平成24年10月16日(火)から18日(木)
9月議会が終了し、静岡県議会産業委員会の県外視察が2泊3日で実施されました。訪問先は鹿児島県で、商店街の活性化、6次産業化への取り組み、若者就職サポートの現状を視察してきました。
鹿児島空港へは富士山静岡空港から定期便が飛んでおり、県民空港として利用します。かつては、羽田空港経由でしたから時間的には相当短縮となります。
視察から戻っての新聞記事によれば、富士山静岡空港と韓国ソウル、中国上海便は領土問題により双方の乗客の往来が激減し、11月は半数に減便したそうで、外交問題が地方経済にも影響しているのが現実的に感じます。
(鹿児島といえば桜島、西郷隆盛、大久保利通)
さて、鹿児島県は12年ぶりくらいの訪問で、視察テーマも次回の一般質問の参考になると期待していたので、とても楽しみでした。地域的には鹿児島市内3カ所、最南部の枕崎市2カ所でした。
せっかく鹿児島県南部まで来たので、行程の途中、知覧にある特攻平和館を見学させていただきました。第二次世界大戦末期、日本陸軍特別攻撃隊の出撃基地の跡地に建つこの施設は、平和を心から願う場所として以前から一度は訪れたいと願っていたところです。
施設について詳しくは、下記を参照して下さい。
http://www.chiran-tokkou.jp/index.html
以下、視察先の概要を報告します。
<We Love 天文館協議会>
鹿児島市の中心市街地、天文館地区では、平成19年に「中央地区商店街振興組合連合会」が中心となり、加盟・非加盟の商店会、百貨店や大型商業施設を巻き込んで協議会を立ち上げました。平成23年には協議会が会社を立ち上げ、複合型映画館を開業・運営しています。
会員には、正会員・賛助会員・一般会員のほか、イベントなどの援助を行う個人会員、動態調査などで支援する大学等の特別会員も含まれています。
この活動の中心は、若手の商店街後継者。柱とする活動は、1)イベントを通しての販売促進。2)ブランド商品の開発。3)大型施設との共同事業で、いずれも「売り上げ向上の実現」を目指しています。近々商店街に大型商業施設の建設も計画中で、火曜日、水曜日の二日間とも商店街に宿泊しましたが、いわゆる「シャッター通り」を感じさせない、元気な商店街でした。
(天文館という名の商店街入口)
(説明いただいた天文館協議会の皆様)
(協議会が入る商工会議所1階には「芋焼酎」の紹介コーナーが)
<枕崎水産加工業協同組合・枕崎市かつお公社>
かつおの水揚げは焼津港に次ぐ日本第二位の枕崎港。鰹節生産量は日本一です。枕崎市内で生産された「枕崎鰹節」のブランド化を実現するために、産地独自の品質企画委員会を立ち上げ、独自の認証基準を設けることにより、品質向上を目指しています。昨年度は総務省から「ふるさと企業大賞」を受賞し、積極的な地域ブランド化が評価されました。
鰹節だけでなく生食(さしみ)も、一本釣りにより生きたまま、約マイナス20度の不凍液に浸すことで鮮度を保ち、ブランドとして評価されています。昼食にいただきましたが、さすがという味でした。加工会社から出たかつおの残さ(頭部や内臓、骨、ヒレなど)は全て、飼料や健康食品、油脂などの加工品に生まれ変わり、捨てるところのない魚と説明を受けました。
魚の普及については、学校給食や食育、体験学習などを展開し、小さな時から魚に親しむこと教えています。販売においては、インターネット販売が相当の効果を生じ、日本列島の最南端というハンディも販売戦略上は不利になっていないとのことでした。もちろん一朝一夕で実現したものでなく、様々な試行錯誤があったものと聞いています。
6次産業化の事例として大変参考になりました。
(会場となった枕崎水産加工業協同組合の建物)
(説明いただいた役員の皆様)
(かつおの残さを利用した加工品。かつおには残す部位がない)
