今回ご紹介するのは「太陽の坐る場所」(著:辻村深月)です。
-----内容-----
高校卒業から十年。
元同級生たちの話題は、人気女優となったキョウコのこと。
クラス会に欠席を続ける彼女を呼び出そうと、それぞれの思惑を胸に画策する男女たちだが、一人また一人と連絡を絶ってゆく。
あの頃の出来事が原因なのか……?
教室内の悪意や痛み、十年後の葛藤、挫折そして希望を鮮やかに描く。
-----感想-----
実はこの作品、2年前の今の時期に読んでいました。
レビューを書きそびれたまま、月日が流れていました。
そんなわけでもう一度この作品を読んでみることにしました。
そしてこの作品の解説の名前を見て驚きました。
宮下奈都さんの名前がそこにありました。
この春から注目している宮下奈都さんですが、実は2年前にその名を目にしていたのか…と感慨深くなりました。
その時は興味を持たなかった作家さんの作品が2年後の今、とても胸に染みています。
「太陽の坐る場所」の結末は既に知っているので、一度目に読んだ時とは違う目線でじっくり物語を読んでいきました。
そうすると、一度目にはまんまと騙されていた色々な伏線が見えてきます。
「響子」と「リンちゃん」、二人の重要人物。
高校時代、クラスの女王として君臨した響子。
響子は「響子」と表記される場合と、「キョウコ」と表記される場合があります。
「キョウコ」の場合は現在の女優になったキョウコのことを指していて、「響子」の場合は高校生の頃の回想として登場します。
女優になったキョウコは、もう何年もクラス会に出席していません。
「キョウコ」の全貌がなかなか明らかにならない中、クラスメイトたちは彼女を何とかして同窓会に出席させようとします。
今をときめく女優ということで、何とかしてキョウコにクラス会に来てほしいと考える人もいました。
そして出てくる登場人物の多くが心に醜いものを持っていました。
特に生々しいのが高校時代の話で、私も身に覚えのある感情でした。
たぶんほとんどの人が多かれ少なかれ抱いたことがあるであろう感情が、とても丁寧に、そしてとても生々しく描かれていました。
そんな中で真に友達を思う心を持っていたのが「貴恵」。
どうしようもないほど暴走し、醜い心の内を露わにした友達の為に着の身着のまま駆けつけたあの場面は改めて読み返してみると感動でした。
本当に親友だと思っているから駆けつけてくれたのがよく分かりました。
聡美も良いなと思えるものがありました。
今をときめく女優となった「キョウコ」に打ちひしがれ、嫉妬を抱きながらも、聡美は自分の力で気持ちに一つの決着をつけたし、そこに「キョウコ」も心惹かれるものがあったようです。
物語は以下の5編で構成されています。
出席番号二十二番 半田聡美
出席番号一番 里見紗江子
出席番号二十七番 水上由希
出席番号二番 島津謙太
出席番号七番
この最終章の人物には驚きました。
お前が……!!という感じでした。
ひとつ前の章の「出席番号二番 島津謙太」でどんでん返しが明らかになるのですが、やはり最終章が一番濃密でしたね。
高校時代の女王・響子の凋落、響子と「リンちゃん」の関係、冒頭の謎めいた場面、浅井倫子が酷い目に遭った事件の真相、色々なものの詳細が明らかになりました。
島津謙太の物語は、何だか冴えない感じでいたたまれないのですが、最後に凄い役を担っていました。
「鈴原さんが来るよ」
これを伝えたことで、一気に物語が緊迫感を帯びて来たなと思います。
そして迎える最終章。
開催された同窓会で10年ぶりに再会する鈴原さんと、もう一人の人。
因縁の二人の再会、非常に緊迫する場面でした。
ミステリー要素が満載の物語で、最終章で全てが明らかになるまで、実に色々な伏線がありました。
この物語は「名前」を巡る物語でもあったなと思います。
終盤はそこに圧倒され、惹き込まれ、ものすごくドキドキしながら読み進めていきました。
辻村深月さん、後に直木賞を受賞しただけあって、やはり凄い作家さんだと思います。
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-----内容-----
高校卒業から十年。
元同級生たちの話題は、人気女優となったキョウコのこと。
クラス会に欠席を続ける彼女を呼び出そうと、それぞれの思惑を胸に画策する男女たちだが、一人また一人と連絡を絶ってゆく。
あの頃の出来事が原因なのか……?
教室内の悪意や痛み、十年後の葛藤、挫折そして希望を鮮やかに描く。
-----感想-----
実はこの作品、2年前の今の時期に読んでいました。
レビューを書きそびれたまま、月日が流れていました。
そんなわけでもう一度この作品を読んでみることにしました。
そしてこの作品の解説の名前を見て驚きました。
宮下奈都さんの名前がそこにありました。
この春から注目している宮下奈都さんですが、実は2年前にその名を目にしていたのか…と感慨深くなりました。
その時は興味を持たなかった作家さんの作品が2年後の今、とても胸に染みています。
「太陽の坐る場所」の結末は既に知っているので、一度目に読んだ時とは違う目線でじっくり物語を読んでいきました。
そうすると、一度目にはまんまと騙されていた色々な伏線が見えてきます。
「響子」と「リンちゃん」、二人の重要人物。
高校時代、クラスの女王として君臨した響子。
響子は「響子」と表記される場合と、「キョウコ」と表記される場合があります。
「キョウコ」の場合は現在の女優になったキョウコのことを指していて、「響子」の場合は高校生の頃の回想として登場します。
女優になったキョウコは、もう何年もクラス会に出席していません。
「キョウコ」の全貌がなかなか明らかにならない中、クラスメイトたちは彼女を何とかして同窓会に出席させようとします。
今をときめく女優ということで、何とかしてキョウコにクラス会に来てほしいと考える人もいました。
そして出てくる登場人物の多くが心に醜いものを持っていました。
特に生々しいのが高校時代の話で、私も身に覚えのある感情でした。
たぶんほとんどの人が多かれ少なかれ抱いたことがあるであろう感情が、とても丁寧に、そしてとても生々しく描かれていました。
そんな中で真に友達を思う心を持っていたのが「貴恵」。
どうしようもないほど暴走し、醜い心の内を露わにした友達の為に着の身着のまま駆けつけたあの場面は改めて読み返してみると感動でした。
本当に親友だと思っているから駆けつけてくれたのがよく分かりました。
聡美も良いなと思えるものがありました。
今をときめく女優となった「キョウコ」に打ちひしがれ、嫉妬を抱きながらも、聡美は自分の力で気持ちに一つの決着をつけたし、そこに「キョウコ」も心惹かれるものがあったようです。
物語は以下の5編で構成されています。
出席番号二十二番 半田聡美
出席番号一番 里見紗江子
出席番号二十七番 水上由希
出席番号二番 島津謙太
出席番号七番
この最終章の人物には驚きました。
お前が……!!という感じでした。
ひとつ前の章の「出席番号二番 島津謙太」でどんでん返しが明らかになるのですが、やはり最終章が一番濃密でしたね。
高校時代の女王・響子の凋落、響子と「リンちゃん」の関係、冒頭の謎めいた場面、浅井倫子が酷い目に遭った事件の真相、色々なものの詳細が明らかになりました。
島津謙太の物語は、何だか冴えない感じでいたたまれないのですが、最後に凄い役を担っていました。
「鈴原さんが来るよ」
これを伝えたことで、一気に物語が緊迫感を帯びて来たなと思います。
そして迎える最終章。
開催された同窓会で10年ぶりに再会する鈴原さんと、もう一人の人。
因縁の二人の再会、非常に緊迫する場面でした。
ミステリー要素が満載の物語で、最終章で全てが明らかになるまで、実に色々な伏線がありました。
この物語は「名前」を巡る物語でもあったなと思います。
終盤はそこに圧倒され、惹き込まれ、ものすごくドキドキしながら読み進めていきました。
辻村深月さん、後に直木賞を受賞しただけあって、やはり凄い作家さんだと思います。
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