長い夜が、明けて・・・。  168

2022-08-07 09:15:14 | 小説

どれくらい時間が経ったのだろう。

自分では、絶体眠らない自信があったのに、いつの間にか寝てしまったようだ。

渚の膝には、水色のタオルケットが、掛けられ、長椅子の背には、グレーの固めのクッションが、あてがわれていた。

きっと、星の気遣いだろう。

長い廊下の向こうから、手にペットボトルを持った星が、歩いてきた。

「少しは、眠れた?」渚に声を掛けると、アクエリアスのペットボトルを渡した。

お礼を言って、ペットボトルを受け取る時、見上げた星の顔は、目が、少し充血して、疲れがにじみ出ていた。

こんなにも、自分を心配してくれたのかと思うと、思わず涙ぐんでしまった。

星は、渚が、泣いたのは、ヤマさんを、心配してなのだと、勘違いしたようだ。

「さっき、看護師さんが来てくれて、もう、大丈夫だから、連絡があるまで、家で待つように言われた」と、渚に、告げた。

星は、家まで渚を送り届けると、空には、オレから、連絡しておくからと、言った。

渚は、星の言葉を、遮ると、空には、余計な心配を掛けたくないので、父が落ち着いたら、自分で、連絡すると答えた。

「それで良いの?こんな時こそ、空がいたら良かったのに・・・。」

星には、感謝しても、仕切れないほど、感謝してるのに、尚も渚の事を考えてくれる

想いに、胸が苦しくなった。

 

 

 


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