雨が少し小降りになった頃、空君と加藤のおじいちゃんがやって来た。
「マスター、空に何か食べさせてやってよ」、と加藤のおじいちゃんが言った。
「何が良いですか?」
テーブルを拭きながら、マスターが空君に尋ねる。
「オムライス、出来ますか?」
「出来ますよ、すぐ支度するから待っててくださいね」
「娘が出かけちゃって、朝飯兼昼飯なんだ。」
加藤のおじいちゃんが、ぼやく。
「俺が、作るって言ったんですけど、マスターに作ってもらうって、じいちゃんが聞かなくて・・・。」
「いいですよ、オムライスなんてわけないから。」
二人に、コーヒーを出してから、マスターは、さっそくオムライス作りに取り掛かった。
「そうだ、さっき渚ちゃんが来て、二人に預かりものしてるんですよ。」
「預かりものって?」加藤のおじいちゃんが、尋ねる。
「初任給が、出たからお礼だって言って、渡してほしいって頼まれちゃって・・・。」
「お礼なんて良いのに。」
「俺、何にもしてないのに」と、空君が呟く。
「差し入れのお礼だって、言ってたけど・・・。」
そうこうしているうちに、マスター特製のビッグな、オムライスが、出来上がった。
ケチャップがしっかりかかって、涎がでそうだ。
食べる前は、ちょっと量が、多すぎだと言っていた加藤のおじいちゃんも、しっかり完食した。
空君は、マスターのオムライスは、最高だと感激している。
マスターから、渚ちゃんのプレセントを受け取った二人は、却って気を使わせちゃったみたいだと言っていた。
加藤のおじいちゃんは、孫の嫁にしたいくらい、渚ちゃんは良い子だと褒めた。
それって、アニキの事、俺の事?
空君の質問に、どっちでも良いからさと言った。
爺ちゃんて、適当だよな、空君の一言に、加藤のおじいちゃんとマスターは、顔を見合わせて笑った。