鈴木すみよしブログ

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知事選挙から見る医師確保対策について

2024年05月16日 | 議会活動
令和6年5月16日(木) 

 県知事選挙において、私が注目する課題の一つに医師確保と偏在解消があります。
 静岡県は医師少数県で、かつ県内に設定した医療圏域ごとの医師の偏在解消は県政の大きな課題であり、中でも私の地元である富士圏域では40万人規模の人口を有しているにもかかわらず、医療環境が充足されていません。私も、県議会の中でこの課題について何回も取り上げてきました。県は、この実情を踏まえ様々な取組を展開し、その効果に期待しています。ただ、即効性のあるものは困難で、医療分野の複雑な課題が絡み合っています。

 以下は、私が3月11日にアップしたブログの中から、本県の医療環境について触れたものを再掲します。

 国(厚生労働省、文部科学省)の方針・動向では、医師の養成数について、厚生労働省は、人口減少の進行と医学部定員の臨時的な増員を受け、遅くとも令和14(2032)年頃には医師の需給が均衡するとの認識から、今後、医学部定員を削減する方向性を示しています。
 文部科学省は、医師数の充足見通しに加え、教育の質の低下への懸念や、医師の地域・診療科間の偏在解消を優先すべきとの認識などから、現在、医学部の新設を認めていません。

 静岡県の医学部(医学科)の状況については、全国には81の医学部(医学科)があり、人口100万人当たりでは0.64の医学部が設置されている状況であるのに対し、静岡県では、人口約363万人に対して浜松医科大学1校のみであるため、人口100万人当たりでは0.28 となり、多い方から46位と、医学部の配置において配慮されてきませんでした。
 医学部が都道府県の間で偏在し、人口規模に比べて医学部が少ないことが、人口当たりの病院勤務医師数が全国40位の医師少数県となっている大きな要因となっています。

 医師数等の状況を、病院勤務医数、地域別、指導医、診療科別について見てみます。
 病院勤務医数は、近年、県内の医師数は増加傾向にあるものの、人口10万人当たりの医師数は全国平均を大幅に下回っており、特に、病院勤務医師数は、全国171.6人に対して142.2人と、全国で多い方から40 位となっています。

 地域別に見ると、県内8つの2次保健医療圏別の病院勤務医師数は、賀茂医療圏が少ない(人口10万人当たり93.8人)一方で、静岡医療圏(同166.3人)、西部医療圏(同187.8人)といった都市部で多く、医療圏の間で偏在が見られます。市域が広い静岡市や浜松市では、区の間でも人口10万人当たりの病院勤務医師数に大きな差があるなど、同一医療圏、同一市の中でも地域偏在の状況があります。

 指導医については、専門医資格取得に向けて若手医師を指導する指導医の状況等から、地域間の専門研修プログラムの設置数に偏りがあり(東部20件、中部28件、西部48件)、医師の地域偏在の一因にもなっています。

 診療科別にみると、診療科別の病院勤務医師数にも偏りが生じており、人口10万人当たりの全国平均と比較して、基本的な診療科では、内科、救急科などが、専門分野では、糖尿病内科、リウマチ科、心療内科、乳腺外科、小児外科などが、それぞれ少なくなっています。

 以上から見えてくるのは、医師不足の背景には地域間・診療科目の偏在の解消です。また、医師育成に関する国の方針や医科大学の数や場所の課題があります。
 現在、県はこれらの課題を分析し、県としてできる取組を進めています。病院には公立(県や市町)や民間運営があり、そこには個々に大学病院等と連携し、例えば公立病院の運営では主体となるのは、設置者である市町であり実質的な運営を司る大学病院等になります。

県の取組には、
 1.医学部(医学科)進学者の増加に向けた取組(高校生対象)
 2.県医学修学研修資金の貸与及び被貸与者の配置調整(医学生、臨床研修医対象)
 3.専門研修の魅力向上・指導医確保(専攻医等対象)
があります。

 2.に関して、文部科学省では、地域の医師確保に向けて、都道府県から奨学金の貸与を受け、卒業後、当該都道府県内で地域医療に従事することを条件とした「地域枠」により、医学部入学定員の増員を認めています。静岡県では、2023年度、浜松医科大学や首都圏等に所在する大学10 大学に68 枠の地域枠を設置しています。
 奨学金被貸与者の県内勤務に当たっては、静岡県から浜松医科大学(当該大学卒業医師)及び静岡社会健康医学大学院大学(他大学卒業医師)に委託して、公的医療機関等の中で配置先を調整しています。
 配置調整に当たっては、県内勤務期間終了後の県内定着に向けて、専門医資格の取得をはじめ、医師としてのキャリア形成に十分配慮しつつ、地域偏在の緩和を図っています。
 地域枠の医師等に対しては、9年間の「キャリア形成プログラム」を策定し、医師不足の地域での勤務と専門医資格取得等本人のキャリア形成との両立を図っています。

 この取組には注目していますが、その成果が出るまでには時間がかかります。これをさらに加速する取組の検討は必要と考えます。

 さて、知事選挙に戻りますが、ある候補が医師確保に関し、「県東部に医科大学の設置」を掲げました。15年前に前知事が掲げたのも同じ内容で、これまでに実現できませんでした。
 また、冒頭に国の医科大学設置に関する考えについて触れたとおり、15年前よりもさらに設置は困難といえます。

 本県の厳しい医療事情をどのように分析し、早期の解消に向けて取り組んでいくのか、より具体的な考え方を聞いてみたいと思います。
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