邦画ブラボー

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「世界大戦争」

2006年08月24日 | ★恐怖!な映画
恐るべきリアリティで、
第三次世界大戦・核戦争の恐怖を描いた映画。

平凡に暮らす市井の人々の暮らしを丁寧に描くことによって
戦争の恐ろしさと虚しさを際立たせる。

「・・・人間は素晴らしいもんだがなあ・・・。
ひとりもいなくなるんですか・・・
地球上に・・・」


胃の手術後、
生の喜びを噛み締めていた老人(笠置衆)がラストにつぶやく台詞です。

物語の前半は
え?これが本当にパニック映画?と、
いぶかしく思うくらい明るい調子で
田村(フランキー堺)一家らのささやかながら幸せな日常を綴る。

監督は「太平洋の翼(1963)」
「連合艦隊(1981)」「社長シリーズ」などの松林宗恵。
荘厳な音楽は団伊玖磨。

SFXに東宝特撮映画のエキスパートが揃っているために
クライマックスは最高に衝撃的だ!

田村は外人記者クラブの運転手。
小さな家に妻のお由(乙羽信子)、
娘の冴子(星由里子)たちと幸せに暮らしていた。
冴子は通信員の高野(宝田明)と結婚を約束していた。

市民の平穏な暮らしの裏で
世界では各地で連鎖的に戦闘が勃発、
いまや何が起こっても不思議ではない一触即発の危機的状況にあった。

首相(山村聡)らは全力で戦争を食い止めようとするが、
もうどうにも止まらない!ことに!

戦争が始まることが公表され、
末期的なパニックに陥った東京で
娘の名を呼びながら息絶える主婦(中北千枝子)
保育園で親を待ちながら歌を歌う子供たち、
もう会うことが出来ない恋人からの無線をキャッチし
泣きながら往信する冴子など、
胸がしめつけられらるエピソードが丁寧に描かれる。

田村家ではいなりずしや巻き寿司が最後の晩餐だ。

それまで毅然と明るくふるまっていた
田村(フランキー堺)が物干し台に上がり
呻く様に吐く台詞は、
傑作「私は貝になりたい」を彷彿とさせる。

平凡な市民の幸せを描き戦争の悲惨さを訴える手法は、
黒木和雄監督の
Tomorrow 明日」に受け継がれるものであるが、
黒木監督が描かなかった「その後」を
この映画は素晴らしい特撮によって我々に見せ付けてくれる。

「ミサイルが発射されました!」「あと50秒です!」
そうなっても、
時計を、レーダーを見つめるしか術は無いという
恐ろしさにはただただ慄然とするばかりである。

その後巨大な火山が何十個も
同時に噴火したようなすさまじいショックが訪れるが、
その大迫力といったら、
とても「庭に穴を掘って隠れていれば助かる
というレベルではないな」

と思わせるリアリティ、説得力があります。

最後にクレジットが入る。

「この物語はすべて架空のものであるが
明日起こっても不思議ではありません・・・」

おっしゃるとおりです。

ここには日本の市民が描かれているが、
全世界に人は生活しているわけで、
これは今こそみんなが見るべき映画、
人類必見の映画と言えるでしょう

*映画の中のイイおんな*
星由里子:都会的な美貌。
黒髪艶々・宝田明と組めば、ばっちりの東宝カップルです。
こんなテーマなので衣裳も地味ですが
いるだけで華やかさが漂います。
無線で愛を確かめ合う名場面は鬼でもぐっとくるでしょう。

松林宗恵 監督作品

脚本八住利雄 木村武
SFX 有川貞昌 渡辺明 岸田九一郎 
特撮監督 円谷英二 音楽 団伊玖磨  美術 北猛夫

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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
最後が最高ですね (さすらい日乗)
2006-08-24 17:39:20
今年の夏、川崎市民ミュージアムで見ました。



最後、廃墟のような東京の町を中北千枝子が走ってきてばったりと倒れ、その向こうを団扇太鼓の連中が横切って行くシーンに感動しました。



中北さんのご主人は、この映画のプロデューサー田中友幸です。



田中さんは、「パニック映画でも特撮場面は、たった20分しかなく、そこに行くまでの日常的描写が重要んだ」と言っていますが、まさにそのとおり。
返信する
傑作ですね (ブラボー)
2006-08-24 18:09:52
川崎市民ミュージアムは

憎たらしい・・いえ、憎い特集を組みますね!

