平成31年3月27日(水)
木材を扱う企業の朝礼に出席させていただきました。このところ話題になっている建築物などに木材を提供する会社で、このような企業が地元にあることは誇りです。
東京2020オリンピック・パラリンピックでは、環境に配慮した大会運営が強調され、新国立競技場や選手村などの施設には、国内産木材が多く使われています。また、県内施設では、草薙総合室内運動場(このはなアリーナ)や富士山世界遺産センター、日本平夢テラス、富士山静岡空港新国内線ターミナル、新吉原林間学園、県議会関係では議事堂が入る本館通路にも、県内各木材産地から集めた材料で施しが行われています。
木材が注目されているのは、木や森林が持つ環境性で、特に地球温暖化の原因となる二酸化炭素などの温室効果ガスの吸収と定着に、自然界にあるものとしてすぐれ、その用途は建材から燃料、そして今注目の新素材CNF(セルロースナノファイバー)の原料となります。また、海洋プラスチック汚染が危惧されていますが、石油を原料とするプラスチックから植物繊維を主原料とする紙製品に代替が進む方向で、強度や耐水性などに向上が図れると、益々、木に対する注目は向上していきます。
しかし、戦後に植林されたスギやヒノキなどの人工林は、輸入材の価格の安さによる木材価格の低迷から、商業ベースに乗らないことや、成長に時間がかかり管理に手間がかかることなどから、人工林の多くが放置されてきました。いわゆる荒廃林となり、手の入らない森林は、成長が悪く、枝なども多いことから益々商品価値は低下し、問題は単にその森林だけに留まらず、森林が本来持つ機能である水源涵養や土砂災害発生の原因になるなど、大きな社会問題となっていました。
その後、地球温暖化問題などが提起されると、森林が持つ機能が注目され、健全な森林の確保に向け、その対策が進められています。
木の性質にある二酸化炭素の吸収について触れましたが、成長の過程においてその吸収力が一定ではなく、人間の成長と同じように、吸収量の多い時期である成長期があります。やがてその量は減るといわれていますが、適切な伐採と植栽、管理を繰り返すことで、木の成長を促し優秀な木材となっていきます。
しかし、成長が早まることはなく、枝打ちや間伐などの作業は変わりません。その管理には重労働がつきまとい、仕事としては敬遠されてきました。ところが、新たな高性能機械が開発され現場に導入すると、その作業性は一変しています。苗木も改良され、優秀なものが出てきました。山の再生は着々と進んでいます。
ここで次の課題が大きくクローズアップされおり、それは木材の有効利用の推進です。木材消費が進みその経済的な効果により、林業が推進されることになるので、その取り組みが活発化され、冒頭で触れたような公共施設などでは積極的に使われるようになりました。
しかし、従来の使い方に加え、用途を広げていくことも重要です。その例では、大きな建物の構造材として使うための、木材の繊維方向を交互に貼り合わせたCLT工法や、既定の寸法の丸太を組み合わせた立体トラスなどがあり、木材だけで3,000トンもの屋根を支える「このはなアリーナ」や、50m四方の大屋根が立体トラスで構成される四国室戸のアリーナなどがあります。CNFは夢の新素材として、自動車から食品までの多用途が実現しているなど、この数年の動きは私たちの想像を超えています。
朝礼に出させていただいた企業は、オリンピックや県の公共施設に、新たな木材利用技術と木材を提供している企業で、朝礼後の代表者との懇談では、木の未来を感じさせる貴重な機会となりました。