鈴木すみよしブログ

身近な県政にするために。

茶農家から貴重な意見をいただく

2021年09月18日 | 議会活動
令和3年9月18日(土)

 静岡県では現在使われている農林技術研究所茶業研究センターの再整備に向けて準備を進めています。現在ある施設は設置から50年以上経過し、研究施設・整備が老朽化していることから、再整備を行うことになりました。

 本県の茶業は深刻な状況に陥り、日本一の茶どころの座が危ぶまれています。日本人とお茶は単に飲料としてだけでなく、茶を通じた文化や歴史があり、それをこれからも大切に継続していく必要がありますが、お茶を飲むということに関しては、急須を使って飲むことが衰退し、ペットボトル茶需要が高まり、需要と供給の間に多きな乖離が生じています。また、お茶の効能を期待し、健康飲料としての期待から海外での需要も増えていますが、茶葉を生産する過程での肥料や農薬など、食品の安全面での国際的なルールに基づく体制づくりも急務で、ニーズに合った茶づくりへの対応が求められています。

 茶葉の生産では、国内外と競争していくことが必要になり、そのためにはできるだけ多くの茶のデータを収集し、科学的な根拠に基づき、効率的に、嗜好に合った茶を生産することが求められ、先端技術導入は欠かせません。そのための研究施設整備は、本県茶業の将来を支えるために必要な投資となります。
 しかし、重要なのはその研究の成果が茶農家に還元され、本当の意味での競争力を高めることが必要であり、県の構想が茶農家にとってどう受け止められているかを知ることは、大変重要なことです。今回は直接農家を訪問し、それぞれが取り組む茶づくりの現状と課題、県が整備する研究施設への意見などをお聞きすることができました。

 茶農家によりそれぞれ生産する茶の品種や運営体制が異なることから、多面的な意見があります。
 共通しているのは、茶価の低迷であり高品質の茶葉を生産しても、その時点での相場において不利な状況にあり、思うように価格が出ないことがあります。生産地の地理的な違いや生産体制などが影響しているようです。
 そしてさらに大きな問題は担い手がいないことにあります。丹精込めて茶づくりを進めてきても、それを引き継ぐ人がいなければ衰退します。きれい事でなく茶業を生業として生活していけるかが重要であり、ましてや茶価が下がる一方では、担い手は現れません。
 県の研究施設に期待するも、まずは事業が継続していけるのか、目前の問題解決のめどを立てることが重要です。
 さらに、様々な相談事(経営や技術など)について窓口がないことが不安であることを聞きました。元々、富士地域には茶業研究センター富士分室があり、ここで近隣茶農家を支えてきた実績とそれが廃止になったことの影響について苦言のようにも聞こえる意見をいただきました。行政改革の一環と思われますが、この施設だけでなく県の出先機関の統廃合が加速した時期と一致しています。
 今は、廃止された施設が県中央に集約され高度な研究を行っているものの、地理的な問題で利用しにくいというというものでした。県内茶農家の総合窓口は県の農林事務所が担っており評価も上々ですが、更なる機能向上への期待は少なくありません。

 ある茶農家は、素晴らしい担い手に恵まれ親子で「攻めの茶づくり」に挑戦している農家です。次代を担う息子は、勤めを辞め茶づくりに入りました。代々の茶農家で育ち小さな時から自然とノウハウを学んだようです。茶づくりの基本についてこだわっている農家で、新しい品種づくりや茶葉の生産や加工についても基本から始まる応用が優秀な茶づくりに生かされると言うことでした。その原点は手もみ茶であり、機械化される前の茶生産の過程で得られる経験が今に生かされると言います。また手もみ茶は芸術の域に到達し、海外からも注目されつつあります。
 会議の中で見せていただいたのが、天候等の変化で茶葉のできが悪いときに、偶然、その中にできの良い株が見つかり、他の新種が混ざったのか突然変異なのか、調べたいというものでした。
 これに対し、現在の研究所設置計画には盛り込まれておらず、現場からの調査などにどう対処していくべきか課題が明らかになりました。

(できの良い株が見つかったものの、他品種の混在か突然変異か調べて欲しいと差し出された茶葉)

 有機栽培に力を入れている茶農家では、海外輸出まで視野に入れているものの、まだトライアルの段階であり、その中で期待される価格や国際認証取得、流通経路の課題もあって、手元にはあまり利益が残らないことへの不安を伝えていました。
 また、新型コロナウイルス感染症で話題となった茶の成分であるカテキンなどの効能について、県の研究や広報に期待をかけているもののそれが見えてこないことへの課題が指摘されました。

 訪問した3軒の茶農家から聞いた課題について、同行した県職員はしっかりと対応していましたが、研究施設の課題や要望、研究施設以外で茶業を支えるために何が必要か、改めて貴重な意見を聞く機会となりました。


(途中、県が土地改良を予定している荒廃農地を視察)

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