令和2年9月30日(水)
今日で9月も終わり。先日のブログに初冠雪の富士山の写真を載せましたが、改めて冬の訪れが近づいていることを実感しています。本来であれば夏から秋へ、そして冬と四季の移り変わりがある日本ですが、富士山の雪景色は一挙に冬を感じさせます。ずっと先の話ですが、春先以降の雪解け水をはじめ、富士山の降雪や降雨は地元で生活する私たちにとって、地下水の豊富さによる地域発展を支えてきた一番の資源となっています。
さて、県議会9月定例会では、JRリニア中央新幹線に関わる水資源の確保について議論が交わされています。南アルプスを源流とする大井川水系は、60万人以上の流域住人の生活を支え、農林水産業や工業など様々な経済を支える「水源」となっています。この水をどう確保するか、科学的な見地から、あるいは工学的見地から最善の答えを出すことができるのか、国を巻き込んでJR東海と県との攻防が続いています。その答えはまだまだ先が見えず、県議会としても注視し経過について報告を受け、状況を見守るというのが現状です。
話は戻りますが、富士山の豊富な地下水を享受した山麓にある私の地元富士市や富士宮市では、同じように山麓に広がる山林が供給する木材などを利用して、製紙産業が盛んです。今では、製紙産業以外でも豊富なそしてきれいな地下水を利用した化学工業など水資源に関わる産業が集積しています。
今から、半世紀ほど前、昭和30年代後半から40年代前半は、高度成長期の真っ直中にあって、これらの工業は大きく成長しました。同時に生産活動から発生する廃棄物や大気・水質汚染などの公害を生み、その影響は市民生活に及び全国から注目を集めました。さらに、地下水については、異常な揚水による地下水位低下と駿河湾から侵入する塩水により、企業活動のみならず市民生活に必要な生活水まで影響が及び大きな社会問題となりました。
大気汚染や水質汚濁については、強固な条例規制と汚染防止技術の開発と導入などにより、企業の協力を得て改善されていきました。しかし、地下水は取水制限などによる生産活動への影響は大きく、その時に企業や市民は地下水が有限であることに気付きます。
これに対応するためには他から水を持ってくることが必要で、当時の静岡県は富士川から水を引き工業用水として企業に提供することになりました。これにより、地下水の収支バランスを取ることができ、かつ生産活動への影響も最小限に抑えることができたことで、地域経済も正常に戻りました。
私の地元で半世紀前に生じた水問題は、今回のJRリニア中央新幹線でも同じ問題として重なって見ることができます。今は、当時と比べ科学的知見やシミュレーションにより、様々な予想を立てることができるはずで、事が起きる前にリスクの回避はできる時代です。それを水の影響を受ける利用者にしっかりと説明すれば、落としどころも見えてくると思いますが、現状はそうでなく歯がゆささえも感じます。