(前回からの続き)
北朝鮮有事の際、為替レートは円高ドル安になると予想します。「えっ、このとき日本は北朝鮮の無慈悲なミサイル攻撃を受けるおそれがあるから円は売られてドルが買われ、円安ドル高になるのでは?」―――たしかにそんな気もしてきます。これによって日本が何らかのダメージを被る可能性もゼロではありませんからね。似たような意味で、韓国の場合は、北朝鮮との間で武力衝突が起こったら、この見立てのとおりウォン安ドル高になるでしょう。ですが、日本・・・の円は、やはりドルに対して高くなるはずです。その最大の理由は、マーケットがリスクオフ・モードとなって株が売られるいっぽう、円は逆に買われるため。
現在の日本株式市場では、株価が上がるときは「円安ドル高」、下がるときは「円高ドル安」というように、株価と円ドルとが逆相関の関係にあります。そのわけはこちらの記事に書いたとおりです。手短にいえば、日本株売買の主役である外国人が円キャリートレードつまり投資元金の円貨を借りたり返したりすることで円安や円高がもたらされているということ。したがって、いまの円ドルレートはべつに日米のファンダメンタルズを正しく反映しているとはいえません。
ここで、米朝間で戦闘勃発!なんてことになったら、当たり前ですが市場はリスク回避一色となり、リスク資産である日本株は外国人投資家によって一斉に売られることになります。その際に彼ら彼女らは株投資用に借りていた円を返済するから市場では円に対してドルが過剰となり、自ずと円高ドル安になるというわけ。こうして、すぐ近くの国から戦争の火の粉が飛んでくるほどの危険な状態になるにもかかわらず、わが国の通貨である円はドルに対して上昇し、あたかも「有事の円買い」とでもいうべき現象が引き起こされることになります。
以上から分かるのは、いまの円ドルレートの変動は、上記外国人とか為替ディーラーといった一握りの市場参加者によってもたらされる表層的な出来事に過ぎないということ。換言すれば、本当の円売り・・・日本人一般の預貯金者すなわち日本国債の投資家が雪崩を打つように円を売ってドルを買い上げるような非常事態は、北朝鮮の上記攻撃ぐらいでは―――巨大隕石の落下で日本列島沈没、みたいな正真正銘の破局でもない限り―――まず、起こらない、ということです。
・・・6年ほど前、そんなことを実際に感じさせられる局面がありました。東日本大震災―――2011年3月11日からの数日間です。ご存知のように、その時の日本は・・・文字どおり国家存亡のふちに立たされていたわけです・・・