平成30年11月30日(金)
静岡県が所有する防災ヘリコプターが更新されることになり、今年度末に納品、その後、隊員の訓練などを経て、来年度中頃から運行開始となります。
新機体の愛称は、現行ヘリと同じ「オレンジアロー」を継承し、デザインは静岡文化芸術大学の学生によるものが採用されました。
災害時におけるヘリコプターの活躍には大きな期待がかかります。本県では、現行ヘリコプターが導入から20年を経て老朽化が進むほか、性能の向上と新たな機能を求めて更新されることになりました。同時に、本年8月に発生した群馬県消防防災ヘリコプターの墜落事故を受けて、ハード、ソフトの安全対策も強化されます。
新たな機体はイタリア製で、有効積載量は2,593kg(現行1,175kg)、エンジン出力3,385馬力(1,416馬力)、最大巡航速度278km/h(248km/h)、最大航続距離755km(555km)と、どの性能も2倍近くになっています。
特にエンジン出力が大幅に向上したことにより、本県には富士山や南アルプスなど海抜3,000mを超える高山もあることから、山岳救助ではこれまでできなかった救助活動が可能となり、一度に多くの被災者を救助できます。また、速度の向上や航続距離が伸びたことにより、速くより遠方への救助活動も可能となります。
搭乗する救助要員は県内市町消防機関からえり抜きのエキスパートが選抜され、厳しい訓練を受けてその任につきますが、パイロットや整備は民間に運行業務委託されます。
このところ、防災ヘリコプターの事故が続いていたことから、安全対策はなお一層強化され、これまでの操縦士1人体制から2人体制が検討されています。運用マニュアルの整備や運航責任者の配置、地面や障害物に近づき過ぎたときに警報装置や機体後方監視モニターなども設置されます。これまでは隊員による見張りだけで対応してきましたが、救助作業時にはそれに集中することから、監視が万全とはいえず、警報機器の導入により安全が図られるというものです。さらに、事故が発生した際には、発生時の状況を記録するフライトレコーダーやボイスレコーダも搭載されることになりました。
防災ヘリコプターのパイロットを2人体制にすると書きましたが、全国の防災ヘリコプターが同様の方針を検討しており、パイロットの確保が難しいとも聞きます。政令市である静岡市や浜松市も消防防災ヘリコプターを導入しており、パイロットの確保ができず、運行に支障が出そうという情報もあります。
ヘリコプターに関しては、救急医療に関するドクターヘリコプターや夜間運航への期待もあり、安全にミッションを達成するためには、高性能のヘリコプターとそれを安全に運行するシステムの両輪がマッチングすることが求められています。