瀬崎祐の本棚

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詩集「うずら」  南風桃子  (2015/03)  空とぶキリン社

2015-03-12 18:00:48 | 詩集
 ソフト・カバーに描かれたうずらとたまごの絵も軽妙な第1詩集。93頁に32編を収める。
  不思議な肌触りを持った詩集である。詩集タイトル通りに、巻頭詩およびⅠ章の6編にはうずらが登場してくる。「どどど」では、うずらの大群が地平線のかなたからこちらにむかっておしよせてくる。わたしはうずらのたまごをリュックサックにつめて走りはじめる。

   わたしは背中にしょったうずらのたまごが
   料理をするまえにかえりゃしないかと
   ひやひやしながら
   (こんなことならゆでたまごにしとけばよかった)
   などと思いつつ
   走りに走った

 そして、うずらはダチョウのように大きくなってわたしをつぶしていくのだが、かけつけた消防隊も民衆も、「なんだうずらか」「またうずらか」というだけなのである。
 描かれた世界には奇妙な脱力感がある。本人にとっては必死になるような事柄が、他人には取るに足らない出来事でしかない。その関係は、話者と物語を差しだされた読者の間でも生じている。作者は、話者が必死に語ったことが読者には肩すかし感を与えるように仕向けているようなのだ。どこかで社会に対して居直ったような強さが感じられる。
 「真夏の夜の夢」では、「おかしら付きのおとこでござる/あたたかいうちに/召し上がってくだされ」と言われる夢を見ている。あなたのからだは「こんがりとやかれ」ているのである。わたしとあなたの関係などは一切説明されないが、何か、あなたに求めているものが具体的な状況の提示になったのだろう。最終連は、

   はとどけいのぜんまいもゆるんで
   えいえんにうごかない

 亡くなった父へ語りかける「父への手紙」は、「訳もなく憎」んでいたお父さんに「幸せかな。幸せだったかな」と問いかけて「おお、幸せぞ-」とびっくりするほどの大きな声で答えてもらう作品。ゆったりと気持ちがほぐれる作品。 
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1 コメント

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瀬崎祐 様 (南風 桃子)
2015-03-15 06:40:16
このたびは、拙著をブログに紹介していただき
誠にありがとうございます。

「うずら」 は24年ぶりの第二詩集になります。

丁寧に読んでいただき、あたたかい書評を頂戴して
胸がほっこりいたしました。
本の中のうずらも喜んでいるだろうなあと思います。
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