彦四郎の中国生活

中国滞在記

近代化が急速に進む中国―子育ては家族全体のこととされる価値観は根強く保たれる―年金のこと

2015-02-10 09:43:36 | 滞在記

 宿舎近くの河川公園に行くと、おじいちゃんやおばあちゃんと孫の姿を、よく目にする。もちろん、母や父と子どもの姿もよく目にするが、祖父母と孫の姿が圧倒的に多い。中国では、夫婦共稼ぎで働き、子どもの世話は家族全体でみていくという伝統的価値観が根強く保たれているようだ。
 中国の定年は、男性60才・女性55才となっている。年金での生活は日本の水準より高い。支給開始は、60才と55才からとなっていて、公務員の場合は「定年前の給料の80~90%が支給」される。しかも、年金のための月々の積立金(支払金)は免除されている。一般企業や個人経営の場合は、「定年前の50%が支給」される。そして、月々の年金のための支払金は、収入の8%~20%となっている。年金の官民格差が問題となっているので、今後この官民格差は改善されていくだろうと思われる。国民全体の賃金が毎年上昇しているので、年金の金額も この上昇に合わせて増額されている。いずれにしても、中国の物価と合わせて、退職後の年金生活は日本のような不安はあまり感じないようだ。定年を心待ちにしている人が多いのが中国社会である。このような生活環境もあいまって、早朝から夕方までの間、孫の面倒をみるのは「祖父母」が圧倒的に多い。

 中国の定年も、近年の近代化の中で、「男性65才、女性60才」に見直されることが検討し始められた。中国政府は、年間18兆円あまりを年金資金として予算化しているが、年金支給高齢人口が約3億人以上にのぼり、今後もますます増加する中で定年の年齢を見直す機運が高まってきている。また、2012年をピークとして労働人口が減少に向かってきたこともその背景にある。(一人っ子政策の影響が大きい。)

 お母さんが小さな赤ん坊を連れて歩くとき、最も多いのが①厚着をさせてぐるぐる巻きにした赤ん坊をおばあちゃんがもっている姿である。おじいちゃんや、父親がもっている場合も多い。②都市部では、抱っこひもを使っている場面もみかける。➂ベビーバギーカーを使っている場面も見かける。④おんぶひもや ネンネコバンテンの姿は、都市部では時々みかけるぐらいだが、都市部周辺の町に行くと おんぶひもが多くなる。

 ⑤都市部でも、「かご」の中に子供を入れている姿がたまに見られる。
 中国では、「子育ては女性(特に母親)の責任だという考えはかなり薄く、子育ては家族全体のこととされる価値観」が現在も強い。そして、子供の両親・兄・姉、祖父母、みんな総出で小さな子供の面倒を見ている。しかし、中国でも核家族の進行が徐々に始まって来た。都市部では、一定の収入のある「中間高収入層」は、ベビーシッター(お手伝い)を雇う人が増加傾向にある。しかし、核家族の家庭でも、夫が家事や子育てに積極的に参加することを求められる社会風潮が強いのも中国だ。

 農村部から都市部に「出稼ぎ」に行く農民工の数は3億人以上とされているが、夫婦で都市部に行く人もけっこう多い。幼い子供を祖父母に預けて、1年に1~2度あまり故郷に帰る生活だ。1年ほど前に、現在の4回生(40人)に「私の子供時代」というテーマで作文を書いてもらい文集を作成した。10人ほどの学生は、「子ども時代は、祖父母に育てられていた。」と書いていた。

 先進20ケ国の年金生活の順位で2014年に「17位」に下降しつづける日本。2012年には、中国の方が日本より上位にランクされた。ちなみに一位は「デンマーク」。2位・3位が北欧諸国となっている。アメリカが10位。韓国も日本と同じように下位の18位となっている。
 中国人は定年後、「孫の世話や国内旅行をしたり、趣味の世界のことをしたい。」と考える人が多い。年金の支給額が年々改善される中国社会にあっては、「定年後も働きたい。」と考える日本人については、「なぜ?もったいない。せっかく仕事や労働から解放されるのに。」と思う人が多いと聞く。だから、定年年齢の引き上げには賛否両論あるようだ。
 中国の経済成長もピークを終え下降傾向にはある。また、バブル崩壊の経済危機を迎える可能性も指摘されている。しかし、一党独裁の「共産党政権」のもと、国民の生活要求を実現させることを政権がとらない限り、政権は支持されなくなり崩壊する。だから、年金に関しては国民の不満が少なくなるよう、改善に向けて「官民格差」の是正に向かうことは間違いない。中国は公務員の数が非常に多く(約8000千万人)、公務員の人口比の多さが政権基盤を支えている。公務員天国の国だ。この公務員の多くが共産党員だと思う。だから、「官民格差の是正」も、急激な改革ではなく徐々に是正していく方針をとるだろうな。