(商標登録や地域ブランドの証明。説明員のシャツにもブランドマークが)
(こんな歌が確かあったような。)
(枕崎かつお公社内部で鰹節を作る工程を見せていただいた)
<かごしま茶流通センター「ちゃぴおん」>
鹿児島茶の生産は600~700年前からとの説明に驚かされました。日本一の茶所の静岡県人としては、静岡が一番と思いこんでいたのですから。近代においては、鹿児島茶の苗木は静岡産がほとんどだとか。私のまわりでも、鹿児島県に苗木を販売している農家が何軒かあることは知っていましたので、しかも品種は「やぶきた」と聞けば、「静岡が一番」を連想してしまいます。
さて、そんなふるさとの自慢話とはべつに、茶市場では風向きが変わってきました。静岡県の生産量は日本一ですが、生産者の売り上げは決して多くはありません。むしろ減少方向を向いています。さらに、昨年および今年の原発事故による風評被害も拍車をかけ、静岡茶は大打撃を受けてしまい、将来に黄信号が点ってしまったとも感じています。
風評被害は別として、静岡茶の課題がいくつか見えていました。第一に茶摘みの時期です。九州地方に比べ静岡は茶摘み時期が遅れますので、茶価に一番期待の掛かる「一番茶」は九州産が市場に出回った後となり、不利となります。その相場事情は決して軽くはないのです。いわゆる「八十八夜」のお茶は、産地によって暦の上では時差があり、茶相場に大きく影響します。
第二に茶取引の在り方です。静岡では仲買人といわれる方と生産者(荒茶)の関わりが強く、競争原理が少ない取引が行われていますが、鹿児島では、最新の入札システムが導入され、競争原理が積極的に働きます。結果、生産者である農家が得る所得に差が出ることになります。仕組みの課題はわかっていても、古い取引形態が定着している静岡での改善は難しいようです。
鹿児島県では、茶生産における農薬管理などの生産履歴が徹底され、品質管理に重点を置き、ブランド化が進められています。茶の品質に関しては、荒茶や荒茶の浸出液の画像解析により、外観、色合い、明色等を解析、数値化するなどして、生産者にその情報をフィードバックし、品質向上に努めています。
また、平坦な広大な土地は、機械化が進み効率の良い茶生産が可能です。
茶のPRでは、茶祭り、茶の入れ方教室、T-1グランプリ等の他、鹿児島県出身の俳優などを「お茶大使」に任命し、積極的に広報活動に取り組んでいます。今売れっ子の有名アイドルのポスター起用は、決して見逃せません。
日本一の茶所静岡県人として、大きな刺激を受けました。
(かごしま茶流通センターの入口)
(説明いただいた役員の皆様)
(入札ラインの説明)
(入札ライン。ベルトコンベアーで流れてくる)
(お茶を入れるのはロボット)
(出荷場の全景)
(国民的アイドルがトップセールス)
<鹿児島県若者就職サポートセンター「キャッチワークかごしま」>
この施設は、県下のジョブカフェ事業とハローワーク機能を集約し、就職に関する情報提供、キャリア・コンサルティング、各種セミナー、就職支援、就業相談など、若者の就職活動に関するサービスをワンストップで提供しています。
設置主体は鹿児島県ですが、管理運営は鹿児島商工会議所に委託しています。
(ヤングハローワークの入口)
(観光地だけに関係する資格の案内も)
(説明いただいた役員の皆様)
若者を巡る就業環境は基本的にどこも大きくは変わらないと感じますが、鹿児島県は離島が多く、就業する場所やサポート体制も海を隔てて分散しているので大変だろうと想像されます。
産業別就業者割合は、第一次産業では全国平均が4.2%に対し鹿児島県が10.4%(平成22年国調)と、農林水産業分野の就業環境が多くなっています。農業にチャレンジしたい人には可能性が高い地域です。
沈滞している日本経済の打破に、若い人たちの力をもっと生かせたら変わるだろうにと思うのは私だけでしょうか。引き続き、若者の就職支援に注視していきます。