みちのくの山野草

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『拝啓宮澤賢治さま』(田下啓子著)より学んだこと

2017-02-05 14:00:00 | 賢治作品について
 過日、田下啓子氏より上掲のような『拝啓宮澤賢治さま』(田下啓子著、渓流社)をご恵与いただいた。
 私は、うんうんと頷きながら読ませてもらった。目から鱗が何度か落ちた。
 そして昨日盛岡に行った際に『さわや書店』に立ち寄ってみたところ、そこでも売られていたので中身については皆様もご購入なさって是非ご覧になっていただきたい。

 ついては、迷惑になるかもしれませんが、ちょっと以下に述べさせてもらいたい。

 私は相も変わらず『春と修羅』がよくわかっていない。ただ例えば、勇壮というよりはおとなしいとさえも感ずるあの「雛子剣舞」を基にして、よくぞここまで勇猛果敢で、圧倒的迫力のある心象スケッチに創り上げたものよと、賢治のそのずば抜けた創造力に感心する「原体剣舞連」や、私からすれば「第四次」の特異な感覚がなければ書けないだろうと思われる、童話「やまなし」や「おきなぐさ」等は何度読んでも感動が薄れない。そこに賢治の類い稀な天才を見る。あるいはまた、賢治の指導よろしきを得て、収穫が上がったのであろう「稲作挿話」や、倒れた稲が再び立ち上がった「和風は河谷いっぱいに吹く」は私の大好きな作品だった。
 ところが、「羅須地人協会時代」のことを検証してみた結果、「稲作挿話」や「和風は河谷いっぱいに吹く」はどうやら事実を詠んだわけではないということを知って、もはやこちらには感動しなくなってしまった。寂しく思っていた。

 そんな矢先に、田下氏からご恵与いただいた同書によって「なめとこ山の熊」の読み方を学び、私はとびきり大きな目の鱗が落ちた。これで「なめとこ山の熊」は、賢治作品の童話の中で大好きな作品の新たな一つに加わった。寂しく思っていた穴を埋めることができた。

 そしてそれだけではなかった。実はかつての私は、「銀河鉄道の夜」も大好きな賢治作品であった。サン=テグジュペリの「星の王子さま」に勝るとも劣らないものだと思っていた。ところが、巷間出回っている「銀河鉄道の夜」は賢治が完成させたものではなく、もともとは未完だったので、賢治歿後いろいろな方がまとめたものだということを7、8年ほど前にやっと知り、私にとってはそのようなものであれば
    「銀河鉄道の夜」(宮澤賢治原作、誰々編)
となってしまうのであり、以前のように純粋には味わえなくなった。
 それが、田下氏のお蔭でこの「なめとこ山の熊」の味わい方を教わって、これは私からすれば再び「星の王子さま」に勝るとも劣らない賢治作品となりそうだ。しかも、後者が本当は大人向けの童話であると思っていたのだが、やはり前者「なめとこ山の熊」も実は子ども向けの童話というよりは大人向けの童話だと私には思えてきた。
 
 ということで、田下氏には二重の意味で感謝している。

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《鈴木 守著作案内》
◇ この度、拙著『「涙ヲ流サナカッタ」賢治の悔い』(定価 500円、税込)が出来しました。
 本書は『宮沢賢治イーハトーブ館』にて販売しております。
 あるいは、次の方法でもご購入いただけます。
 まず、葉書か電話にて下記にその旨をご連絡していただければ最初に本書を郵送いたします。到着後、その代金として500円、送料180円、計680円分の郵便切手をお送り下さい。
       〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木 守    電話 0198-24-9813
 ☆『「涙ヲ流サナカッタ」賢治の悔い』                  ☆『宮澤賢治と高瀬露』(上田哲との共著)          ★『「羅須地人協会時代」検証』(電子出版)

 なお、既刊『羅須地人協会の真実―賢治昭和二年の上京―』、『宮澤賢治と高瀬露』につきましても同様ですが、こちらの場合はそれぞれ1,000円分(送料込)の郵便切手をお送り下さい。
 ☆『賢治と一緒に暮らした男-千葉恭を尋ねて-』        ☆『羅須地人協会の真実-賢治昭和2年の上京-』      ☆『羅須地人協会の終焉-その真実-』


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