大画面で見たら素晴らしい迫力でしょうね。



団扇太鼓の団体が登場することで

絶望的で

末期的な状況を表していたと思います。



田中夫人、中北さんはいつもぐっとくる

演技をされる方ですね~~



「動物園に行こうね」



丁寧な庶民の生活描写と、ドラマ、

素晴らしい特撮で

絵空事とは感じられない

現実感を出していたと思いました。



感動しました。

返信する
「コウフクダッタネ・・・」 (オタクイーン)
2006-08-24 23:27:46
一般の人々が一番の被害者、というこの作品のメッセージは、同じ立場の私達に重く響きますね。



同好の仲間とこの「世界大戦争」を語る時、よく一番怖いシーンの話になります。意見が一致するのは、フランキー堺の子供が、「学校から早く帰ってくる」所。こうした、日常に起こりうる「非常時」的事態が、架空のストーリーに異様なリアリティーを与えているような気がして。



きな臭い現代、現実にこんな悲劇が起って欲しくないと、再見する度に考えます。



問題作です。
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「間尺に合わねぇじゃねぇか」 (ブラボー)
2006-08-25 06:50:05
いやあ、

まったく恐ろしい映画でした。



そして身につまされますね。シャレにならないと

いいますか・・



今更ながら素晴らしいクリエーターたちの

イマジネーションのすごさにも敬服させられます。

(含オタクィーンさん)



そうですね、問題作ですね。
返信する
えっ世界大戦争 (詩音魔)
2006-08-27 23:30:51
はじめまして、世界大戦争見ていません。日本沈没より優れた映画のようにあなたの解説で、受け取れます。たぶん東宝映画だったんでしょうね、一杯その時代見ていた私にも題名だけは記憶がありますが、そんな興味深い映画であったとは・・・
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詩音魔さんへ (ブラボー)
2006-08-27 23:52:00
73年版「日本沈没」の影で

あまり知られていないのがこの大傑作「世界大戦争」ですね~。

ドラマ部分と最後の衝撃映像のバランスがイイので

見るものの胸にダイレクトに迫ってきます。

はい東宝映画です。最初は

東宝の明るいコメディみたいなノリです。



題材が題材なだけに

救いが無く、衝撃的なのはこちらですが

「日本沈没」も良かったですね。



機会があったらぜひごらんに

なってみてください。で、感想を

お聞かせくださいね。



「日本沈没」の丹波×小林、いいですね!
返信する
懐かしの映画 (三河っ子50才)
2009-11-07 18:23:41
この「世界大戦争」は小生が就学前に町内の学校の先生宅で、近所の子供たちを集め、夏の夜に上映されたものでした。最後のシーンが大変強烈で恐ろしく、40数年たった今でもトラウマのように脳裏にこびり付いています。タイトル名も今、ようやくわかりスッキリしています。
返信する
三河っ子50才)さんへ (ブラボー)
2009-11-07 19:27:00
夏の夜の恐ろしい夢みたいな
かんじだったのでしょうか。
先生宅で皆で見たのですね。
就学前といえば
まだいたいけな・・・そんなときに
ごらんになったとは!
先生も粋なことをなさったものですね。
すごいです。

私のトラウマ映画のひとつ
「怪談」(小林正樹)を大人になってからみたらやっぱり出だしからすでに怖くて
当時のドキドキが蘇りました!面白い体験でした。

この作品は傑作ですよね。もっと
大勢の方々に見ていただきたいですね。
返信する
国会議事堂が・・・ (コイセ)
2010-09-23 17:02:16
こんにちは、初めまして!!

ネットのお陰で、題名が不明だった映画が何なのか分かり、此処にたどり着きました…
小学生の頃TVで観た印象が強烈で…特に国会議事堂が崩れ落ちるところ…
アラフォーになって今観たらどんな気持ちになるのか、楽しみです。
この間、「渚にて」という映画を観ました。
どちらかというと、SFというより恋愛色が強い映画でしたので、でも後からじわじわと死の恐怖を考えさせられる…
どちらにしても、映画のような事は起きてほしくないですね!
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コイセさんへ (ブラボー)
2010-09-23 21:28:24
こんにちは!コイセさん、初めまして!
ようこそお越しくださいました
大歓迎です。

小学校の頃といえば
感覚が最も鋭敏な頃ですよね。
そんな時に
このすごい映画をごらんになったとは!
さぞかし驚かれたことでしょうね。
再見されたらまた感想をぜひお聞かせください。

「渚にて」は題名だけ知っていますが
未見です。面白そうですね~。

ほんとうに映画のような「恐怖の未来」は
まっぴらですね~~
また宜しかったら遊びにいらしてくださいね
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