邦画ブラボー

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「女殺し油地獄」

2008年06月02日 | ★人生色々な映画
ざんばら髪の与平衛が裸馬にまたがり刑場へと向かう、
ショッキングな冒頭!

なんでこういうことになったのか・・
と物語は展開していく。

いつの世にも手がつけられない不良息子に
手を焼きながら
それでも子を愛さずにはいられない親はいるものだが・・

主人が亡くなった商家に
真面目な番頭(中村鴈治郎)が入り
店を建て直したが、
先代が残した子供がとんでもなく、
グレてしまうというわけだ。

借金まみれだわ、家庭内暴力だわ、
この男のおかげで家族はひどい苦しみの真っ只中に。

実の子以上に情をかける父親、
夫に気を使い、世間体を気にしながらも
わが子への情を断ち切れない母親(三好栄子)。

お互いの気持ちを気遣う夫婦と
しょうもない兄を思いやる妹(香川京子)。

い~い家族なんですが。

このあたりのコテコテを
上手い役者が涙、また涙で語ってくれます。

近所には
情が深く、世話好きのお吉(新珠三千代)・・がいる。

こんなに深い愛情に囲まれていても
与平衛(当時中村扇雀) は改心するどころか、
姉のように世話を焼き、心配するお吉を刺し殺してしまうのである。

冬場に頭から氷水を思いっきりかけられるような話だ。

こんな神も仏もいないような話を書いたのは
江戸時代の大劇作家、近松門左衛門である。
歌舞伎小屋での評判はイマイチで
上演は尻すぼみだったようだ。

暗すぎるもんねえ。


コテコテの人情劇と、
終盤の油にまみれての凄惨な殺しの場はこの作品の見所であろうか。

慕っていたはずのお吉を手にかけてしまうくだり、
二人の会話のテンションがどんどん高まっていき
ついに短刀を取り出すまでの過程は緊迫感に満ちている。

新珠三千代はこの時30前だというが
お歯黒が実に妖艶。
江戸の人妻はやっぱりお歯黒でしょうが!
と、この映画を見ていて思う。
油まみれの修羅場はほんとに地獄!
新珠三千代が最高だ。

与兵衛の、
鬼畜を極める罰当たりぶりをとくとごらんあれ。

最後の最後まで見事に暗澹とした気持ちにさせてくれる。

堀川弘通 監督

原作 近松門左衛門
脚色 橋本忍

撮影 中井朝一
音楽  宅孝二

美術 河東安英

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
太陽族映画だと思う (さすらい日乗)
2008-06-05 00:30:41
この与兵衛というばか息子は、太陽族だと思う。
そう考えると、近松の生きていた元禄時代にも、石原慎太郎が書いた太陽族がいたということではないか。

堀川は、慎太郎原作の『日蝕の夏』という映画も撮っていますので、明らかに意識していると思う。
彼は、世代的にはやや上なので、批判的に見えるが。
返信する
さすらい日乗さんへ (ブラボー)
2008-06-05 17:06:50
「太陽族」とは
目からウロコです。

悪事を働かずにはいられないような
負のエネルギーに
満ち満ちていますね、この男は。
虚無というにはあまりにも
ギラギラとしていますね。

堀川監督はまだご存命ですよね。
石原慎太郎さんにも
また小説を書いて欲しいです。
返信する

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