは非国民だ」と諭された。思い当たるのは学校で持参した弁当を広げたときだ。縁故疎開中の級友男児の昼食は乾パンで、農家ゆえ麦飯とたくあん弁当だった私にはそれが珍しくて一部を交換することにした。それを目撃した隣家の女児が、祖父に「取り上げた」と報告したらしい。
 息子であるわが父と叔父をともに戦争に送った祖父は、疎開中の男児に同情したのだろう。パンをもらい過ぎたことを私は大いに反省した。”(9月3日付け中日新聞)

 愛知県豊川市の夏目さん(男・85)の投稿文です。乾パンとたくあん弁当を交換した夏目さんに悪気はなかったであろう。でも見た女児には取り上げたと見えた。その顛末がこの投稿文である。夏目さんはもらいすぎたと反省されている。人には思いがけないことがいつまでも心に残るものである。
 人は何かと自分に都合がいい方向に働く気持ちが自然に湧く。公平にしているつもりでも、どこかにそんな気持ちが働く。自分に都合がいい理由を付ける。ボクも先日そんな体験をした。参加しているある会の会員の親睦バス旅行を申し込んだ。ところが、最後の案内で、ボクが参加条件に該当しないことがわっかた。すでに参加費も払ってあるので、会長は便宜を図ってくれることになった。これはやはり特別扱いである。妻に話したら止めておきなさい、と言われてしまった。会長がいいと言うならと、でもこれはやはり自分に都合がいい判断である。人は何を言うか分からない。会長に迷惑がかかるかも知れない。結局は断って、これで良かったと思っている。


1 コメント

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Unknown (ハナミズキ)
2022-10-01 09:27:52
もらいすぎたパンを読ませていただき、思い出しました。長男が就職超氷河期の時、6月にA社
から内定通知が届きました。家族全員大喜びをしました。
ところが後日、とっくにあきらめていたもう一社からの五度目の面接の通知が来ました。最後は東京本社での面接ということでした。
長男はすでにA社に就職することを決めていたにもかかわらず、自分の力を試してみたいと言い面接に行く旨を私達に伝えました。即座に私は言いました。もしその会社が受かったらどうするのか聞きました。もちろん俺は長男だから少しでも親元に近いA社に決めているが、、、と。
その言葉を聞いて、この氷河期に不必要に面接をし、もし合格しても入らない会社を受けたら他人を一人不幸をにすることを言い聞かせました。結局最後の面接はあきらめましたが、あの日から22年経った今はそれで良かったと思っています。
本人はどう思っているのかわかりませんが。

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