空君と加藤のおじいちゃん 71

2021-05-03 07:13:42 | 小説

雨が少し小降りになった頃、空君と加藤のおじいちゃんがやって来た。

「マスター、空に何か食べさせてやってよ」、と加藤のおじいちゃんが言った。

「何が良いですか?」

テーブルを拭きながら、マスターが空君に尋ねる。

「オムライス、出来ますか?」

「出来ますよ、すぐ支度するから待っててくださいね」

「娘が出かけちゃって、朝飯兼昼飯なんだ。」

加藤のおじいちゃんが、ぼやく。

「俺が、作るって言ったんですけど、マスターに作ってもらうって、じいちゃんが聞かなくて・・・。」

「いいですよ、オムライスなんてわけないから。」

二人に、コーヒーを出してから、マスターは、さっそくオムライス作りに取り掛かった。

「そうだ、さっき渚ちゃんが来て、二人に預かりものしてるんですよ。」

「預かりものって?」加藤のおじいちゃんが、尋ねる。

「初任給が、出たからお礼だって言って、渡してほしいって頼まれちゃって・・・。」

「お礼なんて良いのに。」

「俺、何にもしてないのに」と、空君が呟く。

「差し入れのお礼だって、言ってたけど・・・。」

そうこうしているうちに、マスター特製のビッグな、オムライスが、出来上がった。

ケチャップがしっかりかかって、涎がでそうだ。

食べる前は、ちょっと量が、多すぎだと言っていた加藤のおじいちゃんも、しっかり完食した。

空君は、マスターのオムライスは、最高だと感激している。

マスターから、渚ちゃんのプレセントを受け取った二人は、却って気を使わせちゃったみたいだと言っていた。

加藤のおじいちゃんは、孫の嫁にしたいくらい、渚ちゃんは良い子だと褒めた。

それって、アニキの事、俺の事?

空君の質問に、どっちでも良いからさと言った。

爺ちゃんて、適当だよな、空君の一言に、加藤のおじいちゃんとマスターは、顔を見合わせて笑った。

 

 

 

 

 

 

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする